製品・活動
2022.7.15
なぜ従業員自らが過酷なレースに挑むのか
- 従業員チームがレースに参戦!
- 過酷なレースに挑む理由とは?
- 継承される想いとクルマづくり
従業員チームがレースに参戦!
国内外の自動車メーカーのさまざまな車種が出場。会場は、まさにお祭りムード
Hondaの最高峰スポーツカーに与えられる「TYPE R」の名を冠した「シビック」。現行型ではデフォルトの「スポーツ」に加え、「+R」と「コンフォート」の計3つのドライブモードを選べる。
現行型のシビック TYPE Rを改造したレーシングカー
メカニックとしてレースに参加するHonda R&D Challengeの若手部員たちが最終調整を施す
過酷なレースに挑む理由とは?
ドライバーの一人、柿沼秀樹
ドライバー交代の際に、メカニックたちが素早く給油やタイヤ交換を行う
レースでの経験が次の開発につながる
1990年発売。それまでHondaが得意としていたFFとは異なる、MR駆動方式が採用されたスポーツカー。
1992年発売。初代「NSX」をベースに、自宅からサーキットまで運転して向かい、サーキットを走行後、自宅まで運転して帰るという用途を想定して開発された。
レーシングスーツを着込むと、本職のレーサーのよう
ナイトセッションを走るシビック TYPE R
継承される想いとクルマづくり
当初はレース参加も業務の一環だった
※HRD Sakura…F1やSUPER GT など、Hondaの四輪モータースポーツ活動の開発拠点
それでどうなったんですか?
資料を作って報告しに行ったら、「分かった。来年の企画を作って持ってきて」と。で、企画書を持っていったら、GOサインが出ました。さらにいろいろなスポンサー様からのご厚意もあって、昨年は何とか6戦中4戦への出場でしたが、今年は初のフル参戦で臨むことがかないそうです。
運転を終え、疲れた様子で椅子に座り込む柿沼。休みながらも、他のドライバーたちとの情報共有は欠かせない
社長が救いの手を差し伸べてくれたんですか!
会社がそうやって我々をサポートしてくれるのは、人材育成のため。若い人たちに投資をしてくれているんです。若い部員には、「レースで結果を出すのはもちろん大きな目標だが、この活動を通して君たちがこの会社を引っ張っていく存在に成長していってくれることが、一番の目的なんだよ」とよく話しています。
指示を受ける若い部員たちは真剣な表情
レースの現場で先輩から教えを受けることで、Hondaのクルマづくりの“想い”は受け継がれていくのです。
Honda従業員によるレーシングチームは、Honda R&D Challengeだけではありません。1965年に設立され、60年近い歴史を誇る「TEAM YAMATO」もその一つです。
TEAM YAMATOは、「FIT」を改造したレーシングカーで参戦
TEAM YAMATOのメンバーは、Honda R&D Challengeよりも若手が多いのが特徴。そのうちの一人が、チームの部長も務める椋本 陵(むくもと りょう)です。
椋本は、2011年に22歳の若さで「S660」の開発責任者(LPL)に就任し、Honda史上、最も若いLPLとなりました。若手や中堅の従業員は、Hondaの魂やクルマづくりについてどのように感じているのでしょうか。
S660
2015年に発売された、軽自動車規格の2シーターオープンスポーツカー。開発コンセプトである「痛快ハンドリングマシーン」が示す通り、軽快なハンドリング性能が自慢。
現在はクルマのパッケージ領域のデザインを担当している椋本
レースに参加していて、感じることは?
社内コンペでS660の基となる企画が受かったとき、裏側でゴリゴリにバックアップしてくれた上司や先輩がいたんですよ。このレース活動も、やる気ある若手をゴリゴリにバックアップしてくれる人たちに支えられています。例えば3月の開幕戦、鈴鹿でクルマが全損するアクシデントがあり、車両の修復が難しく24時間耐久への参戦は絶望的になりました。
そんなことが……。
そのレースに、クラブ活動をサポートしてくれている会社の総務の人が視察に来られていて、代わりとなる中古車の購入をその場で決断してくれたおかげで何とか間に合いました。このように理解ある先輩方のバックアップがなければ、従業員チームによるレース活動もできませんし、S660も世に出ていなかったと本当に思っています。
若い世代がレースを通じて、得られることは何でしょうか?
人間力の向上。仕事では細分化されていることも多いし、自分が見る領域は狭かったりもします。でも、レースでは見る領域も広いし、任せられる領域も広い。責任感も強くなります。
夜通しでレースは続く
手が震えながら作業している若手のメカニックもいました。
レースは特殊ですが、24時間耐久はさらに特殊なフィールド。仕事だとそんな経験をすることってなかなかないのかもしれないですけど、ここだと自分が責任を負って行動しないといけない。そして自分の行動がレースの結果だけではなく、ドライバーの安全にも関わってきます。極限の状況で相当のプレッシャーがかかりますが、いい経験になります。本番で手が震えてしまわないようにするには、どういう準備をしておけばいいのか。そうしたことを考えることにつながる活動でもありますね。
「レースはHondaのDNA」。通常の業務に比べて、極端に短い時間の中でアウトプットを出さなければならない特殊な環境を経験することが、それぞれの成長につながっていきます。一番の目的はいいクルマづくりではあるものの、勝利にもこだわる。「走って良かったね」だけでは何も得られないからです。
そうしたHondaの哲学はレース活動を通じ、ベテランから中堅へ、そして中堅から若手へと着実に受け継がれています。
24時間を走り切ったHonda R&D Challenge
スピードを追求するレースにおいても地球環境への配慮が不可欠になった今、Hondaが目指すクルマづくりにも何か変化はあるのでしょうか。ピットに戻った柿沼に、改めて聞きました。
この先の社会、待ったなしでカーボンニュートラルを目指して一層加速していかねばなりません。会社もその方向にかじを切りました。ただ、カーボンニュートラルによって「TYPE R」がなくなるかといえば、それは全く違う。手段が変わっていくだけ。今、そこに必要な技術への投資が行われていて、その一つがEVというだけの話です。
柿沼さんが開発した現行型のシビック TYPE Rでは、街中でも穏やかに運転できる「コンフォートモード」が初めて取り入れられました。
昔の「TYPE R」だったら、コンフォートモードなんてありえない。ナンセンスですよ。もともとそういうものを捨ててまで速さとドライビングプレジャーを追い求めたのが「TYPE R」だった。それから20年以上がたち、これからの時代のスポーツカーの在り方を考え、技術の進化を駆使して、あえて「TYPE R」という乗り物に「コンフォートモード」という価値を創造したわけです。僕は「TYPE R」が生まれたときからずっと知っていますから、非常に勇気がいることでしたね。
レース開始前には柿沼と椋本がお互いエールを送る場面も
今後の「TYPE R」はどのように変わっていくのでしょうか?
「TYPE R」というバッジは、Hondaにとってなくてはならないもの。つくり続けていくためには、「TYPE R」を名乗れる性能とカーボンニュートラルを両立させなければならない。2017年に我々が開発した「TYPE R」は、速さと楽しさ、どこまでも走り続けていたいと思えるクルマとしての基本性能を一つにしました。スポーツカーとしての大きな転換点にできたと考えています。今後はカーボンニュートラルもそこに入れて、一つにしていかなければなりません。
果てしない道のりですね。
僕ももう53歳なんで、いつまでもやっていられるわけじゃありません。でも、Hondaというブランドを背負った責任は果たす。そういう“想い”を若手に見せて伝えて、彼ら自身のマインドにしてもらうことで、未来永劫つないでいってもらいたいんです。
ピットロードに戻ったクルマに、チームのメンバーが駆け寄る
時代と共にクルマに求められるものも移り変わっていきます。しかし、平日の業務後や休日のプライベートをつぶしてまでレースに挑み続ける開発者・従業員たちが、今も昔も変わらずにHondaにはいるのです。
レース活動は一銭のお金にもなりません。それどころか、業務の合間を縫って自分たちでスポンサー探しもしなければなりません。それでもレースに挑むのは、ただ良いクルマをつくりたいから。
これから環境適合性やカーボンニュートラルが避けられない時代を迎えても、クルマを操る楽しさとの両立を実現してくれるに違いありません。
今回の24時間耐久レースで作業に励んでいた若手のメカニックたち。彼らこそが、これからの時代のHondaの“FUN”を生み出していくのです。
今後投入予定の電動化に対応したスポーツモデル。どんなクルマなのか、待ち遠しい
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【記者発表】カーボンニュートラルを目指す、EVロードマップ
シビックの進化と変わらないDNA
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://www.honda.co.jp/stories/036/?from=mediawebsite
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