バスやタクシーを有償で運転をするのに必要な運転免許が二種免許だ。運転士不足問題が深刻化する中で、外国人運転士を確保するために必要な多言語での学科試験導入が具体化したようだ。
文/写真:古川智規(バスマガジン編集部)
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■一種免許はすでに多言語受験可能
第一種免許はすでに英語や中国語等の多言語で受験することができるようになっている。二種免許の学科試験は現在日本語のみで、外国人が受験するには高い障壁になっている。そもそも二種免許を取得して外国人が運転士として日本で就労することは在留資格の上からも想定されていないから当然のことなのだろう。
新聞の報道によると、運転士不足に悩む運輸業界からの要望もあり、多言語での受験を可能にする方針を決めたという。とはいえ、日本語が理解できる日本人でも二種免許の学科試験合格率は第一種免許の約70%に対して40%以下だ。
技能は教習所で訓練すれば卒業検定合格までそれほど難しくはないが、学科試験は日本人でも勉強が必要なので、技能・学科の総合的に見てやはり難易度は高いと言える。
■在留資格にも運転士が!
日本で対価を得て就労するのは難しく、就労ビザや在留資格を得るのは会社の転勤等で日本に駐在する会社員でもない限りは、特定の技能を持つ人に限られる。
二種免許を取得しやすくしたとしても、日本で就労できる在留資格がないと運転士にはなれないが、外国人労働者の特定技能に「自動車運送業」を加えることにより、運転士不足を解決しようとしているようだ。
■不安点もあるにはある……
こうした流れは運転士不足を解決する方法としては速効性があるし、いくらでも人材は呼べるだろう。しかし、事業者が日本人の運転士を採用して育成する努力を放棄して外国人労働者の雇用に走れば、根本的な問題すなわち運転士の待遇改善はますます遠のくことが危惧される。
また航空機や船舶のように国際的な交通ルールが統一されていて操縦者の顔が直接見えない環境とは違い、道路交通は日本のローカルルールで走っていて運転士の顔が見えるワンマンバスがほとんどだ。右側通行と左側通行の違いだけでも慣れの問題とは言え乗客としては不安を感じるだろう。
出生国とのルールの違いの問題をどのように担保するのかにも関心が集まる。 ちなみに日本と同じ左側通行を採用している国は英国と英連邦加盟国や旧英領の一部で、アジア・太平洋地域では香港・オーストラリア・ニュージーランド・インド・パキスタン・マレーシア・ブルネイ・シンガポール等だ。
また英連邦に関わらず左側通行を採用しているのはタイ・インドネシア・東ティモール・マカオ等である。中国本土・台湾・韓国・ベトナム等、日本在住者が比較的多い国は右側通行だ。