今やファミリーカーの象徴となっているミニバンだが、その原点が日産車だったことを知る人は少ないかもしれない。連載第8回目となる日産ヘリテージコレクションの名車紹介では、ミニバン界のパイオニアである初代「プレーリー」(M10型)を取り上げる。
文/大音安弘、写真/池之平昌信
【画像ギャラリー】2代目スタンザ&オースターをベースに開発されたミニバン、日産初代プレーリーを写真でCHECK!(13枚)画像ギャラリー■ビッグキャビン&ショートノーズのスタイルで登場!
ワゴンといえば、ワンボックスカーを指す時代だった1980年代の乗用ワゴンは、商用バンをベースに快適化と上級化を図ったものであった。日産では、これを「コーチ」と呼び、小型ワゴン「バネットコーチ」と大型ワゴン「キャラバンコーチ」が、その役目を担った。
当時の乗用車におけるレジャーニーズの高まりを感じた日産は、既存の概念にとらわれず、RV(レクリエーショナルビーク)に求められる居住性や多用途性を最大限に追求しながら、走行性能や経済性などの基本性能も重視した新ジャンルのクルマを開発した。それが1982年(昭和57年)8月に投入した新型車「プレーリー」だった。
新たな時代のクルマの在り方のひとつを示す世界初のニューコンセプトカーとして提案された。それはまさしく現代のミニバンの基礎となるもの。商用車の延長であったワゴンのイメージを払拭し、セダンライクな運転感覚と走行性能、そして、最大8名乗車を可能とする広々した居住空間を実現すべく、まったく新しい「ビッグキャビン・ショートノーズ」デザインを採用。これは1.5ボックスと呼ばれるノーズ付きワゴンの先駆者でもあった。
初代プレーリーは広々としたキャビンを実現するために、駆動系がボンネット内に収まるFFレイアウトに加え、世界初のセンターピラーレスフルオープンドア構造を採用。このため、全高を1600mmに抑えながらも、後部座席への優れたアクセス性を実現していた。
■多彩なシートレイアウトも初代プレーリーの特徴
シートレイアウトも多彩で、フロントベンチシートによる3+3+2の8人乗りをはじめ、フロントセパレートシートとなる2+3の5人乗りの乗用仕様に加え、プロユースを意識した前席のみの3人乗りと3+3の6人乗りも用意された。
パワートレーンは、主力となる直4、1.8LのCA18型エンジンとFF専用開発の直4、1.5LエンジンのE15型を搭載。フロントベンチシートとなる8人乗り車と6人乗り車は、コラムシフトの4速MTと3速ATを設定。また、プロユースの3人乗り車はコラムシフトの4速MTのみ。
フロントセパレートシートとなる5人乗り車は、フロアシフトとなり、5速MTを基本とするが、1グレードのみフロントベンチシートの5人乗り車があり、こちらはコラム式3速ATとされた。
サスペンションはフロントがストラット式、リアが広いフロアを実現する目的でフルトレーリングアーム式を採用していた。モデル構成は、乗用仕様のセダンとビジネス仕様のエステートを用意。発売時の価格はセダンで119万~134万5000円(東京地区MT車価格)であった。
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