日本の警察力を高めるために設けられた警察予備隊(自衛隊の前身)への導入を目指し、1951年に初代のジープBJが世に送り出されて以来、2021年で生誕70周年を迎えたランドクルーザー。“トヨタの象徴”ともいうべきランドクルーザーが大陸の王者に君臨し続ける所以とは果たして? 新型が登場した今だからこそ、改めておさらいしておきたい。
文/FK、写真/トヨタ自動車、FavCars.com
「壊しきり」という厳しい試験を課して他を圧倒する性能を担保
1955年にランドクルーザーの名を初めて冠した20系を発売して以降、中南米・中東・東南アジアを中心に輸出地域を広げてきたランドクルーザー。当初の輸出台数は年間100台にも満たなかったが、10年後の1655年には早くも1万台を突破し、今では約170の国と地域で販売。グローバル販売台数もこれまでに累計約1060万台、年間の30万台以上にのぼっている。
その圧倒的ともいえる信頼性や耐久性の高さも相まって、製造から50年以上が経過した40系が今でも現役で活躍する地域が多数存在するが、そんな信頼性や耐久性の高さを担保しているのが試験車が壊れるまで走り込む「壊しきり」という名の試験だ。
約100万kmにも及ぶテスト走行を行う壊しきりの目的は“ある基準をクリアしたからOK”というものではなく、“どこでどのように壊れるのか”や“ここまでやると壊れる”ことを確認することにある。
「行きたい時に行きたいところに行って必ず帰ってこられるクルマ」をコンセプトに掲げるランドクルーザーならではの、万が一どこかが壊れても帰ってこられるようにしなければならない設計思想を垣間見ることができる部分といえるだろう。
世界の○○で発見! こんなところにもランドクルーザー
このように、トヨタのQuality(品質)、Durability(耐久性)、Reliability(信頼性)を象徴する存在でもあるランドクルーザー。その原点は、“世のため、人のため”というトヨタのクルマづくりにあるといっても過言ではない。
普段、テレビで何気なく観ている番組の中でも、「こんなところでもランドクルーザーが使われているの?」と思わずにはいられないシーンを目にすることは決して少なくないはずだ。
例えば、アフリカの国立公園では密猟取締パトロールに使用されていたり、ランドクルーザー第二の故郷というべきオーストラリアでは鉱山の地下1600mの坑内や広大な放牧牧場での牛の追い込みなどに使われていたり、某国の難民キャンプでは診療所に患者を運んだりと、ランドクルーザーは仕事や生活を営むためになくてはならない心強い相棒として活躍しているのだ。
そう、世界中の人々の暮らしを支え続けることができるだけのフトコロの広さを持っていることこそが、ランドクルーザーが愛され続けている根底にあるのだ。
世界一過酷なダカールラリーではクラス無敵を誇る無類の強さを発揮
もうひとつ忘れてならないのはモータースポーツシーンでの活躍だ。世界一過酷と称されるダカールラリーでの活躍もまた、世界各国のクルマ好きに“トヨタにランクルあり”を印象づける要因のひとつになっている。
道なき道を走破するクロスカントリーラリーとして知られるダカールラリーは、総距離約8000kmに及ぶ行程を2週間かけて走破する厳しい競技環境などから、完走率は5割にも満たない。
そんなダカールラリーにトヨタグループの中核ボディメーカーであるトヨタ車体の自社チームが1995年からランドクルーザーで参戦、市販車部門で2014年から2021年までの8年連続を含む22回のクラス制覇を達成しているのだ。
このような極限環境下でもクルマを壊すことなく走り切り、より良いクルマづくりに貢献することを目指すランドクルーザー。実戦の場で培った技術が市販モデルにフィードバックされているのだから、もはや鬼に金棒、死角なし……ということも納得せざるを得ない。ちなみに、新型の300シリーズは2023年大会でのデビューを予定している。
先代モデルが最大の競合車? ランクルのライバルはランクル!
このようなバックグラウンドを持つランドクルーザーは、2021年8月に200シリーズをフルモデルチェンジして300シリーズへと進化を果たした。
伝統のラダーフレームを刷新することで高剛性・軽量化・衝突安全性能・静粛性・走りの質の向上を実現するとともに、低重心化や前後重量配分も改善。
他にも、ショックアブソーバーの減衰力を4輪独立で制御するリニアソレノイドタイプのAVS(Adaptive Variable Suspension)、低速時の優れた取り回しや悪路走行時のキックバックを低減する操舵アクチュエーター付きパワーステアリング、ブレーキペダルの操作量をセンサーで検出して最適かつリニアな制動力を得る電子制御ブレーキシステム、リアタイヤのトラクション性能を確保するトルセンLSDなど枚挙に暇がないほど、そして、ここでは語り尽くせないほどの装備が充実。
歴代ランドクルーザーのヘリテージを追求した、本格オフローダーの雄としてのタフな強靭さと洗練された大人の深みを融合したエクステリアデザインも機能美に溢れている。セールスも好調で、8月20日に掲載したコラム「新型ランクル最長4年? ヤリスクロスも半年待ち! トヨタ人気車の最新納期は半導体不足で大混乱!?」でも紹介したように、年間生産計画5000台のところに2万台近くの注文が殺到するほどの人気ぶりだ。
新型の登場とほぼ時を同じくして、TOYOTA GAZOO Racingが1960~84年に生産された40系の補給部品復刻を行う「GRヘリテージパーツプロジェクト」を公表。40系の“走る”“曲がる”“止まる”に付随するエンジン・駆動・排気系といった重要機能部品をヘリテージパーツとして再販する調整を進めており、2022年の初め頃を目処に順次発売する予定なのだという。
このように新旧を問わず、大陸の王者として昔も今も世界に君臨し続けるトヨタの象徴的存在であるランドクルーザーの冒険はまだまだ終わらない。
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