これまでの3.5トン超重量車の燃費試験「重量車モード燃費」から、新燃費基準の施行とともに「JH25モード」試験へ置き換わろうとしている。
新燃費基準の達成目標年度である2025年度に先行し、2023年4月1日からは新しいJH25モード燃費値でカタログ表記も始まる。JH25モードや新燃費基準ではどう変わるのか?
文・写真/フルロード編集部
重量車モード燃費のあらまし
トラックなどの重量車は架装物やシャシーによってさまざまな種類があり、車両によって燃費値もバラバラとなるため、乗用車のような実車を使ったシャシーダイナモメーターによる燃費計測が難しいとされる。
ましてトラック・バスメーカーはシャシーメーカーであり、ボディの艤装は架装メーカーが行なうのが通例で、大量生産が行なわれている「メーカー完成車」ならまだしも、一点物も多い「つくりボディ」ではなおさら燃費値がマチマチだ。
そこでエンジン試験で、トランスミッションのギヤ比やファイナルギア、タイヤ、空気抵抗、積載量などのデータを加味して行なうシミュレーション法によって燃費値を算出する「重量車モード燃費」が採択され、2006年4月より3.5トン超のクルマに対しトップランナー方式(※)に基づいた重量車燃費基準が設定された。
※トップランナー方式とは商品化されている製品の中で、最も優れた性能のものを基準とする考え方。燃費基準ではトップランナー燃費値を参考にして目標値が定められた
この燃費基準は2015年度までの達成目標であることから「平成27年(2015年)度燃費基準」と呼ばれ、優良車はエコカー減税制度による重量税減税が受けることができるのはご存知の通りだろう。
なお、JH25モードが登場したことで重量車モード燃費は、「JH15モード」と呼び名も改められている。
モデルチェンジにも影響!? 2025年度重量車燃費基準とJH25モード
2019年3月に施行された新重量車燃費基準は、2014年を基準年度としたトップランナー燃費値をベースに2025年度を目標年度に基準燃費を設定したもの。
現行と比較すると、小型トラック枠のGVW(車両総重量)3.5トン超〜7.5トン車は、これまでの10.83〜8.12km/Lが13.45〜9.91km/Lへ。中型トラックで大半を占めるGVW7.5トン超〜8トン未満車は7.24km/L→8.39km/Lに。大型トラックで多い20トン超〜は4.04km/L→4.42km/Lと変更される。
これは現行から「トラック等(単車・トラクタの合計)」の場合で平均約13.4%の基準強化となる。
いっぽう燃費試験はこれまでと同じ走行モード(都市内走行と都市間走行の組み合わせ)をエンジン数値に換算し、燃費マップ上で走行状態をシミュレートする方法を採用するが、JH25モードでは空気抵抗・タイヤの転がり抵抗の演算に用いるデータが固定値から実測値に、走行モードの比率は実態を踏まえた割合に変更される。
これによりメーカーにとっては達成の難易度が燃費基準値の強化以上に高くなり、とりわけ重量が重く、エンジンの負荷率が高い大型車にはエンジン本体の改良抜きでの対応が厳しい内容となっている。
ただ、特例の燃費基準超過達成分の半分を未達成分と相殺ができるハーフクレジット制度も引き続き採用される。
新燃費基準の適合時期はもう少し先だが、単車系のいすゞ「ギガ」の一部車種とUDトラックス「クオン」の一部車種、2023年3月7日にフルモデルチェンジしたばかりの新型「エルフ」はすでに適合(あるいは超過達成)を公表している。
具体的には、エンジン等を改良した2022年モデルのクオン・GH11型(11リッター)エンジン搭載車が適合(特装系の車種を除く)、同じくエンジン等の改良行なった2022年モデルのギガ・6UZ1型(10リッター)エンジン搭載車の主力車種では燃費基準+5%を達成。
そして新燃費基準に適合する新型エルフは、デュアルクラッチトランスミッションを搭載したアイドリングストップ付き2トン積みクラスで「+15%」超過達成している。
モデルチェンジのスパンの長い商用車では、規制適合を背景に代替えを遂行するメーカーが多く、排ガス規制強化が行なわれた平成21年・22年度排ガス規制(ポスト新長期)や平成28年度排ガス規制ではモデルチェンジラッシュとなった。
こうした理由により、今後2025年までに新燃費基準に適合させた、新型車種が各メーカーから続々と登場すると見られている。
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