【スマートTLRって何ぞ?】スズキ新型GSX-R1000/R 詳細解説〈車体&電子制御その他編〉

【スマートTLRって何ぞ?】スズキ新型GSX-R1000/R 詳細解説〈車体&電子制御その他編〉

鈴鹿8耐でスズキが発表した新型GSX-R1000/R。8年ぶりのモデルチェンジとなった2026モデルの概要はすでにレポート済みだが、ここでは会場で見聞きした情報なども含め、より細かく解説していきたい。今回は車体と電子制御システムについて。
(前編[外観&デザイン編]から続き)

 
文/松田 大樹
 

独自の「しなやかフレーム」を新型も継承

2026年モデルのGSX-R1000/Rは、アルミツインスパーフレームやアステモ(ショーワ)製の前後サスペンション、6本スポークの鋳造アルミホイールといった車体まわりは従来型を踏襲している。OEMタイヤもブリヂストンのRS11で、変更はアナウンスされていない。ただし、ABSユニットはアステモ製の最新型に換装されており、小型化と51gの軽量化を実現している。

エンジンまわりに比べれば車体面の変更は少ないものの、元々GSX-R1000/Rの細身なアルミフレームはしなやかさを併せ持ち、サーキットのみならず公道でも楽しめるワイドレンジさが特徴。メインスパー部にはしなり特性に優れたプレス材を併用するなど、ライダーの感性を重視した作り込みはGSX-Rの個性にもなっており、変更は不要との判断だろう。



2026・GSX-R1000Rのストリップ画像。フレームやサスペンションに関して、従来型との違いはアナウンスされていない。



シート下のABSユニットは小型軽量化。

また、上級グレードの1000Rが装備する前後サスペンションはアステモ自慢のバランスフリータイプ。ダンパー内部の圧力バランスの偏りを構造的に解消したもので、ツインチューブと呼ばれる二重管構造を採用し、高圧部から低圧部へオイルを循環させることでダンパーの動きすぎや、逆に動きにくいといった症状を解消したもの。近年ではアフターマーケットパーツでも人気となっている(※日本非発売のSTDグレード:GSX-R1000はアステモ製ビッグピストンフロントフォーク=BPFと、スタンダードなフルアジャスタブル式リヤショックを採用)。

ブレンボ製モノブロックキャリパーを核とするブレーキ回りも変更はアナウンスされておらず、「Tドライブ」と呼ばれる、ブレンボ独特のフローティング機構を持つブレーキディスクも継続採用。これはインナー/アウターディスクの接触面積を増やすことで、マウントの数を減らして軽量化が可能というものだが、その反面ガタガタという音が出やすいため、GSX-R用では従来のピン式マウントを併用して発生を抑えている。



アステモ製BFF(バランスフリーフロントフォーク)、ブレンボ製モノブロックキャリパー&320mm径ディスクは継続採用する。



ダンパー内で生じる圧力差(ダンパーの作動性を阻害する)を機構的に解消したのがアステモのバランスフリー機構。GSX-R1000RではFフォークだけでなく、同じくアステモ製のリヤショック(BFRC-Lite)にも用いられる



差し込み式のTドライブと、従来のピン留めを併用するGSX-R1000のブレンボ製ディスク(写真は2017年型)。

 
 
 

磨き抜いた電子制御が走りを変える

車体ではむしろ、電子制御システムの熟成が特筆点だろう。従来型はIMU(慣性計測ユニット)を備えたトラクションコントロールに「モーショントラックTCS」という名称を与えていたが、新型ではこれを「スズキトラクションコントロールシステム(STCS)」と改名。これにリフトリミッター(=ウィリー制御)、ロールトルクコントロール(=バンク角や速度に応じてエンジン出力を制御)を加えた3つの駆動力制御システムを「スマートTLRコントロール」という新名称で括って統合制御す

。IMUを利用する駆動力制御ロジックをひとつにまとめた…と考えてよさそうだ。



GSX-R1000/Rの新たな駆動力制御ロジック「スマートTLRコントロール」の概念図。TC(トラクションコントロール)、RT(ロールトルクコントロール)、LIFT(リフトリミッター)の3つを統合して制御するシステムだ。



「ロールトルクコントロール」の概念図。スロットル開度や前後輪の速度、ギヤ段数などの車体情報と、IMUからセンシングした姿勢情報を元に、電子制御スロットルをコントロールして駆動力を制御する。



SSでは標準的な装備となった6軸IMU(右上)。姿勢制御に必要となる、車体の6方向の動きを検知するセンサーだ。

後輪の浮き上がり防止やバンク時の制動力を最適化するブレーキ制御は「モーショントラックブレーキシステム」の名称をそのまま継続採用しており、エンジン出力/特性を3段階に切り替えるS-DMSも引き続き装備。電制面ではクイックシフトや電子制御ステアリングダンパー、ローンチコントロールなども従来型から継続するが、新機能としては勾配に応じたブレーキ制御を行う「スロープディペンデントコントロールシステム」が採用されている。

これはスズキ車でもっとも先進的な電制システムを持つGSX-S1000GXから投入された機能。つまり、新型GSX-R1000/Rの電制システムはスズキの最新版にアップデートされているというわけ。全ての電子制御システムを「スズキインテリジェントライドシステム(SIRS)」として総称することになったのもGX同様。メーターがモノクロ液晶のままで、GXと同じカラー液晶にならなかったのは残念だが…。



スズキ一のハイテク機・GSX-S1000GX。電子制御サスも含めた全電制メカを「SIRS」の名の下で統合制御する。新型GSX-R1000/Rにもそのロジックが投入されている。



メーターは従来型と同じ、モノクロ表示(反転表示も可能)のLCD液晶。カラー液晶化は…次のモデルチェンジに期待!

 
 

203kgの車重は堅持。価格はどうなる?

装備面ではエリーパワー製リチウムイオンバッテリーの採用もポイント。新型GSX-Rは規制対応の変更を加えながら車重は従来型と同じ203kg(1000R)を維持しており、軽量バッテリーの貢献度は高いはず。

このバッテリーは少し前に登場したGSX-8T/TTにも採用されているが、コストは依然としてかなり高いらしい。そんな事情もあって、GSX-Rも車両価格の上昇は避けがたい雰囲気。リッターSSの中では手頃な価格も魅力だったGSX-Rだが、ご時世的に仕方のないところかもしれない。

とはいえプレス資料の冒頭には「公道とサーキットの両方で」という言葉が踊るなど、一般的なライダーでも楽しめるスーパースポーツという独自の魅力は維持されるだろう。サーキット特化型のSSが増える中、フレンドリーさを併せ持つ希少な1台として、GSX-R1000/Rの存在感は失われないはずだ。



バッテリーはエリーパワー製のリチウムイオンを採用して軽量化。タンク上にはそれを示すステッカーも貼られる。



キーは40周年記念のロゴ入り。来年はスタンダードなデザインに戻ってしまうハズ。入手するなら今!







 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/482299/

【スマートTLRって何ぞ?】スズキ新型GSX-R1000/R 詳細解説〈車体&電子制御その他編〉【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery3/482299/482349/

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