近年、ミニバンやSUVに多く採用されているパノラマルーフ。スイッチ1つで解放感が味わえるということで人気のオプションだが、少し前までは天井が布張で、くるくると布を巻きあげるキャンパストップが大ブームだったが今どこへ行ったのか。振り返ってみよう。
文/佐々木 亘、写真/MAZDA
■布の天井「キャンバストップ」
天井部分に布を使うクルマは、現行型のマツダ・ロードスターが有名だ。
布という面ではキャンバストップと同じなのだが、厳密に言うとロードスターに採用されているのはソフトトップ。キャンバストップとは少し違う。
キャンバストップ(Canvas Top)は、トップ(天井)だけがキャンバス(帆布:※平織で織られた厚手の布)なのである。
実際には帆布を模したビニールのケースもあった。車体にはA・B・Cの各ピラーが存在し、天井の鉄板だけが、ごっそり抜けたクルマなのだ。
ソフトトップの場合はCピラーを開閉可能な布製ルーフが兼ねている。
キャンバストップは、まさに天井だけをぶち抜いて、そこに布をかけましたという、今では考えられない構造のオープンモデルなのだ。
■スバル360が元祖?キャンバストップの歴史
国産車でキャンバストップを取り入れたのは、1959年のスバル・360だ。
コンバーチブルという名前だが、ピラー以外のルーフ部分が幌になっており、リアウィンドウまで車両前方から後方へ向けて幌が巻き取れるようになっていた。
ここからオープンカーがブームになるのだが、ソフトトップのコンバーチブルを名乗る車両が増える一方。
ルーフだけが開けられるキャンバストップは、解放感の少なさが災いしてか、人気を失っていく。
しかし、1986年からキャンバストップがまた復活していく。口火を切ったのはマツダがオートラマ店で販売したフォード・フェスティバだ。
電動キャンバストップを採用し、スイッチ一つで手軽にオープンドライブを楽しめる同車はヒットした。
この成功を受け、コンパクトカーではキャンバストップの採用が進んでいき、軽自動車では、三菱・ミニカ(H11A型)がオープントップの名でキャンバストップを採用する。
「あした。晴れるといいね。」とオープントップの爽快感を強調するミニカのカタログ。
ハットオフ(帽子を脱ぐ)と表現され、まるで高価なオプションのように「とびっきりの青空つき」と記されているのも面白い。
小さなクルマでも開放感のあるドライブを楽しむためにと、小型車に採用されることが多かったキャンバストップ。
出ては消えてを繰り返しながら、存在感を徐々に薄めていくのだった。
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