世界的な半導体不足が露呈したのは2020年秋頃。昨年(2022年)秋頃には解消すると楽観視した予測もあったが……、いまだその気配はない。この状況はたしていつ終わるのか?
※本稿は2022年12月のものです
文/池田直渡、写真/AdobeStock(メイン写真=Connect world@AdobeStock)、ベストカー編集部 ほか
初出/ベストカー2023年1月26日号
■いつまで足りない!? もはや決まり文句の「半導体不足」
深刻な半導体不足によってクルマの生産が滞っている。現状は極めて複雑だが、それを整理できる組織や人がいない。
状況的に見て個別の企業には如何ともし難い問題が根底にある。となれば経産省が調整する以外にないのだが、問題の本質をきちんと把握できているのかどうかが怪しい。
まず「足りないのは何か?」という本質的な部分である。クルマの開発には、おおむね4年程度の時間がかかる。昨今モデルチェンジの間隔が伸びる傾向にあるので、モデルサイクルはおおむね5年。
つまり生産に求められる部品は、最長で4年プラス5年の9年前の部品ということになる。
日進月歩の半導体において、9年前の部品はもはや骨董品。最先端であるわけがない。つまり自動車生産のボトルネックとなっている半導体は最先端ではなく、古い半導体である。
当然値段もこなれており、使う側にとってはいい話なのだが、作って売る側からしたら、ありがたくない需要だ。半導体メーカーはもっと最新の利益率の高いものを作って売りたい。
こうした需給のミスマッチによって、自動車用の半導体は生産を後回しにされる。
ところが半導体と言えばイメージはハイテク。だから経産省は最新鋭の開発競争に目が向きがちだ。
2023年8月に日系企業8社の出資で設立された半導体新会社ラビダスも、2020年代後半に向けて、世界最先端の2nm(ナノメートル)世代の開発を謳っている。
最先端に挑むなとは言わないが、2nmで何ができるのか、どの程度の需要があるのかはまだ誰にもわからない。
本当はもっとローテクな汎用半導体の不足で困っている最中に、未来技術を優先するあたりはどうもピントがズレている。
もちろん目先のことしか考えないのもまずいが、今日明日食うに困っている現状を差し置いて10年先の投資ばかりしても、その10年先がやってくる前に倒れてしまう。
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