農業のIT化が急速に進んでいる。そんななか「ハタケホットケ」という脱力系ネーミングの会社が地味にすごい除草マシンを開発した。その名も「ミズニゴール」。なんでそんな名前なのか? どこがすごいのか? その全貌を紹介しよう!
文/ベストカーWeb編集部、写真/ハタケホットケ、クボタ
■GPSで動きまわり田んぼの雑草を退治する
クルマの電子化はしばしば話題になるが、農業機械のIT化も見逃せない。農業就労者の不足や高齢化を省力化によって打開しようと、各社が知恵を絞っているためだ。たとえばトラクターや田植え機、コンバインは無人運転の実用化が近づいているし、農薬散布はAIを搭載したドローンが作物や雑草を識別し、エリアや散布量を自動判定するといった具合。
とはいえこうした農業のIT化は、比較的資金もある大規模集約型農業に目を向けがち。小さな圃場を営む零細農家などは、なかなか手が出しにくいという現実がある。そこに着目したのが「ハタケホットケ」という長野県のベンチャー企業。「小規模農家でも使える省力化マシンはできないものか?」。そんな思いから作ったのが「ミズニゴール」という除草ロボットだ。
このミズニゴール、パッと見には子供の3輪オモチャだが、田植え直後の田んぼに走らせることで、水を攪拌して泥を巻き上げる。すると水中で育つ植物の光合成が妨げられて、雑草の生育そのものを防ぐことができるというわけ。水を濁すからミズニゴール。ネーミングセンスが小林製薬なみだ。
実はこのミズニゴール、昨年クラウドファンディングで目標額を250%も上回る支援を集め、塩尻市での実証実験をみごと成功させた。しかしハタケホットケは安心しない。気を緩めることなく、今回その進化版を完成させたのだ。それが「ミズニゴール2.0」。
どこが進化したのか。従来はラジコン操作で稼働させていたものが、GPSによる自動操縦へと進化したのだ。位置情報をGoogleマップと連携させることで走行ルートの自動設定やその記録などが可能になったため、たとえば複数の田んぼを保有する場合でも、履歴から「A畑」「B畑」と除草記録を呼び出して、同じルートをたどらせることができるわけだ。こいつはもはや畑のルンバだ!
ミズニゴール2.0のサイズだが、全長130cm、幅77cm、重さは8kg。1.0に対して構造面でも進化しており、本体は4つに分割して持ち運びできる。軽トラでの運搬やパーツ交換、メンテナンスなども楽に行えそうだ。作業スピードは1反(1000平方メートル)あたり数分といい、人間に比べると約20倍の生産性向上が期待できるという。
ハタケホットケでは、このミズニゴールを売り切り販売ではなく、各農家が融通し合うシェアリングシステムで運用したいとのこと。小規模農家に寄り添った発想は、実に好感がもてる。将来の日本の田んぼでは、ミズニゴールのけなげに働く姿をあちこちで見かけるようになるかもしれない。
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