【ニューモデル詳報】フレームが…ない?! ホンダ初の電動スポーツ「WN7」は車体構造がなんだかスゲエ!

【ニューモデル詳報】フレームが…ない?! ホンダ初の電動スポーツ「WN7」は車体構造がなんだかスゲエ!

 先日国内向けにも発表されたホンダ初の電動モーターサイクル「Honda WN7(ホンダ ダブリュー・エヌ・セブン)」が、EICMA 2025にも出品されている。ここでは、その車体構造や投入された技術について触れてみたい。

 
文/後藤秀之
 

メインフレームのない前後分割骨格



Honda WN7

 ホンダWN7は欧州の都市部での使用を前提に、渋滞路でも安心してコントロールできる軽快なハンドリングを実現するために、完成車質量は217kgとし、足つき性を確保するためにシート高は800mmに設定、シートからピボットブラケットはスリムに設計された。また、扱いやすさを考えてホイールベースは1480mmに、ハンドル切れ角は35度に設定された。このように軽快性と扱いやすさを実現するための諸元を最初に定め、その諸元を実現するコンポーネントの配置や骨格を検討し、その結果メインフレームのない前後分割形態にたどり着いたという。

 電動モーターサイクルのコンポーネントの中で最もスペースを取り、質量のあるバッテリーパックを車体の中央部分に配置し、フロント側にヘッドパイプホルダー、リアにピボットブラケットを締結するという骨格構造を採用。この構造はエンジン車で言えばエンジンをフレームの一部とするモノコック構造に近いものであり、スリムなパッケージングと軽快なハンドリングを実現するための完成車質量の目標達成に貢献している。








 この、ヘッドパイプホルダー〜バッテリーパック〜ピボットブラケットの前後分割形態を採用した場合の課題は、狙いとする操縦性の実現と、寸法バラつきをいかに抑えるかということだったという。一般的なフレーム構造の場合は、長い寸法を生かしてたわませることで乗り味を作り込むことができるが、前後分割形態の場合はほぼ剛体のバッテリーパックを挟み、短いヘッドパイプホルダーとピボットブラケットで乗り味を作り込まなければならなくなる。

 上面から見た際に逆Y字となるアルミ合金製ヘッドパイプホルダーのロア側は、左右のアームを長くし、しなやかにたわむよう形状を設定。これは、直線的な形状にするとしなりにくく、突っ張ったフィーリングが出やすいので、あえて力を迂回させるイメージだという。一方、アッパー側のアームには高張力鋼板を採用。あえてカーブさせた形状としてバッテリーパックを挟むことで荷重伝達ロスを意図的に設け、たわみやしなりによる乗り味を作り込んだという。








 ピボットブラケットはアルミ合金製とし、締結スパンをライディングポジションや足つき性と両立が図れる限り広くとっている。これによって、剛性を効率良く確保しながら、良好なしなりを得られる形状となっている。側面から見た際にL字型となるピボットブラケットをバッテリーパックと締結すると、逆L字のバッテリーパックとの間に空間ができ、そこにモーターとギアケースというアルミ合金でできた剛体が収まる。このモーター&ギアケースをピボットブラケットと締結し一体とすることで、エンジン車のピボット・アッパー/ロアクロスと同様の効果を狙っている。

 前後分割形態を設計するにあたっては、ホンダが長年のエンジン車の開発で培ってきた、骨格をどう動かしたいのか、動かすためにはどうすればいいのかといったノウハウや技術をベースに、更に思想を進化させることで不利な条件を跳ね返し、狙いとする操縦性を実現している。



 
 
 

高い静粛性を実現するための技術

 WN7は静粛性に優れたベルトドライブシステムを採用しており、これは「風になり、自然の音を聴き、地球を感じよう。」というグランドコンセプトを支える技術のひとつとなっている。





 ベルトドライブシステムはメンテナンス性の面でも電動モーターサイクルに適していると考えられ、カーボンの芯線を中心にゴムの歯形を一体成型したベルトは基本的には伸びが生じないため、チェーンのような定期的な調整は不要となる。また、潤滑のためのチェーンオイルの塗布も必要ないため、オイルの飛び散りもなく車体をクリーンに保ち、軽量化にも寄与する。

 また、静粛性の向上はベルト以外の部分も寄与しており、エンジン車の動力伝達機構にはスパーギア(平歯車)を使う例が多いが、伝達効率に優れる半面、噛み合い時のノイズが大きいため、WN7では静粛性を重視しヘリカルギア(はすば歯車)を採用。このように、WN7はドライブシステム全体で静粛性を向上させている。



 
 

快適な走行をサポートする機能を装備

減速度セレクター

 メインフレームのない前後分割形態とドライブベルトシステムに並ぶWN7の特徴は、「減速度セレクター」だ。これはエンジン車で言えばエンジンブレーキの強度を変えることができるというイメージで、モーターが本来持つ回生量を自由に制御できる特性を生かし、エンジン車でニュートラル相当のレベル0から強回生のレベル3まで4段階の回生レベルを設定している。





 この回生レベルは「ECON」のデフォルトはレベル3、「RAIN」のデフォルトはレベル1、「STANDARD」と「SPORT」ではレベル2といった具合に、ライディングモードごとにデフォルトのレベルを設定している。ワインディングロードでは回生レベルを上げることにより、スロットルの開け閉めのみによる加速・減速のコントロールが容易になり、より没入感の高い体験が得られるようになるという。また、高速道路のクルージングでは、回生レベルを下げることでスロットル調整の頻度が減り、疲労軽減に寄与。このように、シチュエーションや好みに応じた使い方が可能となる。

 「減速度セレクター」の操作はシンプルに、左側ハンドルのスイッチボックスに設置された+と−のスイッチを走行中に押すだけだ。+側のスイッチを操作すると減速度が低くなり、−側を操作すると減速度が高くなる。このレベルはメーターに表示される矢印の数で確認することができる。



ウォーキングスピードモード

 狭い場所での移動をサポートする「ウォーキングスピードモード」を備えている。停車中にプラススイッチを長押しすると微速前進モード、マイナススイッチを長押しすると微速後退モードになり、駐車や出庫する際に、車両から下りることなくまたがったまま操作することが可能。スロットル開度で最速5km/hまでの速度調整ができるため、微調整がしやすいのが特徴となっている。



セレクタブルスピードリミットアシスト

 「セレクタブルスピードリミットアシスト」は任意の車速にリミッターを設定できる機能だ。リミッターは20km/h以上1km/h刻みで3つまで設定が可能となる。欧州では街に入った途端30km/h制限になり、街を抜けると80km/h制限になるような状況が多々あるためこの機能は極めて有効と言える。

 30km/hゾーンに入るタイミングでセレクタブルスピードリミットアシストを作動させると、すみやかに30km/hまで減速。ゾーンを抜けたところでスイッチ操作し、高い車速設定を選択すると設定した車速に復帰する。この「セレクタブルスピードリミットアシスト」を利用することで、速度制限を気にせず快適に走ることができる。また、追い越ししたいシーンなどでスピードリミットスイッチを長押しすると、設定した車速を超えて走ることが可能となる。





 この革新的な構造やシステムを満載し、モーターサイクルの未来形とも言えるホンダWN7は日本への導入も決定している。その乗り味や実用性、そしてスポーツ性に期待したい。




 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/499029/

【ニューモデル詳報】フレームが…ない?! ホンダ初の電動スポーツ「WN7」は車体構造がなんだかスゲエ!【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery3/499029/499127/

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