移動・交通に関わる手段や技術・サービスの総称として使われる「モビリティ」。先日も東京で開催されたモビリティショーは以前のモーターショーから名称を変えたものだ。最近はあちこちでこの用語を聞くようになったが、新しいモビリティを用いた実証実験が名古屋で始まったのでレポートする。
文/写真:東出真
編集:古川智規(バスマガジン編集部)
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■名古屋駅
名古屋駅は中京圏の中心地であり、東海道新幹線をはじめ名鉄線、近鉄線、地下鉄も乗り入れる巨大ターミナルだ。その南東側にある広小路口に乗り場がある。名鉄百貨店横のタクシー乗り場に続くタクシーの車列や、名鉄バスセンターへの通路があるが、そこに仮設バス停が設置されていた。
見ると時刻表のほかに、予約の方法や乗車の方法が書かれていた。そして出発時刻近くになると見たことのない形の車両が静かにやってきた。これが今日乗車する「e-Palette」である。
■e-Paletteとは?
「e-Palette」はトヨタが開発したモビリティで、2025年9月から販売が始まったバッテリーEV車である。単なる人の移動手段だけではなく、店舗やサービス空間としての活用や様々なモビリティサービスに対応できるように設計された。まずは東京お台場にある「TOYOTA ARENA TOKYO」およびその周辺エリア、静岡県裾野市にある「Toyota Woven City」に導入された。
今回全国の自治体に先駆けて愛知県が導入し、市内にある施設「STATION Ai」を起点として定期運行を行うことになった。その乗り場が名古屋駅というわけである。降りてきた乗務員にこの便の乗車を伝えると、チェックインの案内をされた。
まず扉に貼られたQRコードを読み込み、表示されたサイトでチェックインのボタンを押すと乗務員のタブレットでも確認ができるようになっていて、これで乗車できるという流れになっているようだ。
■EV車は加速が命?
車内はかなり広く容量があるように思えた。諸元によれば車内の長さが約2.9m、幅が1.8m、高さが約2.1mで筆者が普通に立って移動ができ、立席で全高は気にならないほどである。運転席は真ん中に置かれているため、座席から前の景色を見るのはちょっと難しいようだ。
座席は入口扉に向かい合うように跳ね上げ式の座席が3席、後方には4席設置されている。上部には吊革も3つ取り付けられている。全体的に白を基調としたカラーリングと、上部にも窓が設置されていることもあってかなり車内は明るく感じた。手すりもあるので乗降時の移動も不安はなさそうだ。
定刻よりやや遅れて出発した。このようなモビリティにはいろいろ乗車したが、自動運転バスのような緩やかな動き出しとは違い、普通のEV車なのでガソリン車の乗用車並みの起動である。EV車の真髄は加速なので、そこにまず驚いた。
そして加速時は側面の横向きシートに座っていると、ちゃんと座っていないと身体をもっていかれるくらいの強さがありパワフルに感じた。名鉄百貨店の横から名駅通に出ると、一度駅前の交差点をぐるっと転回して向きを南向きに変える。
交通量の多い区間であるがe-Paletteの大きさや速度もあり、自動運転バスのような道路の端をゆっくりと走るイメージはなく、他の乗用車やバスなどと同じ流れで走行していくのは車窓を見ていても不安を感じなかった。むしろ通りを行くバスの車内や歩いている人からの注目度がすごくとても視線を感じることとなった。
この車両は自動運転車ではなく、運転士が運転するEV車である。よって導入の方向としては、バスとしては小型車の新しいカテゴリーということになるだろうか。










