元バイク屋営業が乗る! Benelliのアドベンチャー「TRK502X」は“優しい力持ち”だった

元バイク屋営業が乗る! Benelliのアドベンチャー「TRK502X」は“優しい力持ち”だった

 先日行われた「JAIA 輸入車試乗会」では、様々な輸入車に試乗させて頂いた。中でも個人的に印象強かったのが、2020年よりイタリアで3年連続ベストセールスに輝いたBenelli(ベネリ)のアドベンチャーツアラー「TRK502X」だ。オートバイ販売店で営業の経験を持つウェビックプラス瀧村がインプレッションを担当していく!

 
文/瀧村 和也 Webikeプラス
 

第一印象は“想像よりデカい”! まさに大陸横断用アドベンチャーといえる風格

 ベネリと聞いて、まず思い浮かべるオートバイといえば何が挙がるだろう? イタリア発の同社、実は1911年創業という非常に長い歴史を持つ。自分もそうだったが、なんとなくクラシックなバイクを想像する人も少なくないのではないか。

 そんな歴史あるベネリのTRK502Xは、2019年より発売されている本格オフロードアドベンチャーバイクだ。ヨーロッパの国境も超えられるように設計された強固なビッグアドベンチャーツアラーである。

 正規インポーターのプロトでは今まで400cc以下の車両を輸入しており、大型車である同車の輸入が開始されたのは去年の話。しかもその最初の一台がアドベンチャータイプとは、やはり同カテゴリーの世界的な人気の高さが伺える。

 個人としては人生初ベネリ、まさか最初に乗る一台がアドベンチャーになるとは想像もできなかったが、正直どのような乗り味なのか予想がつかないからこそ非常に楽しみだ。

 

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フルパニアで想像以上に大きく感じるTRK502X

 

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横から見ると“クチバシ”が鋭い

 

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アップポジションのマフラーは完全にパニアで隠れる

 

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エンジンガード、パニアのおかげか、正面から見ると迫力満点

 

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リア周りもやはりゴツい。凝った形状のマッドガードが個人的には好みだった

 

 まずTRK502Xを目の当たりにして思ったのは、「想像よりデカい!」という感想。ハードケースがフル装備ということもあるが、車体全長2220mm、装備重量235kgという車格は紛れもなく大型車のそれ。「大型といっても500ccでしょ?」と油断していたら結構驚くかもしれない。

 そもそもなぜ500ccでリリースされたのか? それはベネリ本国であるイタリアの免許制度に起因している。日本で言う“普通二輪免許”に比較される“A2ライセンス”では、区分の上限が排気量ではなく最高出力であり、その上限が48馬力なのだ。TRK502Xの最高出力は47馬力のため、A2ライセンスで乗れてしまうというわけ。

 とは言え、仮に免許を取り立てだとして、いきなりこの巨大なバイクにすんなり乗れるものなのか・・・。などとも思ったが、先述の通り3年連続ベストセールスという実績ある同車。日本ならば車格や足つきなどで不安を抱く人も少なくなさそうだが、本国イタリアではむしろ“車体が大きい”というところに魅力を感じる人が多いのかもしれない。

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エンジンは500cc水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒。360度クランクを採用する

 

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ヘッドライトは片側1灯式でバルブを採用。デイライトやウィンカーはLEDだ。

 

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シフトペダルは肉抜きされており、ステップのラバーはしっかりと滑り止めがついている

 

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ブレーキペダルはアーチ状になっており、ステップの上方へと流れるような形状だ

 

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フロントは19インチのスポークホイール採用。トレールタイヤはシティユースも意識しているようだ

 

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リアは17インチを採用。2本のパイプを合わせたかのようなスイングアームも特徴的

 

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丸みを帯びたシュラウドの奥にはエアインテークが覗く

 

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山なり形状のタンクは大容量20L。燃費はWMTCモードで24.3km/Lを確保した

 

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アップライトなハンドルポジションに大型スクリーンが映える。ハンドガードも初期装備だ

 

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肉厚だがサイドが削られたシート。長時間のライディングでも疲れにくい設計となっている

 

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アナログタコメーターとデジタルメーターを併設。個人的には好みの仕様だ

 

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マフラーはサイドパニアにの内側に収納される形。ステンレスのボディが美しい

 

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ケース類はオプションとなる。サイドパニアの形状や容量はマフラーの兼ね合いで左右非対称だ

 

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エンジンガードは高い位置に装備されており、こちらも初期装備となる

 

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右側のハンドルスイッチにはセル、ハザード、キルスイッチなど一般的な装備

 

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左側ハンドルスイッチも特に変わった装備はない。グリップにはTRKのロゴが入る

 

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よく見るとミラーにもTRKロゴが。細かい箇所の意匠に凝っている

 

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シュラウド上部にはUSBの充電ソケットが標準装備

 

 
 
 

ローシートでも830mm! TRK502Xの足つきチェック

 本国仕様で860mmのシート高を誇るTRK502Xは、日本仕様では830mmと30mmローダウン化されている。30mmといえばなかなかの下げ幅だと思うが、実際にまたがってみると想像通り結構高い。身長171cmでも片足ベタ付きとはいかず、両足ではつま先が地面に触れている位の感覚だった。

 ただ、少なくとも平地では不安を感じることもなく、街乗りレベルであれば余裕で乗れてしまいそう。というのも、アップライトな乗車姿勢で体勢が安定しているため、前後輪にバランスよく荷重がかかっている感覚がしっかりとあるからだろう。とはいえ重心は間違いなく“上”に寄っているので、停車時に大きく傾けば急に重くなり危ないだろうとも感じた。

 もしどうしても足つきが不安だという人には、別途オプションの「ウルトラシェイプシート」(税込み¥19,800)を装着すれば、ここからさらに15mmローダウンできる。

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171cmが両足でまたがった場合。母趾球が付くか付かないかくらいだろうか

 

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171cmが片足でまたがった場合。ギリギリ踵がつかない程度だった

 

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このくらいでも平地なら怖くないが、坂道では少し不安を覚えるかもしれない

 

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片足の状態。安定して停まりたいなら片足のほうが間違いないだろう

 

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両足が地面についている状態

 

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片足のみ地面についている状態

 

いよいよ試乗! 360度クランクが生む、豊かで優しいトルク感を堪能

 さて、いよいよTRK502Xを試乗していく。まず半クラッチの状態からすぐに伝わってきたのは、太くも優しいトルク感。235kgもの車重を全く感じさせない力強さだが、ドンツキ感は一切なくスムーズに進んでいく。パワーが強すぎず、かといって弱すぎもしない。まさに想像通りの加速をしてくれるのだ。

 エンジンは水冷4ストローク2気筒を搭載しており、特に変わった仕様は無いように思えるが、実はこのバイクは“クランク角”に特徴がある。国産車ではW800などに代表される360度位相クランクを採用しており、簡単に言えば2つのピストンが同タイミングで上下しているエンジンだ。

 そんな特性のため振動もさぞ大きいのだろうと思いきや、意外や意外、実際はかなりスムーズに回ってくれる。エンジン音もまるでスポーツタイプのようなので、最初は360度クランクとは思えなかったほど。ボアとストローク量が69.0×66.8というスクエア型なことも関係しているのかもしれない。

 コーナーはフルパニアの割には曲がりやすく、足回りの性能の高さが伺える。インナーチューブ径50mmと大径仕様なだけあり、ガッチリとした剛性感から車体を傾けても一切不安はない。なんといっても、巨大なロングスクリーンによって走行風をあまり感じないところがポイント。ハンドガードで手への走行風も防げるので、外界からしっかりと“守られている”という安心感が得られた。

 

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一度走り出してしまえば車重やシート高は全く気にならない。むしろ広い視野が確保でき、よりライディングに集中できた

 

 

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コーナリングではリーンアウト気味で走行。簡単に車体が倒れ込んでいくので峠なども全然問題なさそうだ

 

 気にいなった点といえば、ブレーキの利きが少し甘いと感じたことだろうか。カーブの際に使う分にはちょうどいいのだが、急制動すると車重もあってか制動距離が若干長かった印象。もう一点は、6000回転付近になると一気に微細振動が大きくなるところ。その回転域で3分ほど走っただけでも、ステップから伝わる振動で足が痺れてきた。ツーリング時には4000~5000回転で乗るのが個人的にはオススメだ。

 最初は500ccと聞いて「日本の免許制度的に、どうせ乗るならもっと大排気量のモデルを求める人が多そうだな・・・」などと思ったものだが、実際に乗ってみるとそのような気持ちは一切無くなっていた。TRK502Xは“500ccだから”こそ味わえる豊かなトルク感と優しい乗り味が魅力なのだ。パワーを持て余すこともなく、スロットル操作にもそこまで気を使わなくていいため、ストップ&ゴーが多い日本の公道に最適な特性だと感じる。

 元バイク屋営業として、仮にTRK502Xを販売するのであれば「ゆったりと気楽にアドベンチャーバイクを楽しみたい人」に向けてオススメするだろう。250ccではパワーに不安が残る、かといって大排気量すぎるのも扱いづらそうで怖い、という人にはピッタリの車両ではないか。車体は大きいものの、一度乗ってしまえば快適で安心感のあるツーリングを提供してくれるはずだ。

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