5月に入って気温が20度を超えることが多くなってきて、クルマのエアコン(冷房)を入れる季節になってきましたね。
でも朝晩は寒かったり、雨が降ってきて窓ガラスが曇ってしまったりと、寒暖の差で、エアコンの温度設定を何度にすればいいのか、迷ったことはありませんか?
そこで、エアコンの正しい使い方、コツをモータージャーナリストの鈴木伸一氏に解説してもらいます。
文/鈴木伸一
写真/ベストカーWEB編集部 Adobe Stock
■カーエアコンは家庭用エアコンと何が違うのか?
空調システムである「カーエアコン」は冷房のみを目的とした「カークーラー」とは異なり、冷房から暖房まで通年を通して利用することを前提としている。
とはいえ、一般ユーザーにとってのカーエアコンのイメージはあくまで「冷房」と思われる。
確かに、年間を通してもっとも仕事するのが冷房機能だからで、夏季には燃費をよくするべく「温度設定も高くすれば燃費を稼げるとのでは?」と考えがち。
家庭用エアコンはコンプレッサーの回転数を制御することで温度設定をしているため、急冷時や温度を低く設定するとコンプレッサーがフルに稼働。
しかも、設定温度を下げるほどにフル稼働時間は延びるため、必然的に電力の消費が増加する。
そういったこともあり、ひと昔前の省エネブームで「設定温度は高めに」にというフレーズが一般に浸透。今でも頭にこびり付いている人が多いものと思われる。
ところが、家庭用エアコンとカーエアコンとでは温度調整のしかたが根本的に異なるため、話しはそう単純ではない。
家庭用エアコンで冷房を行っているとき、室外機からは、なま暖かい空気が排出される。
熱交換といって室内の熱を室外に放出しているからだ。家庭用エアコンは冷媒ガスの流れを逆転させることで、この熱交換の流れを反転。冷・暖房を切り替えている。
これに対し、カーエアコンの冷却機構は冷房のみを行う単機能の「クーラー」そのもので、暖房は暖まった冷却水を利用する「ヒーター」が担うという別体構造になっている。
そして、吸入された空気は全てエバポレーター(クーラー機能の冷気を造る部分)を通過してから、エアミックスダンパでヒーターコア(暖まった冷却水で暖気を造る部分)を通る空気と通らない空気に分けられ(温度調整)、その後、混合されてから各吹き出し口に導かれ、車内に吹き出される。
つまり、エアコンスイッチをONにすると「冷気」と「暖気」がミックスされるわけで、状況によっては設定温度が低すぎても高すぎても同じくらい燃費に影響する。
冷房機能を作動させるためには冷媒ガスを循環させるエアコンのコンプレッサーを駆動する必要があり、「内気循環モード」の場合、設定温度が高いと室温の空気を再度0℃近くまで冷却するため、より多くのエネルギーが使われる(燃費の悪化を招く)ことにもなるからだ。
このエアコンコンプレッサーの駆動力、エンジンの軸出力から得ており、エアコンが作動すると駆動量が増加し、必然的にエンジンに負担がかかる。
また、モーターの駆動用バッテリーの電力でエアコンコンプレッサーを作動させているハイブリッド車の場合、外気温が30℃以下なら燃費の悪化はほとんど無視できるものの、30℃を超えるカンカン照りともなるとバッテリー消費が増加。電力を貯めるためにエンジンが始動してしまい燃費が低下することがある。
つまり、A/CスイッチをONでエアコンのコンプレッサーが動作しているかぎり、燃費の悪化は免れないわけ。
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