現在、フットブレーキの主流となっているのは円盤のようなローターをブレーキパッドが挟んで止めるディスクブレーキです。
そして、軽自動車やコンパクトカーのリアブレーキに採用されているのが、ドラムブレーキです。このドラムブレーキはブレーキシューをドラムの内側に押し付けるかたちで止めます。
さて、ディスクブレーキとドラムブレーキ、どちらが優れているのでしょうか? モータージャーナリストの高根英幸氏が解説します。
文/高根英幸
写真/ベストカーWEB編集部 高根英幸 Adobe Stock
■クルマには4種類のブレーキがある
クルマには大きく分けて4種類のブレーキがある。フットブレーキとパーキングブレーキ、それにエンジンブレーキ、さらに回生ブレーキだ。
パーキングブレーキは駐車時にクルマが動かないように固定しておくためのブレーキで、ワイヤーやモーター内のブレーキだけを作動させる。ジムカーナのサイドターンや欧州では緊急時の危険回避のために活用されることも多い。
エンジンブレーキはアクセルオフの状態で空走させるものでエンジンの駆動抵抗がブレーキの代わりに減速させる力になり、ブレーキの負担を軽減させる。回生ブレーキはハイブリッド車やEV のモーターを減速時に発電機として使うことで、運動エネルギーを電力として蓄えるもので、発電抵抗がブレーキになる。
これらは補助的なものであり、クルマの速度をコントロールしたり、前後の荷重移動、緊急時の急制動など減速を司るのはフットブレーキだ。
ブレーキペダルを踏み込むと4輪に備わるブレーキに液圧で力が伝わり、運動エネルギーを摩擦熱にして減速させる。
前に進んでいる状態から減速させると、前輪により多くの荷重がかかるため前輪のブレーキが強くかかる。そのためクルマのブレーキは前輪用の方が強力で、発熱に対する耐久性も高められている。
■まずディスクブレーキの構造を知る
ホイールの内側に装備されるブレーキは構造からディスブレーキとドラムブレーキの2種類がある。
ディスクブレーキとは円盤状のディスクローターをキャリパーが挟み込んで摩擦を発生させるもので、ほとんどのクルマの前輪に用いられている。
ディスクローターが外気に触れているので放熱性が高いのが特徴で、より放熱性を高めるべくローターを立体構造にして中央部にも数が通るようにしたベンチレーテッドディスクという構造もある。
ポルシェなどの高性能車はローターに鋳鉄ではなくカーボンセラミックなどの耐熱性と軽量性を兼ね備えた素材を用いているモノも多い。
■軽自動車やコンパクトカーに多いドラムブレーキのメリット、デメリット
それに対し、Bセグメントのコンパクトカーや軽自動車の後輪に使われていることが多いのがドラムブレーキだ。
■リアブレーキにドラムブレーキを採用した主な車種
プリウス(先代20系)、アクア、シエンタ、ヴィッツ、ノート、マーチ、フィット、スイフト、デミオなどコンパクトカーに多く、ハイエース、キャラバンもリアブレーキにはドラムブレーキを採用。N-BOX、デイズ/ek、ワゴンR、タント、スペーシア、ハスラー、ジムニーほか、リアブレーキにドラムブレーキを採用している軽自動車が多い
ドラム(筒)の内側に三日月状のブレーキシューを配置して、液圧によってブレーキシューをドラムに押し付けることにより摩擦を発生させる。
ブレーキとしての歴史はドラムブレーキのほうが古く、昔は4輪ともドラムブレーキのクルマも珍しくなかった。
ドラムブレーキのメリットは、安くて堅牢、制動力の高いブレーキが作れること。回転するドラムにシューを押し付けるのだが、回転方向の前方に支点があるリーディング側のシューは、自らドラムに食い付こうとする自己倍力作用が働くのだ。
ドラムの面積に対し、シューの接触面も大きいことも制動力が高い理由。ディスクブレーキはパッドの接触面積は小さめだが、その分放熱性が高い。
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