北海道留萌市在住の写真家・佐藤圭さんが撮った貴重な動物、風景写真をお届けする週末連載。
第32回は、「北海道の尾瀬」と呼ばれる絶景の湿原を紹介します。
北海道の短い夏、高く広がる青空の下、湿原には美しい花々が咲き乱れ、心が洗われる絶景が広がります。
写真・文/佐藤圭
【画像ギャラリー】あふれ出す雲海の幻想的な美しさ、水面を飾るハートの葉っぱたち
北海道の真ん中よりちょっと西側・空知地方に位置する雨竜町は、北海道有数の米どころで、石狩川、雨竜川沿いの平野部には、広大な田んぼが広がっています。
以前、本州から来た友だちを車に乗せて雨竜町を走っていたら、「なにここ? 田んぼばっかりじゃん。北海道っていったら牧場じゃないの」と文句をいわれたことがあります。
この米どころの町に、貴重な草花の宝庫である、日本有数の湿原があるんです。しかも、山の上に。
雨竜町の市街地から車で西へ向い、50分ほど走ると南暑寒岳の登山口があります。
そこから、南暑寒岳を目指して2時間ほど登っていくと、国の天然記念物で、ラムサール条約にも登録された山岳型高層湿原湿地「雨竜沼湿原」に到着します。
標高850m、東西4km、南北2kmの台地に大小約200の沼が点在し、暑寒別岳と南暑寒岳を望む絶景は、「北海道の尾瀬」と呼ばれています。
山開きの6月には、登山道の周りにミズバショウが可憐な白い花を咲かせ、7月には、鮮やかな黄色のエゾカンゾウや花が終わると白い綿帽子をつけるワタスゲが青空に映えます。
8月には、この湿原の固有種であるスイレンの一種・ウリュウコウホネが沼の水面を彩ります。短い夏の間、湿原は山野草たちの楽園になるのです。
また、7月にはエゾヤマザクラが咲くので、日本一遅い桜が見られます。
9月に入ると、草原が枯れて美しい「草紅葉」が出現します。
点在する沼の周りには一周約4キロの木道が敷かれていて、花たちを見ながら、ゆっくりと散策が可能です。
また、南暑寒岳から湿原に下る途中には展望台があり、緑の草原に無数の沼が点在する湿原全体を見渡せます。運がよければ、早朝、山並みの切れ目から湿原に流れ出す雲海を望むこともできます。
ただ、この辺りはヒグマの密集地帯でもありますので、早朝、夕方の行動、1人での山行には十分に注意してくださいね!!
山は、6月下旬から10月上旬までしか開かれていませんが、その間は、いつ行っても絶景が楽しめます。北海道をゆっくり旅する人にはぜひおススメのポイントです。
佐藤 圭 kei satou
1979年、北海道留萌市生まれ。動物写真家。SLASH写真事務所代表。MILLETアドバイザー。
日本一の夕陽と称される留萌市黄金岬の夕陽を撮影するために写真家の道に入る。北海道道北の自然風景と野生動物を中心に撮影を続け、各地で写真展を開催し、企業や雑誌、新聞などに写真を提供している。
2018年、エゾナキウサギの写真「貯食に大忙し」で第35回『日本の自然』写真コンテスト(主催:朝日新聞社、全日本写真連盟、森林文化協会)で最優秀賞受賞。
ウェブサイト:https://www.keisato-wildlife.com/
Facebook:https://facebook.com/kei.sato.1612
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