新型CRF250Lにはポストセローの地位も掌中に納める優しさがある
オフロードモデル専用に作り変えられたエンジンのおかげで、CRF250Lのフィーリングには優しさも感じられるようになった。これが、セロー250的な”トコトコ”走ることが楽しめるフィーリングに似た味わいになっている。未舗装路ではアイドリング以降の領域でトコトコと、そしてオンロードでは4000~5000rpm付近の”ビヨーン”とゴムに引っ張られるような粘り強さが心地よい。
車体はABSを追加した上で4kg軽量化されたこともあるが、ヘッドライトが薄型LEDになりハンドルのボトムブリッジを鉄からアルミ製として重心から離れた位置での軽量化が追求されており、重さを感じさせない。フロントの倒立サスペンションもゴツい見た目の印象と裏腹にとても柔らかくライダーに対する当たりは総じてソフト。これらも優しさを感じさせる要因だ。
つまりセローじゃん。と思う向きもあるだろうが、新型CRFの真骨頂は従来よりも円を大きくして守備範囲を広げたことにあり、セロー的な部分もほぼ網羅しているというのが実際のところだ。オンロードでの限界性能や車体剛性面はセローよりCRFが上なので、より幅広い使い勝手に対応できるだろう。
逆にセロー250の強みが活きるマウンテンフィールドでは、セローよりも7kg重いCRFでは付いて行けない場面もあるだろう。たが、セロー250の人気の理由は一般的に日常使いでの扱いやすさにあり、低シート版のCRF250Lを選べばそのニーズはほぼ満たせるはずだ。
なぜセローは生産終了でCRFは進化継続ができたのか?
1990年代までは国産4メーカーが販売する2ストロークや4ストロークエンジンの250ccオフロードモデルが市場に溢れていた。それが2021年はCRF250LとCRF250ラリーのみという状況になってしまった。サイズを下げるとカワサキのKLX230もあるが125ccだとMTのオフモデルはすでに存在していない。
これはアドベンチャーを除く純オフロードモデルの国内市場が小さいことに原因がある。250ccクラスでは全体の10%程度しかなく、セロー250のように国内に特化したガラパゴスモデルだとモデルチェンジすら困難なのだ。そんな状況下でもCRF250L/ラリーがエンジンの一部を新設計するだけのフルモデルチェンジができたのは、グローバル化のおかげだ。
CRF250L/ラリーは実は北米で最も売れていて、その次が日本。他にもタイや欧州でも販売されている。世界で年間1万5000台~1万7000台もの需要があり、その収益で開発を継続できているのだ。現在はアメリカでも名作映画「オン・エニ・サンデー」のようにオープンエリアをモトクロッサーで楽しむようなことは許されず、ナンバー付きオフロードモデルの需要が見込めるという。
今回CRF250Lが上級版のCRF450Lに準じたルックスになったのもアメリカでの”L”需要からシリーズ化するのが狙い。グローバルモデルゆえにデザインは日本専用とはいかずアグレッシブなスタイルとなったが、乗ってみると優しい奴なのだ。
●ホンダ 新型CRF250L/<S>主要諸元
・全長×全幅×全高:2210×820×1160mm<2230×820×1200mm>
・ホイールベース:1440mm<1455mm>
・シート高:830mm<880mm>
・車重140kg
・エンジン:単気筒、249cc DOHC
・最高出力:24ps
・最大トルク:2.3kgm
・タイヤ:F)80/100-21、R)120/80-18
・トランスミッション:6段リターン
・サスペンション型式:F)テレスコピック R)リンク式モノショック
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