タクシー専用オールシーズンタイヤが登場したが……フツーのクルマのオールシーズンタイヤと何がどう違うのか？

　トーヨータイヤは2023年8月からタクシー専用のオールシーズンタイヤ「CELSIUS」（セルシアス）を発売した。そこでタクシー用のオールシーズンタイヤは普通車用のものとどう違うのか？　プロドライバーとしての見地から分析してもらった。

文／ハル中田、写真／AdobeStock（トビラ写真：J_News_photo＠AdobeStock）、TOYO TIRE

■オールシーズンタイヤってそもそもどんなタイヤなのよ？

　そうですか、ついにトーヨータイヤさんもタクシー用オールシーズンを出しましたか。オールシーズンタイヤもバリエーションが増えてきましたね。密かに推してきた身としては感慨深いものがあります。

「タクシー用オールシーズンタイヤ……？　普通のタイヤと何が違うの？」

「それはね……」と本題に入る前に、まずは「オールシーズンタイヤとはなんぞや？」をいったん整理しておきましょう。

　オールシーズンタイヤとはその名のとおり、サマータイヤとしての夏性能と冬性能も持っており、雪道も走れるタイヤのこと。春夏秋冬すべての季節をひとつのタイヤで過ごすことができます。

　季節ごとのタイヤ交換も不要で、手間も収納場所も気にする必要がなく、「冬の前後に交換しなくては。いつにしようかなぁ……」「大雪の前に急いで交換しなくちゃ！　でもどの店も激混みだ！」なんていう煩雑さからも解放される、多くのユーザーにとって非常に便利なタイヤです。

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■オールシーズンタイヤには2種類ある

　オールシーズンタイヤとひと口に言っても大きく2種類があります。

　まず、ひとつはサマータイヤをベースに最低限の雪性能をつけた「M＋S」（マッド&スノー）表記のみのもの。アメリカで一般的な「大通りはすぐ除雪されるから、家から大通りまでの少しの距離をなんとか走れればよし」というコンセプトのもの。あくまでも「雪はおまけ」程度でありアイス性能はまったくありません。あくまでもサマー性能が主です。

　たまに勘違いされることがありますが、同じ「M＋S」「アメリカで好まれる」であってもよりオフロード寄りの「オールテレイン」と言うジャンルもあります。日本でも本格系SUVでよく装着されていますが、これも実は雪性能は高くありませんのでご注意を！

　そしてもうひとつが、より積極的に雪道を走れるようシビアスノー試験をパスしたタイヤのみに付けられる、「3PMSF」（スリーピークマウンテン・スノーフレークマーク、通称スノーフレークマーク）付きのオールシーズンタイヤ。

　日本でも近年広がってきているこのタイプは、その冬性能の高さからスタッドレス規制でも走ることができ、まさに万能のタイヤと言えます。

　かつては冬性能も夏性能もともに中途半端であったジャンルだったのは否めませんが、地道な技術開発のおかげで今は全性能が底上げされ、文字どおり全季節で満足に走れるようになってきました。特徴的なVシェイプのトレッドパターンが多いのでパッと見でもわかりやすいですね。

　3PMSFの夏性能はそこらのスタンダードタイヤよりもいいのが多いですし、冬性能は3世代前のスタッドレスタイヤくらいといったところ。実際は製品によって夏性能に寄っていたり、冬性能に寄っていたりするので一概には言えませんが、総じて言えば普通に使う分にはまったく不満が出ません。

　ちなみに、各社ウェブサイト上では「アイス路面は不可」となっていたりしますが、私が試してきたかぎりでは最新スタッドレスには劣るものの案外走れます。

「そこそこ走れるのに不可としちゃうなんてもったいない！　なんで？」と内部の人に聞くと、「公取ほにゃらら……」「大人の事情」なんて言葉が漏れ聞こえてきたのでひとまず深掘りせぬようにしましょう。「氷もある程度走れるって書いてあるのに滑ったぞ！　クレームだ！」となるのも想像に難くありません。世知辛い世の中ですねぇ。

　とまれ、「シビアな雪道に行くことはほぼないし、基本的にスタッドレスは履かない。しかし、たまの大雪でも慌てないようにしたい。」というような方には非常にオススメできるタイヤです。みんなが履けばたまの東京の大雪でも混乱がなくなるのですよ！　みんな履こう！　履くしかない！！

　…とここまでが一般的な「オールシーズンタイヤ」について。

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