Z最後の直6搭載、フェアレディZ31はいかにして若者の心をひきつけたのか?

Z最後の直6搭載、フェアレディZ31はいかにして若者の心をひきつけたのか?

 GT-Rとともに日産が世界に誇るスポーツカー「フェアレディZ」。1969年の初代登場から(一度途絶えながらも)半世紀以上もの間、世界中のファンに愛され続けてきたフェアレディZだが、この間にはいくつか転機となったモデルがある。そのひとつが、3代目となるZ31だ。

 1983年に登場したZ31は、初代から続くロングノーズ・ショートデッキのプロポーションを受け継ぎつつもパフォーマンスモデルとして大きく進化し、当時若者から絶大な支持を集めた。人気の背景には、人気漫画の主役のクルマとして取り上げられたこともあったが、Z31の大きな進化も人気の理由だった。

文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:NISSAN

ファンの期待どおり、ロングノーズ・ショートデッキで登場した、Z31

 Z31が登場するまえのフェアレディZは、1969年に誕生した初代(S30型)、1978年登場の2代目(S130型)ともに、スポーツモデルでありながら、3万ドル以下で買えるほど廉価(当時のポルシェの半額以下)であったなどで、当時のZカーファン(ズィーカー、ファンは愛着を込めてこう呼ぶ。特に北米の若者たち)からは、絶大な支持を得ていた。

 そこへ登場した3 代目となるZ31は、初代から続くロングノーズ・ショートデッキを受け継ぎつつ、直線基調となったことで先鋭的かつスタイリッシュに進化。そのスタイリングは、空気抵抗係数も0.31と、空力にも優れていた。また、ヘッドライトはリトラクタブル式ではなく、消灯時でもレンズの一部が見える「パラレルライジングヘッドランプ」という方式を採用。「ボディの一部を削ったようにデザインしてライトを配置する」というフェアレディZの個性を踏襲したものでもあった。インテリアの質感も、先代のS130から、モダンかつGTスポーツとしての価値観を持つよう、大きく生まれ変わった。

 と、ここまでは、よくあるフルモデルチェンジの内容だが、Z31ではさらなる進化があった。

Z31前期型のCd値は0.31。特徴的なヘッドライトはリトラクタブル式ではなく、消灯時でもレンズの一部が見える「パラレルライジングヘッドランプ」という方式を採用
Z31前期型のCd値は0.31。特徴的なヘッドライトはリトラクタブル式ではなく、消灯時でもレンズの一部が見える「パラレルライジングヘッドランプ」という方式を採用

新世代V型6気筒エンジンで、世界のGTカーに立ち向かった

 2代目まで直6エンジンを採用してきたフェアレディZだが、Z31では、新世代のV型6気筒エンジンを採用。その理由は、高まる衝突安全性能と高出力化、そして燃費の両立を図るためだ。当時最大のライバルであったトヨタが、2.0L直6エンジンの「1G」で中型クラスの高級車で成功を収めるなか、その上を行くには、新世代V6の技術力が必要だと考えての判断だったのだろう。また北米では、「直6=古くて廉価なエンジン」というイメージがあったことも関係していたと思われる。

 Z31デビュー時のエンジンラインアップは、2.0L V6ターボ(170ps)の「VG20ET」と、3.0L V6ターボ(230ps)の「VG30ET」の2種類。シリンダーブロックはアルミ製、タイミングチェーン式からタイミングベルト式に変更することで軽量化が図られており、インタークーラーレスながら低回転からパンチの効いた加速が特徴だった。

 内外装の大幅なブラッシュアップに加えて、V6エンジン採用によって基本性能を向上させることで、Z31は、世界の名だたるGTカーに対抗しうるモデルを目指し、「Z」をワンステージ上に引き上げた。「モアパワー!! モアスピード!!」を唱え続けてきたZカーファンの期待に応えた大進化を遂げたことで、旧来のZカーファンたちは、再び熱狂したのだ。

2.0LのV6ターボエンジン「VG20ET」。最高出力は170ps
2.0LのV6ターボエンジン「VG20ET」。最高出力は170ps

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