今年8月下旬に発売されたBMWの最新フラッグシップツアラー「R 1300 RT」。先日メディア向けとして国内初の試乗会が行われたが、実際に乗ることができたのでその感想をお伝えしていきたい。
ツーリングにおいて便利な機能を網羅する“旅のためのマシン”
新型「R 1300 RT」は、前モデルである「R 1250 RT」の後継機。旅のためのマシン「Reise Tourer(ライゼ・ツアラー)」の頭文字をとっている通り、1300もその特性を色濃く受け継いでいる。しかし車体デザインが変更されたことでイメージも刷新、機能自体も大幅にアップデートを果たした。
エンジンは「R 1300 GS」譲りの水冷ボクサーツインを搭載。排気量は50ccほど拡大し、最高出力145ps/7750rpm、最大トルク149Nm/6500rpmとスペック的に向上している。フレームは完全新設計のスチールとアルミを複合させたタイプを採用し、フロントサスペンションはBMW独自の「EVOテレレバー」、リアには「EVOパラレバー」を装備。これによりBMWらしいシルキーな乗り味を実現する。
特筆すべきは前モデル以上に様々な電子制御デバイスを備えたこと。まず新機構である「ダイナミック・シャシー・アダプテーション(DCA)」は、走行モードに応じる形で車高や減衰特性、スプリングの固さを電子的に自動調整する機構だ。路面に応じて最適な性能を発揮するため、よりライダーは快適にツーリングを楽しむことができるというわけ。
さらに車両のフロントとリアにはレーダーセンサーが搭載され、「アクティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」の使用が可能に。そのほか前後衝突警告や車線変更警告など安全機能にも一切の抜かりはない。「ABS プロ」や「ダイナミックブレーキコントロール」「DTC(ダイナミックトラクションコントロール)」といった走りに役立つ機能はもちろんのこと、ノーマル状態で電動スクリーンやグリップ&シートヒーター、さらにこれはオプションだが、パニアケースの容量を27Lから33Lに変更できる「可変ラゲッジシステム」も装備できる。
今回の「R 1300 RT」では標準タイプと「オートメイテッド・シフト・アシスタント(ASA)」搭載バージョンから選択でき、ASA搭載モデルはクラッチ操作が不要に。クラッチレバーを廃し、フルオートマモードとマニュアルモードの切り替えが可能となっている。

「オートメイテッド・シフト・アシスタント(ASA)」搭載バージョンではクラッチレバーが付いていない。左側ハンドルスイッチの操作だけでマニュアルに切り替えることも可能で、BMW独自のマルチコントローラーが採用されている
TFTディスプレイは10.25インチ横長の大型を採用、オプションとしてメーター周辺に高機能スピーカーの装着が可能となるなど、まさに至れり尽くせりの仕様となった。そんな「R 1300 RT」の乗り味を体感してきたので、感想をお伝えしていこう。
もはや高級自動車のような乗り心地! どこまでも走れてしまいそうな快適性に笑みがこぼれる
「R 1300 RT」の車格だが、車両重量281kg、シート高820mmと人によっては手ごわく感じるレベル。実際に目の前にすると迫力があり、フロントマスクの落ち着いた印象のデザインから“静かなる巨人”というワードが頭に浮かぶ。
そのイメージは実際に跨っても変わることはなく、ずっしりとした重量感と優しくない足つき性に少々緊張を覚えたほど。ところが実際に走り始めると“怖い”といった印象とは全くの無縁だった。まずエンジンをかけるとボクサーツイン特有の左右に揺られる感覚が一瞬あり、その後は大きな振動を感じない。エンジン自体も非常に静かで、想像以上に落ち着いている。
しかしそうはいっても流石は新型の大型ボクサー、極太なトルクで巨大な車体がしっかりと前に押し出されるのだ。それもそのはず、0から100km/hへの加速が約3.7秒で叶ってしまうのだとか。
そんな強大なトルクで走る「R 1300 RT」だが、荒々しさとは全くの無縁で、むしろひたすらにシルキーな乗り味。281kgもの車重を一切感じさせないほどのスムーズな走りを実現し、気が付けば体感以上に実速度が出ているのである。
コーナーが多い峠でも自然と操れる素直さがあり、ライダーが想定する通りのラインを車体が走ってくれるイメージだ。取り回しの際の重さが嘘だったのかと思えるほどハンドルは軽く、どこを走ってもストレスを一切感じない。
試しに電動のスクリーンを最大まで伸ばし、初搭載の「可変式スリップストリームディフレクター」を使ってみる。すると嘘かと思うかもしれないが、走行風がほとんど感じられないほどの防風効果を発揮してくれた。試乗したのは9月頭のまだまだ残暑が厳しい日だったので、なんなら走行風が無さ過ぎて暑かったくらいである。
振動の少なさや優れた防風効果のおかげで、そこそこのスピードが出ていても恐怖心は一切感じない。ある意味感覚が狂ってしまうというべきか、もはやバイクの概念を変えてしまうかのような圧倒的な快適性だ。
今回試乗したモデルはASA搭載モデルだったのでこちらも使用。クラッチレバーが付いていないので最初は少し戸惑ったが、マニュアルモードではシフトペダルを操作するだけで済むのは非常に楽である。しかも1速にしてもエンストせずにエンジンが回り続ける感覚が新鮮だった。オートマモードではそのシフトペダルすら操作の必要がなく、本当にスロットルだけ操作していれば自動でシフトをチェンジしてくれる。
この状態で「アクティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」を使用。左側ハンドルスイッチの操作のみで簡単に作動し、設定した速度で自動走行を始める。そして前に車が現れると速度を落とすなど自動で調整してくれることに加え、シフトチェンジまで勝手に行ってくれるのだ。もはや「自分は何に乗っているのだろう・・・」という気持ちすら湧いてきたが、ここまでライダーに“楽をさせてくれる”バイクが存在するのかと、BMWの持つ技術力の高さと妥協の無さに感動を覚えた。快適すぎて思わず笑みがこぼれてしまう、そんな感覚である。
「R 1300 RT」を勧めるとしたらどんな人?
「R 1300 RT」のあまりに快適な乗り味に、このままずっと乗っていたくなってしまった筆者。短い距離しか走れなかったことが非常に惜しく感じ、このままロングツーリングに出かけたいという衝動を覚えてしまった。(試乗車なのに・・・)それほどまでに新型「RT」の快適性が高く、何よりも“疲れない”という点が“乗り続けたい”と思わせる要因なのだろうとも思う。
「R 1300 RT」を勧めるとすれば、「ロングツーリングでも絶対に疲れたくないライダー」ということになるだろう。そもそもそこまで疲れたくないというのであれば四輪でいいのでは? という意見は野暮というもの。プレミアムな乗り心地の二輪で長距離を走るという体験自体が非常に贅沢なことで、その満足感を確実に与えてくれるのが新型「R 1300 RT」の魅力なのだ。
正直「R 1300 RT」に乗ったことで、自分の中でもツーリングの概念が、さらに言うと“オートバイそのもの”の概念すら変わってしまったほど。それほどの感動を提供してくれた「R 1300 RT」を是非体感していただきたい。
R 1300 RT 主要諸元(2025)
・全長×全幅:2229×971mm
・シート高:780/860mm
・車両重量:281kg
・エンジン:空水冷4ストロークDOHC4バルブ水平対向2気筒1300cc
・最高出力:107kW (145PS)/7750rpm
・最大トルク:149N・m(15.19kgm)/6500rpm
・変速機:6段リターン
・燃料タンク容量:24L
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク
・タイヤ:F=120/70-17、R=190/55-17
R 1300 RT カラー&仕様
・価格:¥3,661,000(税込)~¥4,043,000(税込)
・R 1300 RT(ASA):アルピン・ホワイト 3(N4A)/レーシング・ブルー・メタリック(N2L)/ブラック・ストーム・メタリック(ND2)/ブルー・リッジ・マウンテン・メタリック(H0P)
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/486235/




















コメント
コメントの使い方