配線やホースを束ねる結束バンドや長さ調整でワイヤーを切断する際に、迷わずニッパーを手にする人は多いでしょう。確かにニッパーは、電気配線から樹脂部品、薄い鉄板まで切断できる汎用性の高い握り系工具の代表格です。しかしプライヤメーカーには作業内容や用途に応じたさまざまな専用工具があり、対象物を安全で効率的に切断できる特徴を備えています。ここでは工具箱に備えておきたいワイヤーカッターと結束バンドカッターの特長と利点を解説します。
切断のメカニズムが異なるニッパーとワイヤーカッター

スリーピークス技研製ワイヤーカッターWC-165。切断能力はφ4.0までのワイヤーロープで、鉄線や銅線、電気用のVVF配線には対応していない。工具メーカーを問わず、ワイヤー切断用のカッターは同様のデザインを採用している。
スロットルケーブルやドラムブレーキのワイヤー長を調整したり、自転車のブレーキワイヤーを交換する際にインナーワイヤー切断が必要になることがあります。そんな場面でニッパーを使用する人は多いのではないでしょうか。
切断用のハンドツールで最もポピュラーな存在であるニッパーは、電気配線にもワイヤーにも対応しますが、ワイヤー切断にはさらに適した専用工具があります。それがワイヤーカッターです。ワイヤーカッターにもさまざまな形状の製品がありますが、ここでは刃先が円弧状に湾曲したカッターを取り上げます。
一般的なニッパーと円弧状の刃先を持つワイヤーカッターは、そもそも切断のメカニズムがまったく異なります。
【ニッパーはくさび状の刃で押し切る】
通常のニッパーの刃先は山型に尖っており、一方の刃先に注目すればくさびのような形状になっています。そして切断時には向かい合ったくさびが対象物に食い込みながら押し切ります。このため切断された断面は刃先の山型に沿って斜めになります。
【ワイヤーカッターは刃先がすれ違いハサミのように切断する】
ワイヤーカッターの刃は独特の円弧状であるとともに、刃先は紙を切断するハサミのようにすれ違います。これはくさびの頂点が突き当たるニッパーとの大きな違いです。刃先がすれ違うため、2つの刃はいずれも片刃である点もハサミと同様です。
切断のメカニズムが異なるニッパーとワイヤーカッター

円弧状の刃がワイヤーの外周に沿って幅広く接して、ハサミのようなすれ違い式の刃が上下からせん断するのが大きな特徴。ニッパーは刃先が山型でくさびのように食い込みながら切断し、なおかつ刃は点当たりになるため鋼線がほぐれてしまう。
ニッパーや通常のハサミは支点から刃先に向かって徐々に切断が進むのに対して、ワイヤーカッターはワイヤーが円弧状の谷の部分に包み込まれて接触面積が広く、まとまった状態で切断できます。
細い鋼線をより合わせたワイヤーをニッパーで切断すると、切断部分のより線がバラけて開いてしまうことがありますが、その原因はくさび状の刃が鋼線を潰しながら押し切るためだと言われています。
これに対してワイヤーカッターはハサミや裁断機のように刃がすれ違いながら、さらに細い鋼線が逃げないように円弧部分で囲い込みながら切断するため、ワイヤーがほつれることなく切断面がきれいに仕上がります。
これらをまとめると、ニッパーに対して
1.ハサミのように刃先がすれ違う
2.刃先がワイヤーを包み込む円弧形状
という2点がワイヤーカッターの特長だといえます。
実際にニッパーとワイヤーカッターでワイヤーを切断してみると、ニッパーは細い鋼線を「ブチブチブチ……と」1本ずつ切っていくような感触なのに対して、ワイヤーカッターは刃が鋼線に「サクッ」と入って気持ちよく切断することができます。切断したワイヤーをタイコに通したり、エンドキャップを取り付ける際に先端がほつれないのはワイヤーカッターならではで、専用工具の価値を実感できます。
配線用のケーブルカッターと鋼線用のワイヤーカッターは素材や硬度が異なる
ワイヤーカッターと似た形状の切断工具にケーブルカッターがあります。どちらも刃先形状は独特な円弧状でハサミのように刃先がすれ違うことから混同されがちですが、工具メーカーによれば両者の特徴と用途は全く異なります。
電気配線をケーブルと呼んだりワイヤーハーネスと呼ぶこともあり、逆に力を伝達するワイヤーをケーブルと呼んだり、果てはワイヤーケーブルという呼び方をすることもあるため混乱することもありますが、工業分野で導体、つまり電気配線はケーブルと区別されています。ケーブルもワイヤーも芯線は金属ですが、電気を流すケーブルと力を伝達するワイヤーでは素材の強度が異なるため、切断用工具の素材や硬度が異なります。
ビニール被覆と導線を切断するケーブルカッターの材料はS58Cに代表される炭素鋼が一般的であるのに対して、鋼線を切断するワイヤーカッターはクロムバナジウム鋼がポピュラーなバナジウム鋼が用いられる場合が多いようです。
どちらも工具の素材として使用される強度と耐摩耗性を備えていますが、それぞれに異なる特徴があります。
炭素鋼は硬度が高く刃物用途に適しており、製造コストも低く抑えられる利点がありますが、衝撃にはやや弱い面があります。これに対してバナジウム鋼は耐摩耗性と粘りが高く高負荷の作業に適している一方、炭素鋼を使用した製品より価格が上昇する側面があります。
このような特性違いにより、銅線用のケーブルカッターで鋼線を切断すると刃こぼれなどの不具合が生じる可能性があるので注意が必要です。逆にワイヤーカッターは、刃の強度的には銅線の切断に問題はありません。しかし円弧形状が家庭用電気配線の2芯、3芯線に対応していないため、決して使い勝手はよくありません。
構造や刃の形状は似ていますが、ワイヤーカッターとケーブルカッターは目的が異なるので正しく使い分けるようにしましょう。
結束バンドカッターは切断部分が尖らない薄刃が特徴
次に結束バンド切断用ニッパーです。配線作業ではケーブルを固定するためにナイロン製の結束バンドを多用します。通常のニッパーでも切断できますが、一般的なニッパーの刃は先に説明したとおりくさび状になっているため、切断面に鋭い突起が残ります。この突起は手や腕に触れるとケガをする原因になるのはもちろん、配線をまとめるビニールテープや絶縁用の熱収縮チューブの被覆を傷つける可能性もあります。こうした問題を防ぐために開発されたのが、結束バンド専用のニッパーです。
結束バンド切断用ニッパーの特徴は、刃先が山型ではなく片面がフラットになっていることで、バンドをロックするヘッド部分にフラットな面を当ててカットすることで、突起を残さず切断でき、安全性が大きく向上します。ただしヘッドから離れた位置で切断すれば、端部は突起となってケガの原因になるので、最大限の効果を期待するならカッターの刃面をバンドのヘッドに密着させて使用することが重要です。
一般的なニッパーに対する結束バンドカッターのもう一つの利点は、狭い場所での使い勝手の良さです。配線や樹脂、時には金属の切断にも対応するニッパーは、簡単に刃こぼれしないよう刃先の作りが強固で刃先に厚みを持たせてあります。
これに対して結束バンドは柔らかいナイロン素材でできているため、切断するカッターにはニッパーほどの強度は必要ないため刃先を薄くすることができます。刃の厚みが薄くスリムな結束バンドカッターは狭い場所でも使いやすく、突起を残さず切断ができます。その反面、ニッパーほどの強度はないため針金や金属の切断には使えません。
回収機構付き製品なら切断したバンドの飛散紛失も防止できる
また結束バンドカッターの中には、結束バンドの切断に特化したアイデアが備わっている製品もあります。ここで紹介しているフジ矢製キャッチニッパは、切断したバンドを落とすことなくキャッチできるよう、刃と同期して開閉するピンセットのような薄い金属部品が裏側に取り付けてあるのが大きな特徴です。
切断して飛び散ったバンドを回収できれば良いですが、どこかに落下して見失ったままスロットルに引っ掛かったりすると思わぬ事故につながる場合もあります。このキャッチニッパであれば、グリップを握っている間はバンドが離れないので落下や紛失の心配はありません。
このように、用途に合ったニッパーを使うことは単に作業を楽にするだけでなく、工具の寿命や作業効率にも影響します。硬いワイヤーを一般的なニッパーで切り続ければ刃が欠ける可能性がありますし、結束バンドを通常のニッパーで切ると危険な突起が残ることがあります。作業内容に応じて専用工具を選ぶことで、効率・安全性・仕上がりのすべてを向上させることができるのです。

結束バンドの緩み止めとなるヘッド部分に刃を当てて切断するとバンドの端部とヘッドがツライチになり、手や腕を擦っても引っ掛からず切り傷を作ることがなく、ニッパーで切るより安全性が格段にアップする。刃の裏のピンセットが切断したバンドを掴まえている様子もよく分かるだろう。
- ポイント1・ニッパーは最もポピュラーな切断用工具だが、対象物によってさらに適した専用工具も存在する
- ポイント2・細い鋼線をより合わせたワイヤーをニッパーで切断すると末端が潰れたりほつれることがあるが、ワイヤーカッターを使用することできれいに切断できる
- ポイント3・結束バンドの切断に特化したカッターは、突起が残らず作業者のケガのリスクを低減しながら切断後のバンドを回収して紛失も防止できる
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
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ニッパーとの違いは分かる? ワイヤーカッターや結束バンドカッターの利点とは【画像ギャラリー】
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