【詳報】新原付は意外にも運転しやすい、ただし課題も!原付免許で出力制限125ccバイクが運転可能の方針

【詳報】新原付は意外にも運転しやすい、ただし課題も!原付免許で出力制限125ccバイクが運転可能の方針

※写真はホンダHPより

 注目を集めていた原付(50cc)車両区分の見直しが大きく前進。安全性が検証され、原付免許で125ccクラスの出力を抑えた「新基準原付」に乗れるよう法改正に向けて動き出す。ただし、警察庁が実施した新原付の走行評価や試乗会では課題も浮き彫りに。その詳細をお伝えしよう。

文/沼尾宏明 Webikeプラス
 
 

最高出力で枠組みを決める「新原付」を警察庁が容認へ

 以前から既報のとおり、50cc以下の原付一種は2025年10月末日に排ガス規制強化を控えているが、技術的にもコスト的にも対応が難しい。

 そこで125ccクラスの出力を50cc並みの4kW(5.4ps)以下に抑え、従来の「排気量」ではなく「最高出力」で原付一種の枠組みを再定義する案が検討されていた。この新区分は現在「新基準原付」と呼ばれている。

警察庁では9月から有識者会議を設置して検討を重ね、12月4日に第三回会議を実施。12月21日に報告書が公表された(https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/council/index.html )。これによると、原付と新原付の試作車を比較試乗し、安全性を検証。その結果、出力制限した125cc以下のモデルを原付免許で乗れるようにすることが適当と結論づけた。

 今後は法改正に向けてパブリックコメントを募集。順当に進めば次期排ガス規制が原付に適用される2025年11月までに法改正と、メーカーによる製品開発が並行して進められ、「新原付」が原付免許で乗車可能になるだろう。

 

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50ccは次期排ガス規制への対応が困難。排ガスを浄化する触媒は、300度超で浄化が始まるが、50ccは温度上昇に約240秒かかり、炭化水素(HC)規制値の100mgをクリアできない。こうした事情が新原付の検討開始の背景にある。 ※写真はアウテックスHPより

 

 
 
 

経験を問わず、新原付は原付と同等かそれ以上に運転しやすいと判明

 さらに細かく報告書を見ていこう。

 原付と新原付、110~125ccの原付二種の比較試乗は、9月に運転免許試験場の技能コースで実施。免許の実技試験(いわゆる一発試験)を担当する技能試験官12名が参加した。さらに原付免許を保有する一般ライダーの試乗会も10月に行い、運転特性をチェックした。

 「新原付」の試作車として用意されたのは、PCX、CB125R、スーパーカブ110、リード125、ビジョン110(国内版ディオ110)の5車種(いずれもメーカーはホンダ)。

 

 

各車のスペック。唯一50cc版が存在する新原付スーパーカブ110は、50より5kg重いが、トルクが0.32kg-mアップしている。

 

 発進時、停車時、交差点、坂道、踏切通過時、スラローム、引き起こし、押し歩きなどの運転特性を原付らと比べて評価。「1易しい、2やや易しい、3同程度、4やや難しい、5難しい」の5段階で判断した。

 新原付のPCXは、現行PCX(125cc)やベンリィ(50cc)と比較。同じく新原付リード125は現行モデルとギア(50cc)、新原付ビジョン110はタクト(50cc)、新原付スーパーカブ110は同50と現行110、新原付CB125Rは現行モデルおよびベンリィと比較した。

 ベテランの技能試験官、一般ライダーとも、現行50ccと比べて新原付を「同等~やや易しい」と評価。運転特性は、現行の原付とほぼ同じと考えられるようだ。

 

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技能試験官による評価はこのとおり。最も運転が「易しい」と評価された新原付はPCXとスーパーカブ110。次点がリード125、同率でビジョン110、CB125Rが並んだ。いずれも運転のしやすさは現行原付と「同程度」かそれ以下だった。

 

 一般ライダーは21人が参加。内訳は原付への乗車経験がある人が5名、ほかは乗車経験が全くない人で、年齢は20~70代だった。試乗車両はCB125Rを除く上記4モデルだ。その結果は下記のとおり、平均すると2.1点で原付と比較して新原付は「少し容易」から「同等」の評価だった。

 

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評価数503のうち、新原付と原付は「変わらない」が最多の36%。「少し容易」32%、「容易」29%の順で多く、原付より運転しやすいと感じた人が60%を超えた。

 

急傾斜での坂道発進ではパワー不足か

 各運転項目で、わずかに「やや難しい」と評価されたのは、主に「坂道」「引き起こし」「加速力」の3項目だ。

 特に急坂での発進はやや難しい模様。新原付のPCXはアクセル全開で発進する必要があり、平均値では3.3と「同等」より少しだけ難しい寄り。ほかに力不足を感じた人が多かったの新原付のリード125(平均値2.8)、ビジョン110(3.3)、CB125R(3.2)だった。一方で50ccのギアに比べ、新基準リード125の方が非常に発進しやすいという意見も。

 引き起こしに関しては、新基準スーパーカブ110を除いて「少し重量感を感じる」という意見があり、CBR125Rが原付と比較して「やや難しい」と回答した人が最も多かった。車重は130kgで比較対象のベンリィより20kg重いのだから当然とも言えるが、ベンリィと「同程度~やや難しい」間の3.4点の評価なので、決して無理というわけではないようだ。

 

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前後17インチのフルサイズボディを持ち、最も大柄な125ccとして新原付の試作車に選ばれたというCB125R。実は、PCXの方が車重は2kg重い132kgだ。 ※写真はホンダHPより

 

 加速力は当然125cc版と比べると悪化しており、特に新基準CB125Rは本来の125と比べて「やや悪い」が多く、3.9点。ベンリィと比較すると同程度の加速だった。

 新基準リード125は、現行モデルの125と比べて3.3だった。一方で「初心者にとってはこのぐらいの加速力が妥当ではないか」「中速のトルクが厚い分、走りやすい」との肯定的な意見も見られた。

 

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新基準リード125は最大トルクが1.2→0.73kg-mにダウン。元々のモデルはゼロ発進や巡航からのダッシュ力に定評があるだけに、ビギナーにはちょうどいいのかも? ※写真はホンダHPより

 

 技能試験官として、運転経験のない原付免許取得者が新原付を安全に運転できるか聞いたところ「初心者が乗ることに危険性は感じられない」「新基準原付を初心者が安全に運転することは可能だと思う」といった意見が多く見られた。

 車体が一回り大きくなっても出力が低いのでアクセルが操作しやく、特に発進や低速時は新基準原付の方が行いやすい模様。また多少の重さがあるものの、停止も問題ないレベルのようだ。

 一方で「初心者が乗る際には練習が重要」「パワー不足のため、急な坂であれば坂道発進は難しい可能性がある」といった意見のほか、「車両に対しての慣れや、スピードに対して注意が必要」との意見もあった。

 また車体の大きさによっては、女性や高齢者、低身長の方に足着き性が懸念されるという意見も。ただし「最終的には慣れの部分が大きいので、シートの大きさや、足つきなどメーカーの開発に期待したい」と、改良や新開発を期待する声もあった。

原二との見分け方や不正改造、ユーザーへの誤解も検討課題

 

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原付二種(51~125cc)は前後の白いマークとピンクナンバーで50ccの原付一種と区別している。

 

 

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車体サイズが原付一種と変わらない車種も多く、ナンバーの色等は重要な識別ポイントだ。

 

 悪質なユーザーが不正改造して馬力アップすることへの防止策も必要だ。これに関しては、汎用の工具ではアクセスできなくするなど特殊な構造で不正改造を防止することを検討。また検査しやすくするため、「完成車状態でも最高出力が測定できるよう関係団体において検討するべき」との記載もある。

 加えて、制度が改正され、「原付免許で出力を制限していない原付二種(51~125cc)が運転可能になる」と誤解されないようアピールすることが重要。バイクの車名に関しては、排気量が125でも新原付であることがわかる表記にするようメーカーで検討していくという。

 なお、従来通り原付免許は四輪普通免許に付帯。原付一種ならではの二段階右折、30km/h上限といったルールも継続される。この機会に交通ルールの見直しを含めた検討もしていただきたいものだが、残念ながら難しいようだ。

 

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交通ルールに関しては、新原付も現在の原付一種を踏襲する。

 

 ――これまで「原チャリ」として親しまれてきた50ccの原付一種バイクは、免許取得が簡単で、特に交通機関が少ない地方では貴重な足。電動アシスト自転車や電動キックボードといった近距離の交通手段はあるにせよ、より遠距離の移動手段として優れている。最盛期に比べれば販売台数は激減したとはいえ、現に年間12万台の需要がある。

 実現に向けて課題はあるものの、今後も大事な移動手段の一つが確保されることになりそうなのは一安心だ。あとは価格がどうなるか……。国内4メーカーの50ccクラスでは現在、レッツ(スズキ)の17万1600円が最安。今回、試作車として登場したビジョン110(ディオ110)は21万7800円~で、125cc前後のクラスではリーズナブルな価格を実現している。新原付も何とか20万円を下回る価格になると嬉しいのだが、これはメーカーの頑張りに期待するしかないだろう。

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/bikenews/353434/

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