世情が不安定だと何かにすがりたくなるのは古今東西変わらない。パワーを必要とする皆様のために、バスで行くパワースポットをバスマガジンWEBのオリジナル連載で紹介する。今月は埼玉県だ。本稿には12月のバス占いも付録するので、パワスポ探しの参考にしていただきたい。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■オオカミを借りられる?
神社マニア界隈では有名なオオカミ様を拝借できる神社といえば埼玉県の三峯神社があまりにも有名だ。秩父鉄道に三峯口という駅があるが、そこからさらに山を登って行く。今回はその三峯神社を参拝した。バスマニアには1時間20分もの路線バスの旅が待っている。それもほとんど停車しない「急行」種別だ。
日曜日でおそらく混雑すると踏んで、池袋を6時50分発の西武特急に乗車して西武秩父駅を目指す。新しい西武001系電車はなかなかの乗り心地だ。西武秩父駅に8時14分に着いて8時30分発の西武観光バスが運行するM4系統の急行・三峯神社行きに乗車する予定だ。
かなりの乗客が終点の西武秩父駅まで乗っていたので、とにかく改札を抜けて5番乗り場へ急いだが、すでに10人以上並んでいる。路線車が来るはずだから座れないことはないにしても、相当な乗車が見込まれる。1時間20分の乗車なので立席は勘弁願いたい。
この路線は西武秩父駅から1時間20分の所要時間で三峰神社に行くが、途中の停留所にはほとんど停車しない。秩父鉄道の三峯口駅は経由するが、三峰神社まで行く人は西武秩父駅からすでにバス乗車が主流のようだ。
やってきたのは西武観光バスのいすゞエルガだ。三峯口駅の改札前は降車専用で、乗車は向かい側のバス停だが、バスはそのまままっすぐに進んでいく。そして大型二種免許課題の鋭角通過のような転回場を回って、また三峯口駅に戻ってくる。そこからは、ほぼ山道だ。
■フリー乗降区間設定のワケ
ダム湖を横切り、三峰神社に行く山道を登って行く。ヘアピンカーブもあるが、巧みなハンドルさばきでどんどん登って行く。ちなみに山道区間はフリー乗降区間で運転士に申し出れば停留所以外のどこでも止まってくれるし、タクシーのように手を挙げれば止まって乗せてくれる。観光地にはよくある方式で、山の散策やハイキングで利用する人でもいるのかと思っていた。
山道でハイキング目的で降車する人などいるはずもなく、三峯神社の駐車場入口およそ700m手前付近で渋滞にはまりバスが止まってしまった。運転士は慣れたもので「フリー乗降区間なので、どこででも降車できる」旨をアナウンスする。つまり、渋滞を待つのもいいが急ぐ方はどこでも降車可能なので徒歩で向かっても良いということである。フリー乗降区間はこのためにあったのかと思うほどうまくできたシステムだ。
■2名を残して全員降車
西武観光バスの運転士によると、三峰神社の駐車場渋滞は経験上、1kmあたり1時間かかるという。700m手前で渋滞につかまったので概ね45分はかかる計算だ。それを聞いて記者をはじめ2名を残して全員が降車して歩き出した。おそらく歩いた方が早いのだろう。
そこから30分くらい渋滞の中でバスに乗っていると、駐車場の端っこまでやってきた。ここからだとそのまま駐車場を抜けて参道に入れるということだったので、乗客の総員2名はとうとう下車した。ついに終点を待たず乗客はゼロになってしまった。
この後、数十分を要してようやく三峯神社の駐車場内にある終点バス停に到着したようだ。記者は参道の上からそれを見ていたが、山道なので登りだけでも2車線にするわけにはいかないのだろうが、せめて山の下や西武秩父駅付近に駐車場を設け、パーク&ライド方式でピストン輸送した方がみんな幸せだろうとも思ったが、そうなるとバスの台数をそろえなければならず、同じ数だけの運転士が必要になるので昨今の運転士不足では無理な相談かもしれない。
運転士不足の世の中でそんな芸当ができるのは、神宮を抱える三重交通くらいなのかもしれない。いいアイデアが思い浮かばない間に三峯神社の拝殿に到着した。普通に参拝を済ませてから御朱印を拝受し、同社の御眷属(ごけんぞく・神のお使い)であるオオカミ(オオクチノマガミ)を拝借に向かった。
様々な願意のある参拝者と合同で本殿での御祈祷を経て、空気穴が開いた箱に入ったオオカミの神札を拝借することができた。拝借期間の1年間はオオカミ様が守ってくれるようだが、概ね1年後にお返しに行かなければならず、その際に新しい御眷属を拝借することもできる。箱の中にはオオカミ様の神札の他に3枚の付札が付属しているので、玄関等にお祀りすればよい。
ものは考えようだが、どこの神社でお札を授与されても1年で新しいものに取り換えるのが普通だが、それを貸し出しとしているのが三峯神社の御眷属拝借というシステムだ。神札とは違い御眷属そのものをお借りすることになるので、自分の家がパワースポットになるということを意味する。