北海道留萌市在住の写真家・佐藤圭さんが撮った貴重な動物、風景写真をお届けする週末連載。第10回は、エゾナキウサギです。
日本では北海道の高山にしかいない動物なので、名前を聞いたこともない人も多いかもしれませんね。体は小さいですが、氷河期から北海道の厳しい自然のなかでたくましく生き抜いてきた剛の者です。
ウサギと呼ぶにはちょっと変わった風貌で、顔もちょっと“ぶさかわ”なのですが、北海道の野生動物の中では圭さんのイチ押しだそうです。
写真・文/佐藤圭
耳は短いけど、性能は抜群!
ナキウサギは、その名の通りウサギの仲間です。
しかし、耳が短いので、見た目はウサギというよりモルモットのようなネズミの仲間に見えます。おそらく、ガレ場と呼ばれる岩が重なった場所の穴の中で暮らしているため、耳がだんだん退化してしまったのではないかと僕は考察しています。
でも、耳の機能はとても良いんです。天敵から身を守るためでしょうね。遠くでほんのかすかな物音を出しただけで、さっと逃げてしまいます。まるで瞬間移動のような早さで消えます。
大きさは手のひらサイズと小振りで、子供はピンポン玉くらいしかありません。そんなサイズで毛の色も岩の色に近いので、探すのはとても難しいんです。ナキウサギの名の通り、「ピキッ」とか「ピーッ」と鋭い声で鳴きますが、声はすれども姿は見えずということが多いです。
氷河期に陸続きだったユーラシア大陸から北海道にやってきた動物なので、寒さには強く、冬は冬眠しません。秋になると、越冬用の食料として、大量の葉や茎、実を岩の間の巣に一生懸命運ぶ姿が見られます。
逆に、暑さにめっぽう弱く、夏の暑い日には穴の中が涼しいのでほとんど外に出てきません。
北海道の高山帯にしか生息していないため、登山をしなければ会うことができません。北海道で登山をする人たちの間では、一度は見てみたいという憧れの存在のようです。
撮影地の大雪山十勝岳までは、日本海側の留萌からは車で3時間ほど。途中、石狩川周辺の田園地帯や美瑛の絶景を楽しみながらのドライブは気持ちいいです。ついつい見とれて寄り道してしまい、到着が遅れることもありますが、それも撮影の楽しみのひとつです。
道筋には北海道ならではの絶品グルメの店が多いので、「帰りは何を食べようかな?」と撮影中に考えるのも楽しいです。
佐藤 圭 kei satou
1979年、北海道留萌市生まれ。動物写真家。SLASH写真事務所代表。フランスのアウトドアブランド「MILLET」アドバイザー。
日本一の夕陽と称される留萌市黄金岬の夕陽を撮影するために写真家の道に入る。北海道道北の自然風景と野生動物を中心に撮影を続け、各地で写真展を開催し、企業や雑誌、新聞などに写真を提供している。
2018年、エゾナキウサギの写真「貯食に大忙し」で第35回『日本の自然』写真コンテスト(主催:朝日新聞社、全日本写真連盟、森林文化協会)で最優秀賞受賞。
ウェブサイト:https://www.keisato-wildlife.com/
Facebook:https://facebook.com/kei.sato.1612
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