【ホンダF1の軌跡】ホンダPUの欠点を克服した、ホンダジェットの技術とは?


MGU-Hの壊れない長いシャフトはホンダジェットの恩恵

2020年レッドブルとタッグを組んだホンダPUは、第5戦でついに14年ぶりの優勝を飾った

 現在ホンダのMGU-Hは、ターボとコンプレッサーの中間にMGUが置かれている。そして規則上タービン・コンプレッサー、MGU-Hは同軸上で回転数も全てシンクロしなければならない。したがってその回転数は最高125,000回転にも至る。巨大な工作機械等に搭載されている大型モーターなら300,000回転も可能だが、当然ながら大きく重く、軸径も太い完全な固定型であり、F1への搭載は不可能だ。そしてMGU-Hは回生と出力を走行中常に繰り返し行っていて、細身の軸へは常に両方向へのねじり負荷が掛かり続けていることになる。

 さらにこの長いシャフトには、モーター部分でマグネットを持ったロテーターが装着されているのでマスは大きく、10万回転超えでは僅かなダイナミックバランスの変化で高周波振動を起こしてしまう。したがってシャフトと軸受け部のベアリング(メタルを使用しているはずだ)とその潤滑、MGUの冷却等には極度に繊細な処理が要求される。

 ホンダジェットのタービンエンジンのノウハウはこれらの部分に活かされているはずで、ジェットエンジンのセーフティーに関するアビエーション・スタンダードは極めて高く、安全率もF1を遥かに凌ぐ強力なものだ。

 これらのアビエーション技術がF1型の小型軽量型でも適確に働いているという。事実過去3年、ホンダジェット・インフルエンスのMGU-Hにはこれといったトラブルはほとんど出てはいないのだ。

 ホンダ内部の部門クロスオーバーはF1に限定するのではなく、これからの多様な交通手段の開発にも大きく貢献するのではないだろうか。現在の自動車メーカーに未だ漂う昭和・平成初期の空気感を自由なクロスオーバーの感覚が浄化してゆけば、2021年のF1の様に実に面白い会社になるのではないだろうか。

TETSUO TSUGAWA
TETSU ENTERPRISE CO, LTD.

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津川哲夫
 1949年生まれ、東京都出身。1976年に日本初開催となった富士スピードウェイでのF1を観戦。そして、F1メカニックを志し、単身渡英。
 1978年にはサーティスのメカニックとなり、以後数々のチームを渡り歩いた。ベネトン在籍時代の1990年をもってF1メカニックを引退。日本人F1メカニックのパイオニアとして道を切り開いた。
 F1メカニック引退後は、F1ジャーナリストに転身。各種メディアを通じてF1の魅力を発信している。ブログ「哲じいの車輪くらぶ」、 YouTubeチャンネル「津川哲夫のF1グランプリボーイズ」などがある。
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