空前のヒットとなった510型系や、U12型系など、歴史にその名を残してきた日産ブルーバード。
現在はその看板を降ろし、後継車シルフィとして2012年より国内で販売されている。環境性能が良く清潔感ある正統派セダンとなったシルフィだが、すでに登場から7年も経ち、モデル末期に近づいている。
シルフィは、既にその役目を終えてしまったのか、元自動車メーカーの開発エンジニアであった筆者が考察する。
文:吉川賢一 写真:日産
ブルーバードの歴史を振り返る
現行車であるシルフィの役割を考える上で、まず、これまでのブルーバードの歴史を簡単に振り返りたい。
ブルーバードは日本を代表するファミリーカーとして、1959年から長きにわたって国内販売されていた。なかでも爆発的ヒットしたのが、1967年から1972年にて販売された3代目ブルーバード510型系 (以下510ブル)だ。
エンジンは、1.3リットルL13型を積んだ量産仕様と、上級モデルとして1.6リットルL16型を積んだSSS(スーパースポーツセダン)仕様の2グレード構成であった。
海外では、廉価でありながら欧州車並みに高性能であったことが認められ、プアマンズBMWとも呼ばれた。
また、レースシーンでも活躍し、1970年に行われた東アフリカサファリラリーにて、総合優勝とチーム優勝を達成。この勝利が大々的に報じられ、ラリーの日産を大きく印象付けることに成功したクルマでもある。
また、1987年から1991年まで販売された8代目ブルーバード(U12型系)も名車と名高い。駆動方式はFFおよび4WDで、4速ATもしくは5速MT、サスペンションは、フロントにマクファーソンストラット、リアにストラット形式が搭載されていた。
U12型系ブルーバードの大きな特徴が、ATTESAと呼ぶセンターデフ式フルタイム4WDシステムを最初に採用したことだ。後に、スカイラインGT-Rにもこのシステムの改良型が採用となっている。
また、SSSアテーサリミテッド仕様には、スーパー・トー・コントロール・サスペンションが設定され、操縦安定性の高さも評判が良く、走りの次元が高いスポーティセダンとして広く認知されたクルマだ。
愛用するユーザーに510ブルの魅力を聞くと
筆者の知人にも、この510ブルを所有する40代メーカー系エンジニアがいる。
「何が魅力か?」と尋ねると、「シャープな外観デザイン、L型エンジンでメンテやチューニングの自由度が高い、サスペンション含めて手を入れてやれば今でも十分な速さと快適性を持っていること、手頃なサイズとよくできたパッケージ、などクルマとして良くできている。」と即座に返ってきた。
ちなみにレース用と普段使いで、510ブルを2台持ちしていたそうだ。ご自分よりも年上のクルマを、大切にメンテナンスして、カーライフを心底楽しまれているようすだった。
ブルーバードが背負っていた役目とは、タフな走りでクルマ好きを唸らせる、コンパクトでカッコイイクルマであったであろう。クルマ好きの間では、当時の走りの良さが、鮮明に刷り込まれているようだ。
後継車シルフィとは?
ブルーバード11代目にあたるG10型から車名をブルーバードシルフィと変えた。
子育てを終了した40~50代のポストファミリー層をターゲットにしたことで、サニーのコンセプトに近い、環境性能の良い保守的なセダンとなった。シルフィはこの11代目から新たなミッションを背負い、大きく生まれ変わったのだ。
つまり、ブルーバードの後継車としての役目は終えている。
現在は、13代目相当のB17型シルフィと、遂に車名からブルーバードの冠を消し、日本だけでなく中国やタイなど世界中で販売される戦略車となった。
シルフィはシンプルでクリーンなインテリアを備え、操縦安定性も高く、かつ後席まで含めて乗り心地もよく、更にはコストパフォーマンスも高い。
ブルーバードの後継車として捉えると物足りなくなるが、シルフィというクルマと捉えれば、中国やタイなどの海外で爆発的に売れている日産車の一台であり、この手頃なサイズのセダンは今の時代にあっているといえよう。
日産がセダンタイプの商品ラインアップをグローバルに強化するというアナウンスをしていることからも、4月の上海モーターショーでワールドプレミアをした新型SYLPHYは、日本にも導入されると筆者は予測している。コンパクトで使いやすいセダンとしてシルフィは健在なのだ。
コメント
コメントの使い方