車内でも多くの案内が!
バスタ新宿を発車したスカニア・バンホールのアストロメガは、首都高速道路から中央道に入る。若干の渋滞をクリアしながら、中央道本線上のバスストップで予約客を拾いながら河口湖を目指す。空席があればそのまま乗車できるが、当日は2号車(ハイデッカー車)ということになりそうだ。
車内には数多くのディスプレイが搭載され、停留所名や停車案内が放送に合わせて次々と流れる。カーナビの地図でも出れば面白いのだが、短距離路線なのでそれは望みすぎだろうか。
河口湖駅に到着
富士急ハイランドで半分くらいの乗客が下車し、終点の河口湖駅に到着した。駅前には何のお祭りなんだと言わんばかりの外国人観光客が路線バスを待ち、富士山の観光資源の偉大さがわかる。
バスは回送表示を出して富士急バスの営業所に回送する。意外と離れているが、地元の車以外はぼバスしか走らないため絶好のバス撮影ポイントなのかもしれない。
営業所には富士五湖に乗り入れる共同運行会社のバスが多く並ぶ。富士急バスもいることはいるが、昼間は営業中で走っているので高速車を中心に休憩中といった感じだ。
方向表示器はタブレットで即席設定可能?
ここからは富士急バスの営業所の敷地内で取材したわけだが、この表示器の表示にどんなものが入っているのかが気になるところ。
以前の方向幕であれば巻き上げれば確認できるが、LEDの場合は車内のスイッチで切り替える。この装置もレゾナント・システムズのもので、同社担当者がバスに乗り込んでスイッチを切り替えてくれる。
富士急系の高速車には基本的に同じデータが一律で入っているので、スカニア・バンホールでは絶対に行かない行先まで入っている。例えば季節運行の福岡行きはダブルデッカー車では走らないが、データとしては入っている。
そしてこの表示は簡単な文字列だけであればタブレット端末で即座に変えることができ、例えば貸切車で団体名やツアー名をLEDに表示させることができる。
長距離バスのための案内
また、長距離便で途中休憩が入る場合は、似たようなバスが並ぶので誤乗を防ぐために、行先や発車時刻を表示することもできる。以前はフロントガラスに設置された時刻札を運転士が差し替えて発車時刻を表示するバスがあったが、現在は行先表示器で案内ができる。
フルカラーを生かして複雑な図形を表示することもできるが、これをやるには事前に「絵柄」を作り込まなければならない。同社がデモ機にデータを作りこんでくれたのがトップ画像の本誌「バスマガジン」のロゴだ。こういったこともできるので、ツアーや団体によってはよろこばれる。
富士急系のバスでは最初からフルカラーで富士山の絵をバックに「富士急行」の社名が入った「幕」を用意しており、回送表示の際に観光客サービスで運転士の判断で表示することもある。これが人気なのだそうだ。
富士山絵柄の怪?
美しい富士山の絵柄が概ね好評だが、記者を乗せてきたフジエクスプレスの運転士は不思議なことがあったと話してくれた。
河口湖駅でこの絵柄を出して観光客が写真撮影するのでひと呼吸おいて回送に入ろうとしたところ、地元客から「富士急まで行くんだ!」と乗車しようとしたので「すいません回送なんです」と丁重に案内にしたという。
その場はそれで終わったのだが、回送後によくよく考えてみると「富士急行」という文字で「富士急に行くんだ!」と言われても、富士急とはどこだったんだろう? と悩んでしまったという。
確かに富士急ハイランドのことだったのかもしれないし、富士山駅だったのかもしれないが、表示は「富士急行」だったのでいまだにその場所は特定できないままだと笑い話を披露してくれた。
同社の表示システムは、限られた面積の中で多くの情報をわかりやすく乗客に知らせるために長い年月をかけて改良された結果であり、今後も進化し続けることだろう。LED表示器を見るときには、いろんなことができる多機能表示器であることを思い出していただければ幸いだ。
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