2019年5月29日、フェラーリがニューモデル、『SF90ストラダーレ』を発表した。価格は、ベストカーの予想では最低ラインでも6000万円、よもやすると1億円超えも、といったところか。
フェラーリ創設90周年記念モデルとなるこのSF90ストラダーレは、フェラーリ初のPHV(プラグインハイブリッド)で、4L V8ターボエンジンに3個の電動モーターを組み合わせた4WD。
なんとシステム全体で最高出力1000ps、最高速度は340km/hを引き出し、「ラ・フェラーリ」の963psを超える史上最強モデルになるというから驚きだ。
ただし一方で注目されるのがPHVであること。圧倒的なパワーを味わえるだけでなく、静かに出かけたいのであれば、モーターだけを使って約25kmの距離を走れる。
欧州では内燃機関だけで走るクルマの新車販売に期限を設けはじめている今、官能的なサウンドが特徴のフェラーリもこの流れには逆らえず、25kmの距離とはいえ静かに電気で走るフェラーリがついに登場した、ともいえる。
そこで、「ベストカーでフェラーリ」といえばこの方、自動車評論家の清水草一氏にSF90 ストラダーレを紹介してもらおうと思ったのだが……!?
※本稿は2019年7月のものです
文:清水草一、ベストカー編集部/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年8月26日号
■これがフェラーリの方向性なのか???
SF90ストラダーレの性能については、スペック表を見てほしい。実は私、この原稿依頼を受けてから初めて見たのだが……。
個人的には、SF90 ストラダーレにはまったく関心がない。ラ・フェラーリにもなかった。何を隠そう私は、488以降のフェラーリからは関心を失っている。
「そんなヤツが書いた原稿なんぞ読みたくないよ!」と思われるでしょう。申し訳ありません。が、私はこのSF90 ストラダーレに対して、とりわけ否定的である。
SF90 ストラダーレは、システム合計最高出力1000psを誇る、フェラーリ史上最速の市販車とのことだが、このマシンはフェラーリ初のPHVであり、フェラーリ初のV8ミドシップ4WD車でもある。
PHVということは、それなりの容量のバッテリーを積んでいるってことで、つまり重量がかさむ。しかも4WD。どちらも、これまでのフェラーリとは正反対の方向性だ。
ラ・フェラーリもハイブリッドだったが、あちらはプラグインではなかったし、なによりも後輪駆動は守っていた。エンジンもV12自然吸気だった。そして乾燥重量は公称1255kgだった。
まぁ乾燥重量だし公称だから、実際の重さはわからないが、自分が乗っていた458イタリアで、車検証の重量は公称のプラス200kg。ラ・フェラーリもプラス200kgと仮定しても、かなり軽い。
■「速ければいい」だけのクルマになってはいないか
一方今回のSF90ストラダーレは、エンジンがV8ターボ。そこに3基のモーターを加えたNSXばりのトルクベクタリング4WDで、乾燥重量は1570kgと発表された。
フェラーリがターボ化されただけで、あの甲高い排気音が聞けなくてガックリなのだが、SF90ストラダーレの実際の重量は、1800kgくらいあるんじゃないか?
なんとなく、「これで速くたってなぁ」という思いがもたげる。
フェラーリとは、死と隣り合わせの甘美な快楽を提供する装置だったと私は考えている。が、SF90ストラダーレは、ただ速けりゃそれでいいクルマになってないか?
フェラーリがCO2を削減して、地球環境にどんだけ貢献できるのか。住宅街をEV走行で静かに走ってどうするんだ? ふだん乗るクルマでもあるまいに。
このクルマの目的は何なのか。ルックスもコルベットみたいで、どうにも心が躍らない。まあそっちは、実物を見てみないとわかりませんけど、期待はしていない。
■フェラーリSF90 主要諸元
全長×全幅×全高:4710×1972×1186mm
ホイールベース:2650mm
車両重量:1570kg(乾燥重量)
エンジン:V8DOHC ツインターボ+モーター
排気量:3990cc
最高出力:780ps/7500rpm
最大トルク:800Nm/6000rpm
ハイブリッド総合出力:1000ps
トランスミッション:8速DCT
タイヤサイズ:255/35ZR20、315/30ZR20
駆動方式:4WD
最高速度:340km/h
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