全国に25,000以上あると言われるバス路線。その中でも、県境を跨いで走る高速バス以外の一般路線バスの数は極端に少ない。そんな県境越えバスの実態はどうなっているのだろう? 今回乗りバスするのは西東京バス「奥10」系統だ!!
文・写真:中山修一
乗車時期:2023年6月
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■「山奥系」の県境越え路線バスが東京都に!?
県境越えをする一般路線バスを調べていくと、最初から最後まで山に囲まれたエリアを走行する「山奥系」がそれなりに見つかる。「奥10」系統も、そんな山奥系の一つで、意外にも東京都の路線バスだ。
京王バスグループの西東京バスが運行する「奥10」系統が結ぶのは、離島を除いた東京都でとりわけ深い秘境感を放つ奥多摩と、1957年に完成した人造湖・奥多摩湖へと流れる丹波川を擁する山梨県の丹波山村だ。
山梨県側の丹波山村まで最も近い鉄道駅は、JR中央東線の「塩山(えんざん)」で、約34km離れている。距離はともかく同じ山梨県内なのだから、特急停車駅でもある塩山あたりから路線バスが出ていそうな雰囲気はある。
ところが、山梨県側から丹波山村へ向かう公共交通機関の数は、タクシーを使わない限りゼロなのだ。山梨県なのに東京都側からしか向かえない、ちょっと不思議で旅心を誘う交通アクセス事情となっている。奥多摩駅からは約23.9kmなので、東京都のほうが近いといえば近い。
■平日よりも休日が有利
奥10系統の時刻表を確認してみると、やはりローカル路線バス然とした本数の少なさが目立つ。
都会の電車のダイヤに慣れていると、平日のほうが本数が多く、休日になると減るのが当たり前だと思ってしまうが、奥10系統にその考えを持ち込むとハードな世界を体験することになる。
奥多摩周辺は、手の届きやすい東京の行楽・観光地ということで、週末や世間一般が休みの日になると想像以上に賑わう。
奥10系統は観光路線としての役割が強いようで、土日祝ダイヤで6往復が設定されているのに対して、平日は3往復に減る。
平日ダイヤの場合、奥多摩駅を7:00に出た次が14:40までなく、丹波山村発も8:19の後は15:45と、観光目的で使うのは割と厳しい。余裕をもって乗りバスに勤しむなら、土日祝指定と考えて良さそうだ。