ドイツの大手トラックメーカーでフォルクスワーゲン傘下のMANは大型EVトラック発売前の最終テストと見られる公道試験を開始し、2024年の発売に向けて順調な進捗をアピールした。欧州ではこれで大手トラックメーカー全社が長距離輸送用の大型トラック(トラクタ)にバッテリーEVを設定することになる。
大型車や航続距離の長い運行はEVの苦手分野とされてきたが、なぜ急激に大型トラックの電動化が進むことになったのか? MANの「eトラック」公道試験開始のニュースと共に、その背景を解説する。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/MAN Truck & Bus SE
MANの大型BEVトラックは順調に進捗
欧州の大手トラックメーカーで、フォルクスワーゲンの大型商用車部門であるトレイトングループに属するMAN(ドイツ)の「eトラック」の市場ローンチが近づいている。
2023年4月26日には、北極圏でのウィンターテストを終えたばかりの道路輸送用大型バッテリー電気式(BEV)トラックに、バイエルン州首相のマルクス・ゼーダー氏が試乗した。
ちなみにトレイトングループは日本の日野自動車と戦略提携していたが、エンジンの認証不正問題が発覚してからトラブル続きの日野と提携解消したことが、日本時間の同日に発表されている。
BEV(のバッテリー)は低温環境が苦手とされる。MANは昨年12月から3月まで行なったウィンターテストの結果、マイナス40度の極地でも問題がないことを確認し、大型BEVトラックの公道での試験を始めた。
同社は寒冷地試験のあと公道走行によって実際の安全性等を確認してから量産を開始するとしており、従来の計画を約1年前倒しして進めている大型BEVトラックは、2024年の発売に向けて順調に進捗しているようだ。
ミュンヘン・オリンピック公園で行なわれた大型BEVトラック長距離試験の最初のドライブには、マルクス・ゼーダー州首相のほか、MANのCEOを務めるアレクサンダー・フラスカンプ氏も同乗した。同氏は次のようにコメントしている。
「弊社の大型BEVトラックがウィンターテストを無事に終え、バイエルンの公道にやってきました。ドイツでは2025年にも電動トラックのコスト効率が内燃機関のトラックを上回る可能性があります。私たちは、運送会社からの需要が高まることが予想される、然るべきタイミングで電動の大型トラックを市場に投入します」。
同氏は市場でのBEVトラックの可能性に期待を寄せるいっぽうで、公共インフラ整備の重要性にも言及している。
「これを達成するためには、欧州全域で今すぐに50万基のメガワット級の高性能充電器が必要です。これはお客様の拠点と、幹線道路沿いの充電ステーションを合わせた数です」。