三菱ふそうの電気小型トラック、新型「eCanter」に架装したゴミ収集車1台が香川県の事業者に納車された。ボディは極東開発がEVシャシ用に新開発したもので「eパッカー」の名称を復活させた。
「新型eパッカー」を架装する「新型eキャンター」は、高松市内の廃棄物収集事業に投入され、ゴミ収集作業のクリーン化に貢献する。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/三菱ふそうトラック・バス株式会社・極東開発工業株式会社
新型「eCanter」のゴミ収集車を国内初導入
三菱ふそうトラック・バス株式会社は、電気小型トラック「eCanter」(eキャンター)新型モデルのゴミ収集車1台を初めて香川県で納車した。新型eキャンターに架装するゴミ収集車の初号車で、ボディは極東開発工業株式会社が製造し、2023年12月8日に香川県内で廃棄物収集事業を行う株式会社ティエラルに納車された。
2023年に発売した国内で第3世代目となる新型eキャンターは、モーター駆動の動力取り出し装置「ePTO」を新たにオプションで搭載し、車載リチウムイオンバッテリーからePTOを通じて動力を架装側に伝達することで、ゴミ収集車やダンプ車両、冷蔵・冷凍車などの架装に対応する。
ティエラルが導入した新型eキャンターのゴミ収集車は、車両後方から投入したゴミを自動的に奥に押し込む圧縮装置を備えた「パッカー車」仕様で、極東開発工業がEVゴミ収集車用の架装として新たに開発した「新eパッカー」を採用する。
車両は、走行時およびゴミ回収作業時のいずれもフル電動で駆動するゼロエミッション車両で、バッテリーパック(リチウムイオンバッテリー)を2基搭載した「Mバッテリー」車両となる。一充電当たりの航続距離は213km(国土交通省審査値)だ。
バッテリー電気(BEV)トラック・eキャンターの初代モデルは2027年に登場した。2020年に安全装備などを拡充した改良モデルを発売し、2023年3月のフルモデルチェンジで車型を大幅に増やしている。BEVは走行時に排ガスを出さず、騒音や振動が少ないため、商店街や市街地など地域の環境に配慮した走行や作業が可能だ。
極東開発の「eパッカー」とは?
その新型eキャンターに架装されるのが、極東開発工業のBEVシャシ向けの電動式ゴミ収集車、新「eパッカー」となる。ティエラルが導入したゴミ収集車は、新型eキャンター架装の始めてのゴミ収集車であるとともに、新eパッカーを搭載する第1号車でもある。
極東開発工業は2010 年にリチウムイオンバッテリーで圧縮装置を駆動する日本初の電動式ゴミ収集車として初代「eパッカー」を発売している。
また、2011年に はPTOに加え3相200Vコンセントからの電気でも圧縮装置を駆動可能な「ツインドライブ・eパッカー」、2014年には世界初のハイブリッドシャシの走行用モータで圧縮装置を駆動させる「eパッカー ハイブリッド」をそれぞれ開発・発売しており、電動式ゴミ収集車のパイオニアとして市場を開拓して来た。
今回開発した新型車は、BEVの駆動用バッテリーからモーター式ePTO(新型eキャンターにオプション設定されるePTO)を介して動力を伝達することにより圧縮装置を駆動させるもので、走行も作業もフル電動のゴミ収集車となる。
名称は電動式ゴミ収集車の代名詞として親しまれた「eパッカー」を復活させた。新「eパッカー」1号車は、ボディ容積7.1立方メートルの排出板押出式プレス式ゴミ収集車(極東開発のプレス式塵芥車「プレスパック」シリーズ)だ。ちなみに極東開発は「2023NEW環境展」でBEV塵芥車のコンセプトモデルを公開していた。
フル電動のため、いわゆるタンク・トゥ・ホイール(発電~充電までを考慮に入れない走行時)で排気ガスやCO2を排出しない。ゴミ収集車は早朝・夜間など静かな作業が求められるが、電動化によりエンジン車と比べて圧倒的な低騒音を実現した。
いっぽうでボディ容積、投入口高さ、仕様、オプション対応などはエンジン車と変わらず、作業性を確保した。
新型「eパッカー」を架装する新型「eキャンター」を導入したティエラルは、同車を高松市の商店街における事業用ゴミ回収に用いる予定で、排出ゼロで低騒音というBEVゴミ収集車のメリットを最大限に活かし、事業活動における環境保全や、エコドライブを通じた環境負担軽減に向けた取り組みを推進して行く。
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