ホンダ青山ビル1Fは、誰もが自由に出入りできる「ウェルカムプラザ」として開放されている。最新マシンやホンダグッズのショールームなのだが、そこにプレミア的人気を集める名車が何気なく展示されていた。「CBX400F INTEGRA」だ。
日本の市販車で初めてフェアリングを装備した名機
1981年、ホンダから400ccのスポーツモデル「CBX400F」が発売された。それまでのフラッグシップ「CB」シリーズを更なる高性能へ導いた「CBX」は、同クラスの4気筒400ccモデルのなかでも最高水準のエンジン出力、48PS/11,000rpmを誇り、レースシーンで磨き上げた先端技術が惜しみなく注がれた、当時の「スーパースポーツ」だったのだ。このCBX400F、当初は82年から83年までの短い間のみラインナップされたが、ファンの熱い要望からか、84年に再販。後継機が次々生まれた現在でもその人気はまったく衰えず、中古車市場ではプレミア価格での取引が当たり前となっている。
そんなCBX400Fに、フレームマウントされた大型のフェアリングを備えて1982年に発売されたモデルが「CBX400F インテグラ」。当時は400ccと共に550ccモデルもラインナップされた。今でこそ当たり前の装備となったフェアリング、あるいはカウルだが、日本で初めて市販車にこれを搭載したことで知られている。カウルの装備自体は50年代からレースシーンで一般化しており、70年代には海外メーカーが次々とロケットカウルやハーフカウルを備えたモデルを発売。ところが当時の日本では空力的な性能アップを図るパーツは、暴走行為を助長するとして認められていなかった。同時期に登場したスズキGSX750S カタナがスクリーンやセパレートハンドルを装備できず、VT250Fではカウルを「メーターバイザー」と称していた……というのは有名な話だ。
ホンダもこの規制に対抗し、カウルをオプションパーツとしてCB750Fに向けて限定販売するなどしていたが、82年にようやく純正状態でのフェアリングの装備が許可され、CBX400Fインテグラは日の目を浴びた。そのシルエットは上端を立ち上げた独特なスクリーンを備え、走行風をライダーの上に受け流すことで、ライダーの疲労軽減を最大限に考慮されたもの。高速域でのツーリングを快適に楽しめる仕様だった。
先端装備を多数採用!今では博物館クラスのレアリティに
CBX400Fはフェアリングをはじめ、先端装備を多数取り揃えていることも人気の理由のひとつだった。空冷DOHC4バルブ4気筒エンジンは専用の新設計で、独特の「X」形状のエキゾーストパイプは、CBの究極系であることを想起させるデザインとなっていた。足回りには世界初採用となるアンチダイブ機構(TRAC)を備え、インボードディスクブレーキも採用。スイングアームにも軽量中空アルミキャスト製を採用し、こちらも量産車世界初の試み。リアショックは先進的なモノショックで、エアサスペンション機構を備える。これらの装備は現代でこそ見かける機会が少なくなったが、当時は従来のオートバイのスタイルを一歩進めた、野心的な試みだったのだ。さらにインテグラでは、自動でウィンカーをオフにできる「方向指示器キャンセル機構」も装備。現在でも一部のハイクラスなツアラーにしかないこの装備を、2輪車で初めて装備した車両でもあるのだ。
当時はカワサキ「Z400FX」、スズキ「GSX400F」、ヤマハ「XJ400」など、各メーカーから直列4気筒の400ccネイキッドが繚乱しており、ユーザーも選びたい放題といえた。その中で最後発となったCBX400Fは、後発ゆえの先端装備と、市販車日本初の栄誉を掲げるインテグラのラインナップで、ライダーから高い人気を勝ち得た。その人気によって、発売から40年以上が経った現在、当時の新車価格が54万9000円であったインテグラは、400万円以上での取引が当たり前だ。目にする機会もなかなか得られないだろう。
東京都は青山のホンダウェルカムプラザでは、そんな名機の姿を間近で(かつ無料で!)じっくり目に焼き付けることができる。この車両は栃木県、「ホンダコレクションホール」の収蔵物で、不定期に入れ替えられる。これからも様々な名車を目にするチャンスがあるだろうから、ホンダファンはぜひとも、まめに足を運んでいただきたい。
詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
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日本初のフェアリングを纏った「CBX400F インテグラ」は先進の自動ウインカーキャンセルも装備【画像ギャラリー】
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