エンジントラブルによって入庫したビンテージオフロードモデル。オイルシール1個を探し出すのに苦労の日々が続いているが、バイクを押し歩きした時に、ステアリングの操作性が今ひとつなことにも気が付いた。この機会に、ステムベアリングのオーバーホールも実践 しよう。
マシンオーナーがメーカー純正新品部品を手持ちストックしていた

ステムベアリングの摺動は、スチールボール=鋼球が、通称コーンレースと呼ばれるリングレース上をスムーズに回転作動することで成立する。各バイクメーカーともに、似た年式でほぼ同じ車格のモデルなら、共通部品化されている例も多い。手元に新品部品があったので、早速、交換作業に取り掛かった。
ステムベアリングレースの打痕がステアリング操作感を悪化させる
大型万力があると部品交換作業性は圧倒的に良くなる

やや湾曲した平タガネの先端をロアレースの裏側に押し付けて、ハンマーでレースを叩き抜いた。タガネの刃でステムシャフトにキズを入れないように要注意。キズが付いた時には240番程度のサンドペーパーでバリ除去しよう。

ステムシャフトの三つ叉側から、スペーサーシート、ダストシールラバー、ロアレースの順で圧入されていた。オフロード走行が多かったので、砂利やドロでダストシールラバーの外径は摩耗小径化していて、ダストシールの役割を果たしていなかった。
油圧プレスを利用してステムシャフトレースを交換したが……

ステムシャフト径よりも内径が太い鉄パイプを用意して、油圧プレスの座に三つ叉、スペーサーシート、新品ダストシールラバー、新品ロアレースの順でセットして、ロアレースを鉄パイプで押し込んだ。ハンマーでパイプを叩いて挿入することもできる。

スペーサーシート、新品ダストシールラバー、新品ロアレースの順でセットして圧入するが、ダストシールラバー外周が摩耗していないため、この出っ張り部分がフレーム側のステアリングヘッドパイプ内面と接触してゴミの侵入を防ぐ。
グリスを塗布して新品ベアリングレースをスムーズに圧入しよう

ステアリングヘッドパイプの内側にグリスを塗布して、コーンレースがスムーズに圧入できるように潤滑段取りを行おう。乾燥した状態とグリス潤滑した状態では、コーンレースの圧入にも違いが出る。グリスの塗布は必要不可欠だ。
ベアリングレースにはグリスを塗布して、接着剤代わりに利用しよう

ステムベアリングレースに高性能グリスを塗布して、スチールボールを並べて組み込もう。グリスをやや多めに塗布することで、グリスが接着剤代わりに機能して、スチールボールがバラバラと落下しなくて作業性が良くなる。

ステムナットをセットして指先でクルクル回したら、フックレンチを利用して、ゆっくり締め付ける。締め付けたままではステアリングに重さを感じるので、幾分戻す。メーカーによっては締め付け後の戻し角度で管理調整するものもあるが、最終的には、すべての部品を復元後に、遊びを調整するのが良い。
あれば便利な各種工具と道具類。万力もあると便利だ

このような作業時にあると便利なのが平タガネや解体車両から部品取りしたアクスルシャフトなどだ。気楽に叩けて作業性が意外と良い。不要物=鉄ゴミが出た時には廃棄する前に、道具として利用できるか否かを確認しよう。

ベアリングドライバーの平面部分を利用してステムベアリングレースを圧入したのが今回の作業手順だ。慣れれば難しい作業ではないが、旧ベアリングレースを斜めに抜いてしまったことで、ヘッドパイプが変形することもあるので注意しよう。
- ポイント1・スチールボール仕様でもテーパーローラー仕様でも、ステムベアリングレースに打痕ができると、ステアリング操作性が低下する
- ポイント2・定期的な洗浄グリスアップと遊び調整の実施によって、打痕を可能な限り回避することもできる
- ポイント3・大型万力(口幅150ミリ仕様)があれば作業性は圧倒的に向上する。油圧プレスがあれば作業性はさらに良くなる
エンジンコンディションの不調で入庫した2ストオフロードバイクは、クランクシャフトシール(ミッションケース側のオイルシール)が吹き抜けていた。そのため、一次圧縮を保つことができず、本来のエンジンパワーを発揮できないどころか、ギヤオイルがクランク室へ吸い込まれてしまい、マフラーからは2ストエンジンオイルとは違った、異様に臭い白煙を吹き出すコンディションとなっていた。そんなエンジンの不調原因を探すために、バイクをメンテナンスリフターへ移動したり降ろしたり……。その際に、ステアリングの操作性がスムーズではないことに気が付いた。
前輪を持ち上げて、フロントフォークの左右ボトムケース下を両手で握って、ステアリング全体を揺すると、明らかにガタがあった 。オーナーさんもこの事象には気が付いていて、ステアリング周りの交換部品をすべて準備していた。早速、分解に取り掛かると、ステムナット下のアッパーベアリングは、完全なるグリス切れ……。まさかステムベアリングのグリスが完全乾燥状態で、コケむした状況には驚かされてしまった。しかもステムベアリングのスチールボール=鋼球の数も少なかった。これではガタが発生して、ステアリング操作性に違和感があっても、何ら不思議ではない。ノーメンテナンスで乗りっ放しにされていた個人所有車両に多い、あるあるコンディションだった。
交換部品が手元にあったので、早速、交換開始。ステムシャフトに圧入されていたボールレースの内径、ステアリングヘッドパイプ上下のベアリングレース外径に違いが無いことを確認できたので(取り外した旧部品と純正新品部品の寸法を比較)、早速、組み換えることにした。ステムベアリングのレース交換時には、フレーム側のヘッドパイプ上下にベアリングレースをしっかり圧入する。作業進行に当たっては、レースホルダーにしっかり圧入できているか、何度も確認することが極めて重要だ。圧入不足やレースが傾いた状態で復元してしまうと、走行振動やステアリング操作によって、レースの収まりに変化が生じ、ステアリングに再びガタが発生してしまう。特に、フレーム側ヘッドパイプの上下に収まる、ステアリングボールレースのセットに失敗する例は(特に下側)、少なくないようだ。確実に圧入し 、ベアリングドライバーでしっかり叩いて、収まり具合をステムシャフトの復元前にしっかり確認しよう。
コーンレースに打痕が入ったまま走り続けると、スチールボールも偏摩耗してしまう。部品の交換時は、スチールボールも含めた一式セット交換が基本だ。また、復元時には、スチールボールを落として紛失しないように、グリスを多めに塗布して接着剤代わりにするのも組み立てテクニック のひとつである。
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/maintenance/591451/
過走行車のステムベアリングはとにかく酷い!問答無用で要分解整備【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery3/591451/591455/












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