センチュリーに新たなデザインのモデルが登場した。SUVではない、とトヨタは断言するが、その主張は一般のクルマ好きにはちょっと受け入れがたいものかもしれない。しかしそこにはトヨタ、そして創業一族の豊田家としての強い思いがあった。歴史と伝統をいかに進化させるか、新たな挑戦が始まる。
文:ベストカーWeb編集部/写真:奥隅圭之
■乗降性などを求めた形がこれだった
ベストカーが最初に新しいセンチュリーの姿を記事にしたのが2022年12月頃。このころは「SUV」としてのセンチュリーの姿を予想していたし、あくまでもロールスロイスのカリナン、ベントレーのベンテイガへの対抗馬としての存在として捉えていた。
しかしワールドプレミアを見る限り「センチュリーはセンチュリーである」という強いメッセージを感じた。実際に広報部の担当者からも「これはセンチュリーの”SUV”ではありません」という助言も受けた。
というのも、あくまでも新型センチュリーはセンチュリーが持つ気品を確保しつつ、より快適に、より上質なクルマを求めた結果があの形であったという。
リアシートの背面にはガラス窓があり、ひとつの隔壁として荷室スペースとキャビンが隔離している。これはSUVの方程式からすれば非常にスペース効率が悪く、通常ではあり得ない設計になっている。
それもこれも快適性や安心感を優先したものであり、SUV(Sports Utility Vehicle)と呼ぶにはほど遠い存在なのだ。
■「コーチビルド」をトヨタが始める
ヨーロッパにはコーチビルダーと呼ばれる職人集団がいる。「コーチ」つまり「馬車」を組み立てる職人を指す。旧来は馬車の車体、それが転じてフレーム車のボディ架装、さらには高級車の内装の誂えなどをする仕事へと進化していった。
ベントレーなどが代表格だが「マリーナ・パーク・ウォード」などのコーチビルダーは歴史的な特別仕様車を作ってきたし、それがロールスロイスやベントレーでも未だに形としては残っている。
新型センチュリーについてもフルオーダーのシステムが組まれることが発表された。ボディカラー、内装などをはじめ、エンジン出力までもカスタマーの思い通りになるという。
製造を担当する田原工場のなかにそのようなラインや工房が整えられるようだが、これは完成車メーカーとしての歴史を紡いできたトヨタが、ついにコーチビルドの世界にも進出することに他ならない。
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