■山間の川沿いをひたすら走る
バスが工場のある高台を下りると、大山川と呼ばれる川沿いを縫うようにして通る国道212号線を、ほぼ道なりに進んでいく。
途中、民家のあるエリアを経由するため、メインルートを少し外れて狭い道にあえて入っていく猫みたいな挙動は、(利用している側からすれば)より路線バスが楽しくなる醍醐味の一つで、この杖立線でも堪能できる。
車窓から見える景色も進めば進むほど緑が増えていき、ますますローカル路線バス旅然とした空気感に包まれる。行程の終盤に現れるダム湖・梅林湖をからめた風景は必見だ。
大分県と熊本県の県境はどこにあるのか。バスの経路では、終点の少し手前が境界になっているようだ。
後日マップで距離を測定したところ、熊本県内の移動距離は350mだった。アウェー側の運行区間が“ちょろっと”しかないのは県境越え系バスのお約束。
神奈中が運行している「三56系統(神奈川県→山梨県)」の、山梨県内約50mとまでは行かないにせよ、1kmを切る路線は中でも短い部類に入る。
■スルーしてしまうには惜しい場所
日田バスターミナルを出て1時間ほどで終点の杖立に着いた。買ってあった切符を運転手さんに渡して下車。
降り立った杖立は温泉地だった。「杖立温泉」というキーワードは事前に見ていたものの、山深そうなので人里離れた秘湯系かな? と予想した。
実際のところは山と山を川が隔て、その両脇に旅館やホテルが立ち並ぶ、まさに理想の温泉街といった佇まい。
この日はさらにバスを乗り換える行程を組んでいたため、20分ほどしか滞在できず。スルーしてしまうには惜しい場所だったか。
杖立に到着した際に、日田バスの方と少し話をする機会があり、杖立線は景色の良い所を通る路線で、特に紅葉と桜のシーズンがオススメなのだそう。
今度はその時期を狙って、杖立の温泉街を目当てに、またこのバスで来ると凄くイイかも……一回乗っただけでオシマイにはさせない、並々ならぬリピート力を杖立線に感じた。
【バス路線の基本データ】
日田バス 杖立線(日田バスターミナル〜杖立)
・跨ぐ県:大分県 → 熊本県
・移動距離:約28km
・所要時間:59分
・運賃:1050円
・停留所の総数:41
・熊本県内の区間距離:約350m
・熊本県内の停留所の数:1