経験がモノをいう緊急時・非常時の対処のしかた
佐藤専務は語る。
「ピーク時には大型トラックが60台くらい支援物資を運んできましたが、アピオには、10トン車なら3台、4トン車なら6~7台入っても、同時に作業できるスペースがありますから、作業は非常にスピーディで、荷降ろしの大型トラックもほとんど待たせることはありませんでした。
だいたい夜が荷受け、日中が搬出というパターンが多かったですね。搬出は、各市町村からのオーダーによって荷揃えするわけですが、食料や飲料、日用品、衣類や靴など多岐にわたります。
それを、朝出発する便は夜のうちに、昼間出発する便は朝までに仕分けて送り出します。時間帯でいうと3パターンくらいですね。トラックを含め、この搬出作業を担っているのが地元の運送会社の人たちで、彼らも本当によく頑張りましたよ。
3月20日過ぎがピークでしたが、さすがにアピオのアリーナ部分だけでは支援物資が入りきらなくなったので、駐車場に大きなテントを張って優先度の高くない荷物を収納しました。でも、外のスペースも広大なので、その点もありがたかったですね」。
ところで、被災地では長らく燃料不足が続いたが、これにはどう対処したのだろうか。
「トラックは燃料がなければどうしようもありませんから、県と交渉して県知事さんの証明書をもらい、県の指定のスタンドで優先的に燃料を供給してもらいました。おかげ様で緊急支援物資を届けるトラックに関しては、燃料で困ることはほとんどありませんでした」。
この「アピオ」での仕事が済んでも、佐藤専務理事をはじめ岩手県トラック協会の人たちには、県内のトラック運送事業者が立ち直るのをサポートする大事な仕事が待っている。
それは決して安楽な道ではないだろう。しかし、1つの大きな仕事、素晴らしい仕事を成し遂げた事実は、復興への大きな原動力になるはず。
そして何よりも、トラック運送事業という仕事が誰にも後ろ指を指されることのない、胸を張って誇れる仕事であることを証明したことは、とても素晴らしいことだ。
トラックはライフライン! そのライフラインを滞らせないために、物流のプロが見せた「餅は餅屋」のめざましい仕事ぶりは、災害物流のあり方にも大きな教訓を残すものであった。
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