普段何気なく利用している路線バス。そんなバスを走らせる会社を作ろうとした場合、勝手に始めて良いなんて自由さもちろんはなく、何らか資格の類が必須に思える。さて、どんな種類の資格が必要なのだろうか。
文:中山修一
写真:中山修一/バスマガジン編集部
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■“有資格”をキーワードにリサーチしてみると?
ここでは、国土交通省が公表している「一般乗合旅客自動車運送事業の許可及び事業計画変更認可申請等の審査基準について」を参考に、資格の種類を軽く調べてみることにしよう。
それによると、やはりバス会社は勝手に運営して良いものでは決してなく、国が定める数多くの条件を一つ一つクリアしていかないと開業できないようだ。
まずコレが無いと始まらないのが、国土交通省の運輸局が発行するバスの営業免許だ。バス車両の最低保有台数や車庫の設置など、諸条件を満たした上で届出を行う。
ただ届出をすれば許可が下りるのではなく、厳密な審査が実施されるほか、そのバス会社に勤める最低1名の役員が、法令試験を受ける必要がある。
初めから“試験”の要素が絡んでくるあたり、いきなりハードルの高さを見せつけられる。
■条件の中に隠れる資格あれこれ
バス会社の運営に不可欠な諸条件を読んでいくと、そもそも資格を持っていないとクリアできない項目がいくつか見つかる。
その一例が「運行管理者」だ。運行管理者は、乗務員のマネジメントや、営業所の設備の保守管理などを行う責任者にあたる。
運行管理者になるためには、こちらも試験を受けた上で資格を取得できる。平均合格率35.9%と、数値だけ見るなら割と難度は高め。
■安全運行に欠かせないメンテナンス
毎日バスを走らせる限り、車両のメンテナンスを怠るわけにはいかない。法律上は外部の業者に委託もできるとあるが、原則として自社の営業所内に整備設備を設けるのが望ましい、となっている。
その場合もまた専門の資格を持っているスタッフを置く必要が出てくる。「整備管理者」がそれで、車両の整備や点検、車庫の管理を統括する役割だ。
整備管理者に試験はなく、大型車の整備の実務経験が2年以上、所定の研修を修了、あるいは自動車整備士の資格を取得済、このうちのどれか1つを満たしていれば申請できる。ちなみに自動車整備士の合格率は60%くらいと言われている。
■営業許可とともに超重要なあの資格
営業運転を行う路線バスを運転するには、普通の運転免許とは一線を画す特殊な免許の種類、おなじみの「大型二種」がマストだ。
公道を走れる大抵のクルマを運転できるだけでなく、更におカネを取って人を乗せても良い、かなり強い免許と言える大型二種は、現在は特例制度もあるが21歳以上、通算3年以上の運転経験があれば受験できる。
気になる大型二種の合格率は、教習所に通った場合63%程度、いきなり試験場に赴いて一発合格を狙おうとすると急激にパーセンテージが下がり、10%を切るらしい。
■なくても良い? でもあると便利なアレ
バス会社開業のガイドラインでは特に言及されていないが、自社の営業所内に給油設備を設置しておくと、なにかと小回りが利いて便利になるハズだ。
敷地内に可燃物である燃料を置いておくには、やはり資格を持った管理者を立てる必要が出てくる。この場合、「乙4」とも呼ばれる危険物取扱の免状取得者が欠かせない。
危険物取扱者免状のうち、乙4が最も申請者の多い種類で、2023年度で約17.5万人が受験している。ただし合格者は約5万6千人で、合格率で言えば30%くらいしかない、そこそこ狭き門でもある。