いすゞ自動車は、このほどメディア向けに開催したカーボンニュートラル商品・技術方針説明会で、2025年度にバッテリー交換式BEV(バッテリーEV)トラックの社会実証を開始すると発表した。このBEVトラック用に、レンジエクステンダー(航続距離延伸)ユニットの開発も明らかにした。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/フルロード編集部、いすゞ自動車
モビリティ・ショーの展示は本気だった
いすゞは今秋開催の「ジャパン・モビリティ・ショー2023」(JMS2023)で、商用車バッテリー交換式BEVコンセプト「EVision Cycle Concept」(イービジョン・サイクル・コンセプト、以下ECC)を世界初公開した。
この時点では、小型BEVトラック「エルフEV」の高電圧バッテリーを自動で交換するステーションを、「あくまでEVトラック運用のアイディアの一つ」として参考出品していたが、11月29日のカーボンニュートラル商品・技術方針説明会で、これが実用化に向けた開発案件の一つであることを公表したのだ。
そして、いすゞが明らかにしたECCとは、小型トラックに求められる積載量、航続性能、稼働時間、そして価格および運行コストを満たしつつ電動化社会を実現するための、新しい商用車運用の姿だったのである。
EVの諸問題とECC
小型EVトラックの課題として、充電時間の長さ、バッテリーの劣化、高額の車両価格、高額の電気料金、不使用バッテリーの未活用、社会全体での総電力量の増大などが挙げられる。
ECCでは、その解決のために、高電圧バッテリーを交換式として、バッテリー容量を最適化、必要以上の容量(バッテリー個数)を積まないことで積載量を確保する。運行で電力を消費しても、交換ステーションで短時間(3分)のうちに満充電バッテリーへ交換することで、高い稼働性での運用を維持する。
また、高電圧バッテリーをシェアリングで共用するものとし、車両価格には含まれない、という点も注目だ。新車導入コストは車両本体のみとなり、ディーゼル車なみの価格で購入できるという。リセール時には車両本体を売却でき、中古車としての価値も創出される。これは、中古トラック流通市場の維持という見地からも重要な点だと思う。
交換により外した高電圧バッテリーの充電には、大電力が必要な急速充電ではなく、普通電源を用いることで電力料金が抑えられる。さらに、余剰バッテリーや使用済みバッテリーを、太陽光やバイオマスなど再生エネルギー発電の電力貯蔵装置として活用し、蓄えた電力を系統電力(電力グリッド)へ供給、発電インフラの負担を減らすといったスケールまで想定されている。
いすゞ自動車の大平隆専務執行役員は、「(必要なぶんだけの)バッテリーを使いたおすことで、バッテリーの総量も減らせるのではないか」と、ECCが目指す究極の姿を表現している。