ベストカーWebの読者なら、クルマ用語でのFFとFRの意味は知っているはずだが、念のため説明しておくと、FFは「フロントエンジン・フロント駆動」でFRは「フロントエンジン・リア駆動」だ。
乗用車の駆動方式としてポピュラーなこのふたつ、実際の優劣はあるのか? あるとすればそれはどこに? そしてどっちが楽しい? この記事では、あらためて両者のメリット・デメリットを考えていきたい。
文/長谷川 敦 写真/トヨタ、日産、ホンダ、スバル、Newspress UK、Favcars.com
【画像ギャラリー】FRとFF、アナタならどっちを選ぶ?(14枚)画像ギャラリーFFはなぜ乗用車の主流になったのか?
意外に思えるかもしれないが、世界初の「自動車」と呼ばれるキュニョーの砲車はFFだった。18世紀に登場したこの砲車は蒸気機関によるエンジンを車体前部に積み、前輪を駆動していたのだが、これは少々例外であり、20世紀に入っての一般的な乗用車での駆動方式はFRが先行していた。
FF方式には前輪を駆動しつつ操舵する機構が必要になり、それには動作角の大きいドライブシャフト(ジョイント)が必須。しかし、複雑になりやすいこの機構の開発とコストダウンには時間がかかり、その間にFR車が次々と開発され、世界のモータリゼーションも発展していった。やがて、効率の良いドライブジョイントが開発されると、FF車の攻勢が始まった。
FFのメリットはスペース効率に優れること。乗用車では運転席前部にエンジンを搭載するが、そのまま前輪を駆動してしまえば、リアには大きな空間を確保でき、後部座席に余裕が生まれる。同時にトランクのサイズもリアに駆動機構を持つFRよりもたっぷりとしたものになる。
こうしたメリットが武器になり、1960年代から70年代にかけて、特にコンパクトな大衆車でFF車が大きくシェアを拡大した。これはコンパクトモデルにおいてスペース効率の利点が多いからだ。そして現在、コンパクトカーのみならず、セダンでもFF方式を採用するものは珍しくなく、FF全盛とも言える状況になっている。
歴史あるFRだが、時代の流れは不利に
初期の大衆車は車体後部にエンジンを搭載して後輪を駆動した。このRR方式の代表的なモデルがフォルクスワーゲン タイプ1、通称ビートルである。
しかし、エンジンの冷却や振動、騒音などの問題もあり、エンジンを車体前部に積んで後輪を駆動するFR方式が考案された。RRに比べるとスペースが有効に使用でき、さらに整備性も向上するなどのメリットがあるFRはすぐに乗用車の主流スタイルになり、それはFFの台頭まで続いた。
FR車ではエンジンの駆動力を後輪に伝えるためのプロペラシャフトが装備され、その駆動力をさらに左右の後輪に伝達する機構も必要だ。これが重量増を招くものの、駆動輪である後輪の荷重を増やすこともできるため、ハンドリング上のメリットにもなりうる。
だが、実用面においてはFFに分があることが多く、大衆車市場ではFFの優勢を許してしまっている。
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