国鉄・JRの鉄道線から転換されたバス路線「代替バス」が、全国で現在も活躍中だ。鉄道時代からどう変わり、最近はどうなっているのか……実際に利用した上で、代替バスの実像に迫る!!
文・写真:中山修一
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■ニシンで栄えた港町を結んだ国鉄岩内線
北海道・後志(しりべし)地方。小樽から南西方向に最短距離で60kmほど進んだところに、明治〜大正時代にかけてニシン漁で栄えた岩内の町がある。
2023年6月現在で人口11,192人を擁し、主な産業は農業と漁業。乳製品や身欠きニシン、タラコ、海洋深層水を使用した地ビールなどが特産品に並ぶ。
その昔、この岩内の町まで、当時物流の大動脈であった函館本線の小沢(こざわ)駅から分岐した国鉄「岩内線」が通っていた。開業は鉄道院時代の1912年。
営業キロで延長14.9km・全6駅と短めの路線であったが、自動車が普及する以前は多くの人々や物が鉄路を行き交ったと言われる。
1960年代の後半にさしかかると鉄道線としては斜陽を迎え、国鉄がJRになる前の1985年7月に廃止された。
1985年3月のデータで、小沢〜岩内間を1日7往復+函館本線への直通が1本。函館本線との接続はある程度取られていたが、昼間は3時間以上空く時間帯もあった。
■ニセコバス小沢線が代替バスに相当
国鉄岩内線が廃止された後は、例によって路線バスが代わりを担うことになった。ニセコバスが運行する「小沢線」がそれに当たる。
岩内線の代替バス相当ながら「岩内線」とは呼ばず、バス的には鉄道の起点だった小沢駅に関連した「小沢線」に路線名を改めているのがポイントだ。
岩内線は小沢〜岩内間の往復が基本だったのに対して、ニセコバス小沢線は、JR函館本線の小沢駅から1つ(と言っても10km以上離れているが)隣の、倶知安(くっちゃん)駅前〜岩内ターミナル間およそ26kmを結ぶ。
1日平日9往復・土日祝6往復のバスが出ており、停留所の数は全部で32箇所。全区間の所要時間が約44分で、通しの運賃は780円となっている。
■どんなところを走る?
ニセコバス小沢線は、内陸部から海の方向を目指す路線だ。倶知安から出発した場合、倶知安の街を出ると、国道5号線をメインルートに、緑に囲まれた景色の中を進む。
行程の半分ほどを消化して、メインルートが国道276号線に移る頃になると、今度は車窓に田園地帯が広がってくる。
だんだんと住宅や大型店舗などが増えてゆき、進行方向正面に海がチラリと姿を見せつつ、カーブした緩い坂を下り始めてしばらく経つと、終点の岩内ターミナルの前に着く流れだ。