本格的なものからは一歩下がる機能やスタイルを“なんちゃって”と呼ぶことがある。今回紹介する4WDシステムもまた“なんちゃって”などといわれているが、実際には合理性の高い優れモノだ。
文/長谷川 敦、写真/スズキ、トヨタ、日産、フォルクスワーゲン、FavCars.com
【画像ギャラリー】「なんちゃって」でも実用性は十分!! パッシブ・オンデマンド4WDの利点を考える(6枚)画像ギャラリー■4WDといっても形式はさまざま
かつては悪路走行用車両御用達の機能だった4WD(4輪駆動)も、現在では一般道を走る乗用車の多くに採用されている。
しかし、ひと言で4WDといっても実はいくつかのタイプに分類されるのをご存じだろうか?
乗用車の4WDシステムを大きく3つに分けると「フルタイム4WD」「パートタイム4WD」「スタンバイ4WD」になる。さらに細かい区分けもあるが、それは今回の主題ではないため、この3パターンで説明したい。
フルタイム4WDとは、文字どおり常に4輪に駆動力がかかっていること。メリットは高い悪路走破性だが、常時4輪を駆動していることもあって燃費面で不利になる。
パートタイム4WDとは、通常は2WDで走るものの必要に応じて4WDになる方式。
この2WD→4WDの切り換えはドライバーの操作によって行われる。必要なとき以外は2WDなので、フルタイム4WDよりも燃料消費が抑えられる。
そして最後がスタンバイ4WDだ。これもまた必要に応じて2WDから4WDに変化する方式だが、パートタイム4WDとは違って自動的に2WDから4WDへの変更が行われる。
スタンバイ4WDはさらに「パッシブ・オンデマンド4WD」と「アクティブ・オンデマンド4WD」に分類されるが、これまで主に採用されてきたのがパッシブ・オンデマンド4WDだ。
■4WDモデルの最大勢力
現代の4WDモデルでメジャーなのがパッシブ・オンデマンド方式といわれている。
これは通常走行用の2WDと、トラクションを得たいときの4WDを自動的に切り換えるシステム。
パッシブ・オンデマンドのほかにアクティブ・オンデマンド4WDと呼ばれるシステムがあるが、パッシブが機械的に駆動方式を変更するのに対し、アクティブは電子的に制御が行われる。
スタンバイ4WDを採用するクルマには、FWD(前輪駆動)をベースにしたものと、RWD(後輪駆動)をベースする2タイプがあり、通常は前/後輪のどちらかに駆動力が与えられている。
たとえばFWDベースのスタンバイ4WD車の場合、スリップなどの理由によって前輪の回転数が後輪のそれを上回った場合、特殊な機構によって後輪にも駆動力が分配されて車体の姿勢を安定させる。
4WDへの切り換えが前後輪の回転差を検知してから受動的に行われるのがパッシブ・オンデマンド4WD、電子制御によって能動的に駆動方式を変更するのがアクティブ・オンデマンド4WDということ。
このように能動的な制御になるため、パッシブ・オンデマンド4WDは“なんちゃって4WD”などと揶揄されることもある。だが、このシステムが多くのクルマに採用されるのはもちろん理由がある。
コメント
コメントの使い方オンデマンド式については、2006年ごろにAOLで、日産出身の笹目二朗さんが当時のクライスラーのテスト結果をもとに書いた記事で、タイムラグが生じてしまうこと、二輪駆動で走っているときは非駆動輪の抵抗が大きくなるので、燃費はフルタイム式よりもむしろ悪くなること、他にもカップリングの耐久性の低さなどが指摘されています。