先日、とあるZ世代の人とクルマについて話をしていたとき、「ディーラーにいくと1日潰れる。交渉次第で安くなったり高くなったり、コミュニケーション能力次第で何十万円も売買価格が変わるのはおかしい。一括で安くするか、そのぶんを性能に回すべきではないでしょうか」といわれ、なるほど一理あると感じました。
「新車を買うとはそういう(=ディーラーで営業スタッフと仲良くなって値引きしてもらう)こと」だと、筆者は思っていましたが、たしかにタイムパフォーマンスは悪いですし、自分がほかの人よりも損をしているのか得をしているのかすら、よくわかりませんよね。新車販売における、対面営業のいい面とそうでない面を考えてみました。
文:吉川賢一/アイキャッチ画像:写真AC_ACworks/写真:Adobe Stock、写真AC
オンライン完結の「KINTO」が若い世代に人気となっている
確かに、ディーラーの対面営業はダルいです。購入したいクルマの見積もりをもらうには、実際にディーラーへ行き、営業スタッフと話をする必要があり、一度見積もりをもらってしまうとロックオンされてしまうので、営業電話にも対応しなければなりません。そこからさらにお得に購入するためには値引き交渉が必要とか、考えてみれば、新車をお得に購入するのは、なかなか時間と話術と根気がいる作業です。
そのため、冒頭の若者のように考える人は若い世代に多いようで、トヨタ系のクルマのサブスクリプションサービス「KINTO」が若い人に支持されているのも、対面営業がなく、オンラインで完結することが理由だそう。「価格表示が分かり易いから」や「オプション選びや面倒な保険などのややこしい手続きが不要」、「クルマは使いたいけれど、趣味にするほど好きではなく、クルマに関して時間をかけたくない」というのもKINTOを選ぶ理由となっているようです。
「クルマを買うとはそういうこと」と考えている筆者も、以前はディーラーに行くのが苦手でしたし、営業スタッフとのやりとりを、面倒くさいと感じることはいまもあります。筆者はコミュニケーション能力が高いとはいえませんし(むしろ苦手)、タイパも重視するので、普段はもっぱらネットショッピングです。店員さんがついてくる洋服屋さんもあまり好きではありません。ましてやディーラーの営業スタッフは、話術に長けている人が多いので、初めて行くディーラーでは相手のペースで商談が進んでしまわないよう、かなり身構えて行きます。若い人だと相手の営業スタッフは多くの場合年上ですし、余計にそう感じてしまうのでしょう。
ディーラーでの時間は無駄とは限らない
ただ筆者は、いまとなっては、車両購入や車両点検など、ディーラーに行く用事ができると、むしろ楽しみに感じられるようになりました。それは、メンテナンスのついでに、クルマに関する些細な相談や情報交換ができるなどの「いい思い」ができるということを経験してきたからです。担当の営業スタッフと仲良くなると、そのスタッフは自分のことを大切にしてくれていろいろと融通してくれますし、次に買うクルマで、値引きを頑張ってくれたりもします。こそっと新型車の情報を教えてくれることもあります。
特にクルマに関しての経験が少ない若い人にとっては、ディーラーの営業スタッフはタダで使える情報源だと思います。昨今はYouTube動画やWEB記事など、複数のクルマを比較検討した無料情報が大量にありますが、そのレビュワーの感想でしかなく、ご自身の状況に合った内容とは限りません。もちろん参考にするのはよいことですが、レビュワーを丸ごと信じてクルマを買うのは、リスクもあります。
雑多にある情報を整理して、ご自身で決心できるならば対面営業無しでの購入もありかなと思いますが、若い世代だからこそ、見落としてしまうこともあるでしょう。値引きを引き出す話術が必要という面は確かに若者のいうとおりな気がしますが、何人ものクルマの購入をみてきた営業スタッフが、自分のクルマの購入を失敗しないように手伝ってくれている、そう考えれば、その時間は決して無駄ではないのではないでしょうか。
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