大切なクルマはできるだけいい状態で長く乗りたいもの。そのためにメンテナンスなどに気を使っている人も多いだろう。だが、そうとは知らずにクルマの健康寿命を縮めてしまっているケースもある。
今回は、ガソリンやバッテリーなどが空になるまで給油や充電を行わない“ギリ走行”のデメリットを紹介し、愛車を長持ちさせるコツを考えていきたい。
文/長谷川 敦、写真/写真AC、マツダ、日産
【画像ギャラリー】ギリギリ走行でクルマを傷めつけてはいませんか?(15枚)画像ギャラリー知ってますか? ガス欠のダメージ
燃料タンクの残量表示が空になっていることに気がつかず、燃料切れによってエンジンが停止してしまうのがいわゆる「ガス欠」だ。ガス欠によるストップ自体も大きなトラブルだが、実は、ガス欠で引き起こされる弊害も意外に多い。
最初に紹介するのは燃料を噴射するインジェクターの過熱だ。高圧力で燃料を吹き出すインジェクターには、その機能上発熱しやすいという性質がある。燃料を噴射し続けているなら、その燃料自体がインジェクターの冷却と潤滑も行っているので問題ないが、ガス欠状態だと“空ぶかし”になり、インジェクターにダメージを与えてしまう。
これは燃料ポンプでも同様で、燃料タンクが空になった状態で燃料ポンプの作動を続けると、ポンプ内部のモーターが過熱し、それが摩耗の原因にもなる。一度ダメージを受けたモーターは、給油を行っても元の状態には戻らない。
そして最後はスターターの劣化。ガス欠したクルマに給油し、再びエンジンを始動するためにスターターを回すが、燃料パイプ内に燃料が行き渡るまでには数回スターターを回す必要があり、これもスターターモーターやバッテリーの負担を増やすことになる。
このように、ガス欠には弊害も多く、場合によっては周囲の交通状況にも影響を与えてしまう。やはり残量表示はマメに確認して、ガス欠を起こす前に給油するのが最善と言える。
“電欠”だって問題は深刻
次に考えたいのが最近急速にシェアを拡大しつつあるBEV(バッテリー電気自動車)の電欠について。ガソリン車でもエンジンの始動を始め、ライトやエアコンなど、さまざまな用途にバッテリーが活用されていて、そのバッテリーが上がってしまうと一大事だが、バッテリーのみで走行するBEVではどうなのだろうか?
内燃機関(エンジン)によって発電と充電を行えるハイブリッドカーとは違い、BEVの場合は電欠によって即走行不可になってしまう。これはある意味ガス欠と同様だが、給油を行えばすぐに走行できるガス欠に対し、ある程度の充電時間が必要なBEVの場合、充電設備のある場所までレッカー移動が必要など少々やっかい。そして、電欠ではさらに大きな問題もある……。
BEVに使われるバッテリーの多くに、過放電に弱いという性質がある。過放電されたバッテリーはダメージを受け、次に充電を行っても、本来のバッテリー容量まで充電されない可能性もある。だからこそ、バッテリーを空にしないよう心がけるのが大切なのだが、それを意識するあまりの“急速充電の多用”と“ちょこちょこ充電”もまたお薦めできない。
短時間で充電できる急速充電は便利だが、これは大きな電流をバッテリーに押し込むことによって成立している。当然ながら急速充電中のバッテリーは発熱も大きくなり、これがバッテリーへの負担となる。
最近ではバッテリーの状態に応じて充電電流量を調整する急速充電もあるが、やはり通常充電に比べて大きな電流を使っていることに変わりはない。BEVのバッテリーを長持ちさせたいなら、時間に余裕を持って通常充電をメインにするのが得策だろう。
そしてもうひとつ重要なのが、ちょこちょこ充電を行わないこと。携帯電話のバッテリーも、ある程度残量がなくなってから充電するのと、マメなちょこちょこ充電によって常に満充電に近い状態にしておくのとでは劣化の進行が変わってくるという話を聞いたことのある人も多いはず。この場合、劣化が進みやすいのはちょこちょこ充電のほう。詳しい説明は省略するが、BEVのバッテリーも基本的には携帯電話と同じだ。
つまりバッテリーの寿命を延ばしたいのであれば、残量20%くらいまで使った後に100%まで充電し、次に充電するのは再び残量が20%くらいになってから、といったサイクルを繰り返すのが正解。道路上での電欠が怖いのは当然だが、それを恐れるあまりバッテリーの負担を増やすのも考えものだ。
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