■駐車場でのハザードランプ使用
また、ショッピングモールなどの駐車場で空きスペースを見つけて、駐車体制に入る際にハザードランプを使う人もいます。
この状況では真っ直ぐ走っていたクルマが停止して、駐車のためにハンドルを切ってバックするという体制に入ります。この動きはかなり特殊ですから、ハザードランプを点滅させてもおかしくはないでしょう。
この際、できればハザードランプを点滅させる前にブレーキペダルを数回ポンピングして、明確に速度が落ちることを後続車に知らせるとさらにいいでしょう。
さて、ここまで実例を紹介してきた項目には共通点があります。それは「停止する」、もしくは「減速している」ということです。
ハザードランプは合図ですから、その合図がどのような状況を示しているかが明確でないとなりません。不明確な合図はかえって危険を招きます。たとえば、右のウインカーを出して左に曲がるなどが危険な行為なのは誰もがわかることでしょう。
■サンキューハザードとワンタッチウインカー
さて、サンキューハザードです。
私はサンキューハザードに反対の立場です。サンキューハザードは車線変更をしたときに道を譲ってもらったお礼、駐車場から車道に出たときに道を譲ってもらったお礼……などにするものとされています。
お礼の目的なので「サンキューハザード」という名称で呼ばれているわけですね。
しかし、道路を走っていれば車線変更をしなければならないのは当たり前のことで、車線変更のたびにお礼をしなくてはならないのでしょうか。単なる車線変更を「割り込み」とする風潮そのものがおかしいのです。
私は車線変更をしたあとにハザードランプを点滅させるよりも、3秒以上前にウインカーを作動させ車線変更を行い車線変更が終了したらウインカーを戻す……こと、つまり法令に則った車線変更を行うことがもっとも大切だと考えます。
そもそも、そうした最も大切な部分は省いて、サンキューハザードをすればよし……みたいな風潮が感じられます。
ゆえに、ワンタッチウインカーにも反対です。ワンタッチウインカーは約3秒でウインカーが切れてしまいます。ワンタッチウインカーを作動させ、車線変更をしようとしたタイミングではすでにウインカーは切れています。
ウインカーが切れてから車線変更を開始したら危険なのは明白、ウインカーが切れれば車線変更を停止したと見られるのが普通でしょう。
唯一使えるとしたら、路肩に駐車している状態からの発進のみです。ワンタッチウインカーを採用した輸入車が日本に入ってきてしばらくしたら、国産車にもワンタッチウインカーが付き始めました。
トヨタはずっと採用しなかったのですが、ヤリスから使い始めました。ワンタッチウインカーについては、自工会が自主規制するべき項目だと思っています。
■トラブル回避のためにも無理のない運転を
サンキューハザードに反対するもっとも大きな理由は、本来停止時を示すもの、そして解釈を広げて減速という状態を示すものとして使うハザードランプを、「お礼」というまったく別の目的で使うことにあります。
正しい所作で車線変更をしてその後に前方に障害物を見つけて急ブレーキを踏むと同時にハザードランプを作動させたが、後続車はサンキューハザードだと思い追突してしまった……では意味がありません。合図にまったく違う意味を持たせるのは危険なのです。
そもそもサンキューハザードという言葉で呼ばれていますが、よく耳にするのが「サンキューハザードをしないとあおられる」といった発言です。
これはもはや「ありがとう」ではなく、嫌がらせなどを回避するための手段で、商店が暴力団に支払うみかじめ料みたいなもの、つまり「みかじめハザード」です。
その場のトラブルを避けるには最良の方法かも知れませんが、長い目では自動車社会にいい影響はないでしょう。
そもそもきちんとした手順で車線変更をすれば、あおられることはまずないでしょう。3秒以上前にウインカーを作動させゆっくりと車線変更をすればいいのです。
急に車線変更をしなくてはならないような状態ならば車線変更はあきらめ、先まで行ってUターンしたり、ぐるっと回ってくればいいだけの話です。割り込むような形での車線変更(つまり3秒間ウインカーを作動させるような余裕のない車線変更)はしないことが大切で、サンキューハザードに頼るべき行為ではないのです。
私は感謝の行動をするべきではない、と言っているのではありません。窓を開けて手を出すのもいいですし、頭を下げるのもいいことだと思っています。しかし、ハザードランプの点滅とお礼の意思表示が同じなのはやはりおかしいことです。
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