2020年代に入り加速度的に増え始めたEV・電気自動車。普通乗用車に留まらず、大型車のバスにまで電動モーター駆動の車両が続々登場している。しかしこの電気自動車のムーブメント、実は今に始まったものではないらしい。
文:中山修一
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■めちゃくちゃ古かった!! 電気自動車の誕生
実用への可能性を秘めた電動モーターが発明されたのは、1834年のドイツであった。この頃から既に、モーターを使った移動機械のアイディア自体は存在していたようだ。
最初は模型のような小型の実験機械がほとんどで、人が乗って運転できる乗り物が誕生したのは1881年のフランス。
フランス人発明家の、ギュスターヴ・トルーヴェによる発明品で、変形3輪自転車にドイツ・ジーメンス製の電動モーターを積み、バッテリーで駆動させるものであった。
実験的な性質を脱した、本格的な電気自動車という意味合いでは、ドイツの起業家で発明家のアンドレアス・フロッケンが設計した、1888年の4輪車・フロッケン・エレクトロヴァーゲンが“世界初”とも言われる。
■ガソリン車よりも普及していた!?
ガソリンエンジンを積んだ自動車と電気自動車は、ほぼ同じタイミングで登場している。自動車の黎明期、振動が少なく排ガスによる臭いの心配はゼロで、複雑なギアチェンジも不要など、ガソリン車に比べ電気自動車にはメリットが多かった。
そのため、1900〜1910年代にかけて、電気自動車が飛躍的に広まったとされる。当時のアメリカを例にすると、ガソリン車よりも電気自動車の普及率のほうが高かったらしい。
この10年は電気自動車の黄金時代と表現されることもある。ところが1920年代に入り、道路が舗装され街と街の往来が容易になると、電気自動車では航続距離が不足してきた。
1910年代の平均的な電気自動車のスペックを挙げると、最高時速20マイル(32km)、バッテリー持続距離約80マイル(128km)といったところ。
あまり距離を走れないのは昔もEVの弱点だったわけだ。一方で、長距離を連続走行できるガソリン車の低価格化が始まると、電気自動車は自然淘汰への道を歩む結果となってしまった。