モリゾウさんが[メディア]を信じるワケ 公聴会が産んだ[ビジネスモデル]の原点って?

モリゾウさんが[メディア]を信じるワケ 公聴会が産んだ[ビジネスモデル]の原点って?

「今の日本は頑張ろうという気になれない」というメディアに向けたモリゾウさんの発言が意図を持って切り取られ、報道された。影響力の大きさからとはいえ、モリゾウさんにとってはフラストレーションがたまることばかりだったはず。そこで、「モリゾウさんはメディアをどう見ているのか?」を解説していこう。

※本稿は2024年8月のものです
文、写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2024年9月26日号

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■メディアに対していつも本音をさらけ出す

オートポリスで開催されたスーパー耐久でファンからのサインの求めに気軽に応じるモリゾウさん
オートポリスで開催されたスーパー耐久でファンからのサインの求めに気軽に応じるモリゾウさん

 ベストカーもメディアであり、大上段でそんな話ができるのか? という意見はあるだろう。

 しかし、モリゾウさんを取材してきたベストカーとして言うべきこともある。特にこの連載を読んでいただいている読者の皆様には、SNSで悪意を持ってモリゾウさんが取り上げられることを疑問に思うこともあると思う。そこで今回は「モリゾウさんとメディアの関係」を掘り下げようと思う。

 まずモリゾウさんは「会社名とトップの名前と顔が結びつく数少ない人」と自分のことを語っている。トヨタ自動車といえばモリゾウさんの顔が浮かぶという人は多いだろう。

 つまり、メディアが取り上げやすいことをしっかりと理解している。そのうえで、モリゾウさんはこれまでも我々自動車メディアだけではなく、経済メディアに対しても、いつも堂々とホンネで話す。

 なぜ、そこまでするのか? モリゾウさんは人生と重ねながら、こう言っている。

「私は常に『創業家』という色眼鏡で見られてきた。何をやっても、『苦労知らずのボンボンにはできないでしょ』と言われてきた。だから、いい所も悪い所も全部さらけ出してでも、素の自分を見てほしい、本当のことを伝えてほしいという気持ちが強くなったのだと思う」。

 モリゾウさんは、メディアの前でも自分を飾ろうとしない。むしろ、伝播力のあるメディアだからこそ、素の自分を見せ、本音を語ろうとする。

 さらにモリゾウさんは「メディアは国民の教科書」と話す。いいことも悪いことも事実が伝えられることで、国民が教えられ、勉強になるという想いがある。

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■水素社会の実現は自動車会社だけでは実現出来ない

路面温度が50℃にもなる酷暑の中、オートポリスでモリゾウさんは液体水素エンジンカローラをドライブした
路面温度が50℃にもなる酷暑の中、オートポリスでモリゾウさんは液体水素エンジンカローラをドライブした

 スーパー耐久の取材に来た記者には「現場で見たこと感じたことをそのまま伝えてほしい」と語りかける。水素社会の実現は自動車会社だけでは実現できるものではない。だからこそ、モリゾウさんはメディアの力を信じ、伝えることを諦めていない。

 実際に水素エンジンカローラのステアリングを握るモリゾウさんの姿が多くのメディアで報道されることで、水素社会実現に向けサイレントマジョリティと呼ばれる人たちの心を動かし始めている。

「私はジャパンラブ、日本を元気にしたいという想いで日々動き回っています」。トヨタのためだけでなく、自動車業界全体のために休みなく働き続けるモリゾウさんの原動力だ。

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■2010年の公聴会が生んだモリゾウさんのビジネスモデル

 2009年社長に就任したばかりのモリゾウさんは危機に直面した。北米や日本でおこったトヨタ車の大規模リコール問題だ。モリゾウさんは2010年にアメリカ議会下院の公聴会に出席し証言をした。猛烈なトヨタバッシングの中、モリゾウさんは正直に丁寧に答え、クルマを誰よりも愛していることを訴えた。

 ありのまま真摯に話すモリゾウさんの姿にメディアは見方を変え、アメリカの世論も変わっていった。

 後にモリゾウさんは社長としての原点は公聴会にあると語り、「あの場に立ち、正直な思いを話したことで『逃げない、嘘をつかない、ごまかさない』という自分自身のビジネスモデルができたのです」とも語っている。

 その『逃げない、嘘をつかない、ごまかさない』という姿勢は会長になってもいささかも揺らいでおらず、認証不正問題でも記者の質問に正直に丁寧に答えていたことはご存知のとおりだ。

 むしろ、記者会見や囲み取材で正直にありのままを話したことが切り取られ、ニュースになり、面白がられてしまう状況になっている。そのことがモリゾウさんは悔しく、残念に思っているに違いない。

 去る7月18日に長野県茅野市で行われた交通安全を願う聖光寺の夏季大祭での囲み取材で、モリゾウさんが「今の日本は頑張ろうという気になれない」と発言したその趣旨は、切り取りや悪意のある報道が多すぎることを憂えた発言だ。

 この発言の後の「強いものをたたくことが使命だと思っていらっしゃるかもしれませんが、強いものがいなければ、国というものは成り立ちません。

 強いものの力をどう使うかということを、しっかりと皆さんで考えて、厳しい目で見ていただきたい。強いからズルいことをしているんだろう、だから叩くんだという考えは……」に、モリゾウさんのホンネが溢れている。

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