RZ250Rのエンジンを降ろしたついでに「シリンダー×ピストン」を点検

RZ250Rのエンジンを降ろしたついでに「シリンダー×ピストン」を点検

車体のレストアで降ろしたエンジンは、特に、不具合が無くファインコンディションと言えるRZ250R。せっかくエンジンを降ろしたので、エンジン腰上を分解点検して、必要に応じて、部品交換しておきたいと思う。 2ストエンジン腰上の、確認点検項目とその作業方法とは……?

文/たぐちかつみ

ヤマハRZシリーズ2代目の水冷RZ-Rエンジンの腰上点検  



初代RZ250/350シリーズとは異なり、排気デバイス=YPVS機能を搭載し、飛躍的なパワーアップに成功しているのがRZ250R/350Rシリーズだ。250シリーズのモデル型式が29Lだったことから、ファンの間では「29L」の呼び名で親しまれている。



シリンダーヘッドを取り外し、シリンダーを抜き取ることでピストンが露出する。片側のピストンピンクリップを取り外しピストンピンを押し出すことでピストンは単品になる。シックネスゲージを持っていることで、様々な点検を行うことができる。

ピストンは取り外してからスカートコンディションを確認 



取り外したピストンのスカート部分を凝視してみよう。細かく擦れた痕は当然と考え、引きカジったようなキズやバリが無いか確認してみよう。また、ピストンスカートの掃気孔にバリが無いか確認しよう。バリがある時にはスクレパーで除去しよう。



排気側スカートにも目立った引っ掻きキズは無かったので良かったが、ピストンリングを跨ぐような引っ掻きキズがピスト上方の排気側にのみ残っていた。排気ポートとの摺動によって出来た引っ掻きキズだと思われる。こんなキズは擦り合わせよう。



爪先を使ってピストンリングを折らないように取り外したら、600番の耐水ペーパーを準備して、強く擦り付けるのではなく「滑らせ撫でる」かのように2つ折りにした耐水ペーパーでピストンをクロス状に擦る。防錆浸透スプレーを併用するのが良い。



すべてのキズを擦って消すのではなく、引っかき傷のエッジにあるバリを落とす程度の擦り合わせで良い。クロス状に優しく当たり取りするだけで、シリンダーとピストンのケアになるのだ。想像以上に繊細なので、意味なく強く擦るのはもっての外だ。

シリンダーとピストンリングは組み合わせてコンディション確認 



シリンダー内壁は洗浄せず、取り外した状況のまま各ポート孔のエッジを確認しよう。ポートエッジに金属粉の堆積が無ければ良いが、僅かでも堆積痕があるのなら、組みヤスリや精密リューターの刃で堆積物とシリンダーのバリを除去しよう。



ピストンリングの組み込み向きを考慮して、シリンダー内にピストンリングを水平に収める。リングの合口隙間をシックネスゲージで確認してみよう。トップ、セカンドとも0.30~0.45ミリが新品部品の標準値で、0.70ミリに達すれば使用限度超えだ。

ピストンクリアランスもシックネスゲージで仮確認が可能 



洗浄済シリンダーに単品ピストンを挿入して状況確認。排気デバイスを取り外して洗浄する際には、キャブクリーナーなどのケミカルを利用して汚れを落とし、付着したカーボン汚れは耐水ペーパーなどで落とさない!



シリンダーにピストンを挿入したら(向きは必ず合わせる)、前後のスカート中央部にシックネスゲージを差し入れることでピストンクリアランスを仮確認できる。RZ250Rエンジンの場合は0.060ミリ前後だ。ピン側のクリアランスはスカート側に対して広い。

カーボンの堆積汚れは「ケミカル利用で溶かして」から拭き取り除去 



カーボン汚れが堆積しているが、灯油や洗い油に浸してからサンドペーパーで擦ったり磨いたりするのではなく、スプレー式のカーボンクリーナーを吹き付けてからしばらく待ち、堆積カーボンが柔らかく緩み除去しやすくなるのを待とう。



カーボンクリーナーや液体のキャブレタークリーナーにしばらく浸してカーボンを溶かしてから除去するのが良いが、時間的に余裕がない時には、やわらかい真鍮ブラシを併用して、堆積カーボンを削り落としても良い。ピストンにキズを付けないこと。



堆積カーボンを除去し洗浄を終えたピストンと、分解したままの状態のピストン。無理して汚れを落とし、ピストンスカートのキズをなだらかにしようなどと考えると、ピストンクリアランスが大きくなり、メカノイズの原因になってしまう。

POINT
  • ポイント1・コンディション良く回っていたエンジンの分解清掃時は、カーボン洗浄に徹して、ピストンやシリンダーを磨かないように要注意 
  • ポイント2・堆積しているカーボン汚れを除去する際には、擦ったり磨いてカーボン除去するのではなく、高性能ケミカルを必ず利用しよう。 

 

 2ストエンジンの腰上は、シンプルな構造だけに分解組み立てが比較的容易である。過去には、興味本位の分解メンテナンス経験があるユーザーもいるはずだ。80年代後半以前は、2ストロークエンジンが当たり前の時代で、各メーカーともにスーパースポーツモデルや小排気量モデル、原付スクーターなどでは、2ストエンジンが当たり前だった。走ってばかりいてエンジンオイルを入れ忘れて焼き付かせてしまったり、低速走行中だったのでダキツキ程度で助かったなどなど、そんな経験を持つライダーも数多くいるはずだ。特に、50歳代以上のベテランライダーには、そんなエピソードを持つ方が多いと思う。それでも昨今の旧車ブームの影響で、若手ライダーの中にも、2ストエンジンモデル好きが増えている。いずれにしても、2ストロークエンジンとはいえ、精密機械に変わりないので、分解メンテナンス際には、様々な配慮やノウハウが必要不可欠である。

 焼き付きエンジンの分解修理が前提なら、ある程度の荒療治が必要になることもあるが、ここにリポートするヤマハRZ250Rのように、コンディション良く走っていたエンジンなら、必要に迫られるまで、そのまま走らせていた方が良いとの声も多いはずだ。どうしても分解清掃するのなら、ピストントップや燃焼室内、排気デバイスバルブ付きエンジンなら、それら要所に堆積したカーボン汚れの除去や、燃え残りエンジンオイルの除去だけを、行うように心掛けよう。

 そんな汚れ部品を洗浄する際には、カーボンクリーナーと呼ばれるケミカル洗浄液やキャブクリーナーケミカルを利用しよう。汚れは「擦って除去するのではなく」、溶かして分解して「洗い流す」ように作業進行することを肝に銘じよう。

 ここでは経験談をお話しさせて頂こう。空冷2ストエンジンのシリンダーを分解すると、ピストントップにはカーボンが堆積して真っ黒く汚れ、ピストンスカートにも数多くの引っかき傷があった。そこで、ピストンを洗い油に浸しながら、カーボンの堆積はワイヤーブラシで大雑把に除去し、その後、240~320番の耐水ペーパーでピストントップを磨き込み、カーボンは除去することができた。その勢いでピストンスカートまで一生懸命磨いたことで、引っかき傷も目立たなくなり、ピストンはカーボン汚れからアルミ地肌を取り戻すことができた。そんな磨き仕上げのピストンにピストンリングを組み付け、エンジン腰上を組み立て復元した。そして、エンジン始動すると、分解前と比べて、明らかにエンジンノイズ(ピストンのスラップ音)が大きくなってしまう結果となった。

 カーボン汚れの堆積除去とピストンスカートの引っかき傷消しを行ったことで、ピストンクリアランスがスカスカに大きくなってしまったのだ。2ストエンジンは、そんな状況でも走ることができるが、メカノイズが異様に大きいのは大問題である。そんな経験によって、カーボン汚れをサンドペーパーで擦って落とすと、また違った悩みが増えてしまうことに気が付かされた。

 このRZ250Rのように、コンディション良く走っていたエンジンを分解清掃するような際には、特に、注意深く汚れ落とし作業を行うように心掛けよう。

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/maintenance/500579/

RZ250Rのエンジンを降ろしたついでに「シリンダー×ピストン」を点検【画像ギャラリー】
https://news.webike.net/gallery3/500579/500583/

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