【新技術】軽量&冷却性能の高い斬新Fフォーク+キャリパーが2026年から実戦投入、いずれ市販化の可能性も!

【新技術】軽量&冷却性能の高い斬新Fフォーク+キャリパーが2026年から実戦投入、いずれ市販化の可能性も!

 2024年のEICMAに展示され、話題になったAstemoのFフォーク一体型(のように見える)ブレーキキャリパー。現在はテストが進み、2026年にはJSB参戦車両、2027年にはスーパーバイク世界選手権参戦車両に装着していく予定だ。いずれ市販車に採用される可能性もありそう! 合わせて、2025年5月のAstemo Tech Show 2025で披露された展示技術の数々を紹介したい。

文/沼尾宏明

 
 
 

ナニコレ!? サスとブレーキ部門の共同開発で実現

 コンセプトモデルかと思いきや、実車で検証が重ねられ、来年にはレーサーにも装着される! ――大手二輪&四輪部品メーカーのAstemoが、2024年のEICMA(ミラノショー)に展示したハーモナイズドファンクションデザイン(機能協調設計)のFフォーク+キャリパー。これは、Fフォークのアクスルホルダーとキャリパーと一体化したように見える、斬新な形状が大きな話題を呼んだ。



機能とデザインを両立した機能協調設計のFフォーク+キャリパー。一体型のように見えるが、アクスルホルダーにキャリパー側のフィンを被せることで一体感を出している。

 当時はコンセプトモデルとの触れ込みだったが、2025年5月に栃木県で行われたAstemo Tech Show 2025では実車に装着された状態で展示。テスト走行を重ねている現状や今後の登場予定に関して話を訊くことができた。

 Astemoは、サスのショーワ、ブレーキのニッシン、キャブレターやFIのケーヒン、日立製作所の自動車部品を手がけてきた日立オートモティブシステムズが統合し、2021年に生まれた大手サプライヤー。この機能協調設計のFフォーク+キャリパーは、元ショーワとニッシン、つまりサスとブレーキ部門の共同作業あってこそ実現できたパーツだ。

 
 
 

計250g削減、さらに約10℃キャリパーを冷却できる

 そのメリットは、優れたデザイン性に加え、軽さと放熱性にある。

 アクスルホルダーを片持ち構造とすることによって、締結部品が削減され、同社製品比較でバネ下重量を123g(8.5%)軽量化。システム重量は1449g→1326gとなり、左右合わせれば約250gも軽くできる。

 また、アクスルホルダーとキャリパーの接触面積が30%増加し、別体式のフィンを追加したことで、ブレーキの熱をFフォーク側へ効率的に放熱させることが可能。さらにFフォークアクスル前方に開口部を設け、ブレーキに導風することで冷却効果を高めている。これらにより10℃ほどキャリパーの温度を下げられ、安定したブレーキ性能が発揮可能だ。

 極限の性能を追求するレース用だけに、この軽量化と放熱性は大きな武器となる。

 一見「剛性は大丈夫なの?」と心配になるが、開発担当者によると、構造物の形状を最適化するトポロジー解析を活用することで形状を決定。また「基本的にブレーキ力はディスクの接線方向にかかる」とのことで、アクスルホルダーの上側にはほぼ力がかからないため、今回のような片持ち構造が可能になるという。



ボルト1本で締結され、クイックに着脱可能。現在はレース用として開発している。

 
 

2026年のJSB、2027年のSBK参戦を目指す。デザインにこだわる車両にも!?

 現在はST1000仕様のCBR1000RR-Rレーサーに装着し、Astemoの塩谷テストコースで実走検証中。開発担当者によると「色々な人に乗ってもらったんですけど、基本的にはあまり違和感なく乗れているとのことです」と話す。



ST1000仕様のCBR1000RR-Rレーサーに装着し、実走テストを重ねている。

 今後はテストなどで出てきた課題をクリアし、2025年11月のEICMAに改良版の第2弾を出品する予定。さらに2026シーズンの全日本JSB1000車装着、2027シーズンのスーパーバイク世界選手権車装着を目指して開発を進めていく。

 レース用として展開していくが、将来的には市販モデル搭載の可能性もありえる。担当者は「片持ち構造によって車体設計デザインの自由度が上がりますし、デザインにこだわる車両メーカーさんに、この製品はアピールポイントになると思います」と話す。

 レース用からの流れでスーパースポーツに採用されるのはもちろん、ルックスを重視するクルーザーなどにもこのFフォーク+キャリパーは確かにフィットしそうだ。

コンパクトな高性能スロボや軽量キャリパーも開発中

2025年5月に行われたAstemo Tech Show 2025で披露された新技術は既に2回に分けて解説しており、今回が3回目となる。

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 他にも、将来に向けた様々な技術が展示されていたので紹介しよう。ジャンルは小排気量の廉価版コミューター向けから、モトクロッサー向け、ミドルクラス~ビッグバイク向けと幅広い。

 FUN系のパーツとしては、横幅を維持したまま高性能化が可能な2モーター式スロットルボディを展示。一般的にスロットルバルブの開閉は1モーターで行うが、高性能スポーツでは2つのモーターを搭載し、2気筒ごとの独立制御を実現している。

 しかし従来品はモーターが左右に搭載され、横幅が増えるのがデメリット。そこでAstemoでは特許コネクターにより2つのモーターをスロボ中央に集約。自社の1モーター式が全幅352.9mmなのに対し、2モーター式でも全幅362.9mmとわずか10mm増に留めている。



モーターを対向配置し、コネクターを集約。スロボの横幅増を最小限に抑えている。スーパースポーツや、レース車両がターゲットだ。

 さらに次期モデル向けに開発されているオフロード競技車向けキャリパーは、ブリッジ中間部に肉抜き穴を設けて軽量化を促進。現行品から40g軽く、リブ形状の最適化で剛性もアップしている。

 また、中大型車向けに小型&軽量かつ高剛性なFSWモノブロックキャリパーを提案。FSWとはFriction Stir Welding (摩擦攪拌接合)というアルミと鉄の溶接技術で、高性能なモノブロックキャリパーを低コスト化できるほか、アルミピストンの採用で軽さを重視することも可能だ。



バネ下重量を削減し、剛性もアップした次期モトクロッサー向けのキャリパー。



左は現行品、右は開発中のモトクロッサー向けキャリパー。ブリッジ中間部を肉抜きして軽量化を実現した。さらに有機的なリブ形状で剛性もアップしている。



FSW技術を用い、小型&軽量かつ高剛性なモノブロックキャリパーを低コストで生産可能。2027年の市販モデル搭載を目指している。

小排気量やコミューター向けの高性能スロボや廉価仕様、環境製品もアリ

 コミューター向けの製品も数多く展示されていた。

 ガソリンエンジン車をEV化できる電動パワートレインのE-Axleは、小型サイズが魅力。小型のモーター&ギヤボックスとインバーターを一体化することで、エンジンから置き換え可能な大きさと軽さを実現している。現在は社内先行開発中で、2028年の投入を目指している。



エンジンと置き換え可能な電動パワートレインのE-Axle。最大出力は100~125cc相当の6.5kW。インドコミューター向けとのことだが、幅広く導入してほしい。

 110~200cc小排気量向けの高性能な単気筒用電子制御スロットルボディは、小型のモーター&センサーユニットの採用で世界最小サイズを実現。高回転型モーターによりスーパースポーツ用と同等のスロットル応答性も達成している。

 一方、コミューター向けにコストダウンしたスロットルボディも社内先行検討中。部品点数を削減して小型化しつつ、スペックは同等としている。年間1000万台規模に採用されるというスケール感のため、1円のコスト削減でも効果は大きい。



世界最小サイズながら応答性はスーパースポーツ並みという単気筒用の電制スロットルボディ。2027年の市販モデル搭載を予定している。



コストダウン仕様の小型スロボは2026~2027年に量産開発を進め、2028年頃に投入予定。

 機械式スロットルを電子制御化できる代替スロットルボディやECUも開発。欧州では2027年11月、日本では2029年7月から段階的に義務化されるサイバーセキュリティ規制に対応したECUやABSコントロールユニットも開発している。



電スロに対応し、ドライバビリティと燃費を両立するプロアクティブ制御を二輪車で初搭載したECU。サイバーセキュリティにも対応する。



既存ABSの基盤を変更するだけでサイバーセキュリティに対応でき、IMU(慣性センサー)の内蔵も可能なABSユニット。



ガソリンからバイオ燃料への置き換えを実現する燃料ポンプ。紙フィルターなどで省スペースとし、最小限の変更でバイオ燃料に対応できる。同様のバイオ燃料対応インジェクターも展示されていた。

 

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/parts-gears/475854/

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