【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー2024】

【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー2024】

 いよいよ4月17日に発売が迫ってきた2024年型のニューMT-09。撮り下ろしカットとヤマハによる詳細資料でジックリ解説していきたい。エンジンとメインフレームは従来型をベースとするが、大部分が新作だ!

 
文/沼尾宏明 Webikeプラス
 

自在に動ける機能美と、高級感を追求

 3月15日~17日に開催された大阪モーターサイクルショーでヤマハの新型MT-09が日本初公開された。新型はスタイルを筆頭に、官能的なサウンドの強化、クルーズコントロールなど電脳の充実、カラー液晶メーターなどを獲得している。

 さらにヤマハが社内向け&販売店向けに公開した資料を入手。大阪MCショーで撮影した写真とともに解説しよう。

 開発コンセプトは「The Knight Horse」(“騎馬”の意)。クラス随一の強大な9.5kg-mの最大トルクとリニアなレスポンスを発生する890cc水冷トリプル+高剛性アルミフレームは従来型を継承しながら、従来から提唱してきた“The Rodeo Master”の乗り味を洗練させることが新型の狙いだ。

【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー】

デビュー10周年にあたる2024年型で4世代目に深化したMT-09 ABS(ヤマハ)。価格は従来から11万円アップの125万4000円となった。

 

【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー】

従来型MT-09は、2021年型で初のフルチェンジを受けてデビュー。+43ccの890ccとなり、6軸IMUや上下対応シフターなどで電脳も進化した。

 

 まず大きく変わったのはデザイン。機能性と密接にリンクしており、実はモトクロッサーであるYZシリーズもデザインのヒントにしたという。

 車体デザインは、ライダーが車上で自由自在に動ける「3D RIDING」の思想を根幹に構成。これは、ライダーがマシンの上で自由自在に動き、状況や気分に応じた走りを思いのままに表現できる一体感に満ちたライディング体験を意味する。

 そこで“YZシリーズ”のデザインもヒントに、乗り手の動きとシンクロし、まるでその軌跡によって削り出されたかのようなニーグリップエリアからサイドカバーにかけての造形を意識。視覚的にも物理的にも積極的に操りたくなるエルゴノミクスを実現したという。

 また機能美を重視しながら、質感も追求。塗装のクオリティ、ワイヤーの取りまわし、ホーンの位置、ステップの締結方法、電装部品の設置場所に至まで再考したとしている。

 

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ヤマハによると「無駄を廃した機能美の上に成り立つ」という新型のスタイル。従来どおり外装を最小限に留め、機能を露出させながら上品さも意識する。

 

 

【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー】

ヤマハの資料より。伸び上がったシートとテールにどことなくYZの面影がある。

 

【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー】

タンクのエッジ感とシュラウドの大きさがよくわかる。初代からシリーズの特徴だったエアスクープだが、新型ではついに決別。YZF-R1風でもあり、アイアンマンのようでもある顔の整流版と、タンク前方のスポイラーで空力特性も意識しているようだ。

 

【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー】

新形状テールライトは、アウターレンズを造形に合わせて上側を赤、下側をスモークに変更。ライトの縦幅を細く見せる効果がある。

 

【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー】

ミラーは新作で、可視範囲を拡大。必要なエリアを絞り込みながら、可能な限り小さなサイズで作りこんだ鏡面形状だ。「風の流れを感じさせる」伸びやかな造形面と、「風で削がれた」デザインも意識。

 

【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー】

ライポジはやや前傾し、ステップがわずかに後方へ。フロント荷重を増やし、より幅広い速度域での安定感と接地感向上を図った。ハンドルバーとステップはそれぞれ2パターンの位置調整も可能。

 

 
 
 

【デザイン】洗練さとカタマリ感を重視、足着き性も向上している

 まさにデザインの顔であるフロントマスクは「Purified functional beauty」(洗練された機能美)を表現。ヘッドライトを筆頭とする機能部品をひとつの塊として捉え、新開発の小径薄型ヘッドライトと透明感のあるポジションライトによって、凝縮感のあるクールな表情と機能美を体現した。

 機能部品を塊として表現するため、ヘッドライトカバーは燃料タンクとの一体感を高める造形を意識。MTらしさの一つであるマスの集中化とショートオーバーハングのスタイルに磨きをかけている。

 タンクに関しては「自由自在に操れる軽やかさ」、「MTの世界観を際立たせるシャープさ」を造形として表現するため、高意匠プレス成形の新製法を導入。スチールタンクながらMTらしい鋭いエッジを実現している。

 さらにシートは、従来の前後一体型からスーパースポーツ的な前後独立式に刷新。より脱着が容易になり、質感も向上した。同時にタンクとの当てつけ部に設けていた前端の反り上がりを廃止。ライダーが前後に移動する際の自由度が高くなっている。加えて、左右のくびれ部分を左右各6mmずつスリム化することで、足つき性も向上したという。

【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー】

従来モデルからイメージを一新。さらに小型で薄い小径レンズモジュールを採用した。従来型でφ40mmだった発光面は、Hi:φ31mm/Lo:φ25mmに小型化し、車両との一体感や塊感を演出。

 

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新形状の燃料タンクは、実用的な効果も。上面を従来より30mm減とし、ハンドル切れ角は28°→ 32°に増大。最大幅は485mm→545mmとしたが、容量14Lは同一だ。

 

【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー】

タンク上部には「アコースティックアンプリファイアグリル」と呼ぶ開口部を設置。吸気音をダイレクトにライダーへ表現する。従来型のエアクリーナーボックスが3本の吸気ダクトを備えるのに対し、新型は2本。高周波サウンドが強調され、エンジン回転数がより滑らかに上昇するように聞こえる。

 

【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー】

前後分割式となったシート。段差がストッパーとしても機能する。

 

【メカ】ブラケットやシートレールを改良、操作系は快適度を大幅アップ

 エンジンとフレームに関しては従来型ベースなのは前述した通りだが、細やかなアップデートを施した。

 まずエンジンブラケットの形状と肉厚を変更し、剛性をアップ。その相乗効果として、より幅広いスピードレンジでの入力に対する安定感が向上した。一方でメインスイッチ周りの剛性をやや抜く方向でチューニングし、シリーズの伝統である俊敏な軽快性を保持している。

 また、ギヤに備わる雄側ドッグと雌側ドッグの本数を5→6本に増加。シフトチェンジの最大駆動切れ時間が減少し、よりスムーズなシフトチェンジを実現する。

 

【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー】

エンジンブラケットは厚みを増し、左側は形状も変更。

 

 続いて車体関連。シートレールは新作で、新たな電装部品の搭載スペース確保や、剛性の最適化による安定感アップを狙った。絞り込むことで、足着き性の向上も貢献している。

 サスは、より幅広いスピードレンジに対応するためバネレート強化と減衰特性をリセッティングした。これに伴い、リンクの設計も変更。増やした前輪分担荷重に対し、コーナリング中の車体姿勢と荷重配分をそれぞれ最適化することで、一段とスロットルで操るフィーリングとしている。

 

【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー】

シートレールは最大で14mm絞り込み、足着き性を向上。さらにリヤシート下にUSB-Cソケットも新設した。

 

【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー】

フルアジャスタブルのφ41mm倒立フォークとスピンフォージドホイールは従来型を踏襲。サス設定は最適化されている。

 

【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー】

リヤのリンクは新作。モノショックは従来型と同様でプリロード&伸側減衰力調整が可能だ。新型のOEMタイヤは専用チューニングを施したブリヂストン製S23。これに合わせてサスを再設定している。

 

 ライダーが触れるパーツも大部分が刷新され、快適性の追求に余念がない。シフトペダルやクラッチレバー、スイッチ類を使いやすく変更した。

 シフトペダルは先端を従来の丸棒型から「へ」の字型に変更し、ラバーのパターンも狭い間隔と方向を見直し、滑りにくく摩耗しづらくなった。また、クラッチレバーは完全新作でアジャスターを追加したほか、形状やタッチにもこだわっている。

【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー】

ステップはデザインを変更。ブレーキペダルは鉄プレス→アルミ鍛造に、ブラケットはヒールガード一体型からアルミプレス成型セパレートタイプに変更し、質感を向上。

 

【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー】

シフトペダルは形状とラバーのパターンを変更。クイックシフターは加減速中もシフトアップ&ダウンが可能な第三世代に進化した。

 

 

【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー】

タンデムステップもリヤフレームとの一体感を高めるため、締結方法をサイドから下部ボルト留めとし、タンデムライダーの足が載せやすい位置に変更した。

 

【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー】

新作のスイッチボックスに十字スイッチを新設。ボタン形状、動作感も直感的に操作しやすくなった。

 

【詳細解説】新型MT-09が日本初公開、デザインはYZの流れを汲み、細部まで快適性を向上した!【モーターサイクルショー】

クラッチレバーは新作でアジャスター着き。質感も高くなった。

 

【電装】バイクで世界初の二段開式ウインカーを投入、ナビも表示する

 電装部品に関しては、クルーズコントロール、電子制御エンジンブレーキコントロール、スマホ連携機能を追加。さらに二輪初の「二段階式」ウインカー機能も採用した。一段目は車線変更などの短い時間に便利な3 回点滅。二段目は通常の連続点滅となる。

 また、急ブレーキ時にハザードを自動点滅するESS(エマージェンシーストップシグナル)と、ウインカーの点滅開始から15秒以上かつ150m走行してもキャンセルしない場合、自動でウインカーを停止する消し忘れ機構も追加した。

 カラーTFT液晶メーターは従来の3.5インチから5インチに拡大。また、ナビがメーター上で表示可能になった。欧州でナビが使えても、日本仕様では使用不可のモデルも多いが、新型MT-09では問題なし。無料の「Garmin StreetCross」アプリをスマホにインストールして、車両とペアリングすることによってメーター上にナビが映し出せる。

 

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