【バイクサバイバル術】第1回:車線内のどの位置を走るかを考える

【バイクサバイバル術】第1回:車線内のどの位置を走るかを考える

 バイクで走行する時、あなたは何を考えているだろうか? 本来バイクの運転には高い集中力が必要であり、運転に関すること以外考える余裕はない。それでも人は慣れてしまうもので、最初は考えながら行なっていた行動を無意識に近い状態で行なうようになり、他のことを考えたり音楽を聞いたりするようになる。今回から始まるこのシリーズでは、色々な交通シチュエーションの中でライダーは何を考えているか、また考えるべきかを改めて考えてみたい。第1回で考えていくのは、「車線内の走行位置」についてだ。

 
文/後藤秀之 Webikeプラス
 

「キープレフト」は基本だが、絶対ではない

 バイクで走行する場合、あなたは車線内のどの位置を走っているだろう? そう聞かれた時に、多くのライダーの頭の中に思い浮かぶのは「キープレフト」という言葉であり、「左端」という人が多いかもしれない。この「キープレフト」という言葉を教習所などで繰り返し聞かされることで、この「キープレフト」の呪文にかかり無意識に左端を走っているライダーも多いはずだ。もちろんこの「キープレフト」には道路交通法に基づく根拠があって提唱されているのだが、少なくともバイクの場合はこれが「絶対」ではないと考えるべきだろう。

 まず、普段通りに走ってみて、自分が車線のどの位置を走っているか確認してみてほしい。普段気にしていなくても、改めて意識して自分が車線のどの位置を走っているかを確認することはとても重要だ。自分では「キープレフト」していると思っていたが、案外車線の中央あたりを走行していたというライダーもいるだろう。「キープレフト」が間違っていると言う気は全くないのだが、それに囚われ過ぎるのは場合によっては危険を招く可能性があるのも真実だ。いくつかの事例を挙げて、車線内の走行位置について考えていくことにしよう。

 このように、「車線のどの位置を走るか」ということは、「他車との横方向の車間をどのくらい取るか」ということと同義と言えるのである。バイクはライダーの体が剥き出しになっているため、軽い接触であっても大きな怪我を負うこともある。そうした接触事故を避けるためにも、横方向の車間について意識してみて欲しい。これはある程度経験のあるライダーであれば自然に身についているものなのだが、一度意識して確認しておくことで事故を防げる可能性が高まるはずだ。

 

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左右のどちらにも最短の時間で移動できるということを考えると、バイクの場合は車線の中央を走行するのが最も適切ではないだろうか。

 

 

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いわゆる「キープレフト」の車線の左寄りを走行する場合、側道からの飛び出しや停車車両のドアオープンに対応するための時間が短くなる。つまり、左横方向の車両との車間が狭い状態になる。

 

 

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車線の右寄りを走るということは、対向車や右車線を走行する車両との距離が近いということになる。つまり、右横方向の車両との車間が狭い状態になる。

 

 
 
 

横から出てきた車両の前を通過する

 

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横方向から出てきている車両がいる。その前を通過する際には何に気をつけるべきだろう?

 

 前方の信号は青で、交通の流れに乗って走行している。前方に交差する道から出てくる車両を確認した。このシチュエーションで何に気をつけるべきだろう?

 この交差点はこちら側の信号が青でも、交差する道からの左折合流が可能だ。これは商業施設などから出てくる車も同じで、こちらが優先であるが、横方向から合流してくる車両があるというシチュエーションだ。このシチュエーションでの接触事故は、左折車がバイクとの距離や速度を見間違えることで起きることが多い。

 この場合気をつけるべきは、左側から出てくる車両のドライバーが、あなたの運転しているバイクを視認しているかということだ。車線の左寄りを走っていると視認される距離が近くなり、左折車との距離も近くなる。車線の右寄りを走ることで視認されるタイミングが早くなり、左折車の前を通過する際の距離が遠くなる。きちんと相手に視認されていれば車両はこれ以上出てこないだろうし、万が一出てきてしまっても左寄りを走っている時よりも距離がある分、接触する確率を減らすことができる。

 

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このシチュエーションで最も重要なのは、横方向から出てきている車両のドライバーに自車の存在を確実に認識させること。また、前を通過する際は、できるだけ車線内の右によって、万が一横方向から出てきている車両が動いた場合に接触しないように注意したい。

 

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横方向から出てきた車両、視認されていないとさらに出てきて接触することもある。

 

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ドライバーにしっかり視認され、横方向の車間をしっかり取っていれば通過時に接触する確率は減らせる。

 

大型車両と並走する場合

 

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大型車両はできるだけお近づきになりたくない存在だが、並んでしまった場合は何に気をつけるべきだろう?

 

 大型車両と並んで走るのは避けたいシチュエーションだが、信号の関係で並んでしまうこともある。このシチュエーションで何に気をつけるべきだろう?

 大型車両は死角が多く、左側にいるバイクは死角に入って確認されていないこともある。並んでしまった時に車線の右寄りにいると死角に入りやすい。右寄りにいることで視認される可能性は高まり、万が一急に大型車両が左に寄ってきた際にも距離がある分避けられる可能性が高まる。また、走行中の大型車両の周囲には風の流れによる風圧が発生しており、追い越したり追い越されたりする際にその影響を受けることがある。そのため、大型車両の側を走行する際は、車線の左寄りを走行することでその影響を最小限にすることができる。

 ちなみに大型車両による風圧の影響は、追い越す際は大型車両側に引き寄せられ、追い越される場合は抜かれる瞬間外側に押し出され、その後引き寄せられる。大型車両の側を走行する際にそうした影響があることを知っていれば、車体を保持する意識が発生する。心の準備ができているだけでも、事故の確率を減らすことができるはずだ。

 

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大型車両は死角が多いため、できるだけその死角に入らないようにしたい。また、走行時の風圧が大きいので、走行中はできるだけ横方向の車間を取るようにしたい。

 

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大型車両との横方向の車間が狭いと死角に入りやすく、風圧の影響を大きく受ける。

 

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大型車両とはできるだけ距離を取る。追い越し時や追い越される時にも注意が必要だ

 

横から出てきた車両と、その先の停車車両

 

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横方向から出てきた車両と、その先に停車している車両という複合要素のあるシチュエーション。この場合何に気をつけるべきだろう?

 

 前方に左から出てきている車がいる。さらにその先には停車している車両が確認できる。このシチュエーションで何に気をつけるべきだろう?

 まず左から出てきている車両のドライバーに視認されることが重要だ。先にも触れたが、その際車線の左寄りを走っている時よりも、右寄りを走っている方が視認されるタイミングが早くなる。さらに、これだけ車の鼻先が出てきているのであれば、車線のできるだけ右寄りを走行することで接触までの距離が取れる。

 このシチュエーションで気をつけたいのは、その先に停車している車両の存在だ。この車両はハザードランプが点灯しており、ドライバーが乗車している可能性が高い。この停車車両の横を通過する際には、最低でも二つの可能性を考えておく必要がある。ひとつはドアが開いてドライバーが降りてくる可能性で、もうひとつはこの車両が発進する可能性だ。つまり、左側から出てきた車両をクリアした後、この停車車両を追い越すまで車線の右寄りを走行することで危険を回避できる可能性が高められる。

 

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横方向から出てきた車両の前を通過した後、その先の停車車両の広報死角に入っている可能性がある。それに気づかず停車車両が発進したり、ドアを開ける可能性を考えて横方向の車間を取るべきだろう

 

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横から出てきた車両の先の停車車両は、動いたりドアを開けたりする可能性がある。すぐに車線の位置を戻すのは危険。

 

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横から出てきた車両だけに気を取られ過ぎず、その先の停車車両にも注意を払って距離を取りたい。

 

対向車線の停車車両

 

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対向車線からバスが来ていて、その前には停車車両がいる。この場合は何に気をつけるべきだろう?

 

 対向車線からバスが来ており、バスの前には停車車両がいる。このシチュエーションで何に気をつけるべきだろう?

 バスが停車車両を避けるためには、こちら側の車線にはみ出さなければならない。この場合こちらもバスにスペースを譲るというのが常識的な判断なので、当然車線の左寄りを走行する。こちら側はニ車線あるので左車線に車線変更しても良いが、左後ろから車両が来ていないことをしっかり確認する必要がある。後続車が先に車線変更し始めていることもあり、その場合はミラーの死角に入っていることもある。ミラーでの確認だけではなく、必ず目視で確認するべきだろう。

 また、こちら側が一車線だった場合は、左後ろから自転車や電動キックボードなどが来ていないか必ず確認したい。残念ながら自転車や電動キックボードの運転者には周りを見ていないような運転をする人も多く、絡んで事故を起こしてしまうことがある。電動アシストや電動モペッドなどは違法な車両も多く走っており、速度が異常に速い車両もあるので要注意だ。

 

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停車車両を避けるために、バスはこちらの車線にはみ出すことになる。こちらは車線の左寄りを走行することになるのだが、その際に左後ろから来る車両や自転車などが無いかを気をつけておきたい。

 

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