あまり顧みられることは少ないんですが、タイヤレスキューの仕事ってけっこう大事なんですよ。特に時間厳守のトラックの場合、一刻一秒を争うケースもあるわけで、タイヤに特化したロードサービスは、まさに荷台の下の「縁の下の力持ち」といったところ。といっても、そこは3Kの極致ともいえる仕事現場。なかなか大変です。そんなタイヤレスキューの現場の実状を独立系のタイヤ屋さん・矢板大輔さんに報告してもらいました。
文・写真/矢板大輔
*2010年9月発売トラックマガジン「フルロード」第2号より
■いつでもどこでも駆けつけます
私は、関西地区で「タイヤ屋」をやっています。仕事は出張作業がほとんどで、お客さんの車庫でも荷降ろしの現場でも高速道路でも、トラックが行くところならどこでも行って、タイヤ交換やパンク修理、ローテーションなど、タイヤに関する作業ならすべて引き受けます。
一人で何もかもやっているのですが、現場で威力を発揮するのが2トンロングのサービスカーです。このクルマにはインパクトレンチ(大型トラック用/中型トラック用/乗用車用)やソケット/パンク修理キットはもちろん、エアーコンプレッサー、発電機、タイヤチェンジャーなどを搭載しているので、どんな現場でも作業ができます。
さて、梅雨から真夏にかけて増えるタイヤのレスキュー作業があります。それはバーストです。特に高速道路上でのバーストは、今年も多かったですね。みなさんもタイヤの破片が路肩に転がっているのを見たことがあるでしょう。
高速道路上で作業をしていると、自分のすぐ横を大きな鉄の塊が時速100㎞近いスピードで次から次へと通り過ぎていきます。左側のタイヤならまだしも、右側のタイヤだったらホント命がけですよ。
安全のために作業時にはフラッシュライトを点けていますが、夜間はかなり目立つものの、昼間はあまり役に立たないので、昼間の作業のほうが怖いです。それに炎天下での作業はメチャクチャ暑いですし……。
高速道路上での作業があまりにも危険だというので、最近ではレスキューに行かないタイヤ屋さんも増えてきています。毎年、作業時に死亡事故が起きていますからね。でも、うちのような小さなタイヤ屋は仕事を選んでなんかいられませんし、お客さんが困っているわけですから、ハイ、電話1本でいつでもどこへでも駆けつけます。
■タイヤバーストのあれやこれや
でも、ひと昔前に比べると、バーストはかなり減ってきました。それは、異物等がトレッドに刺さっても空気が一気に抜けず、走行中の熱にも強いチューブレスタイヤが増えてきたからです。最近はあまり見ることが少なくなってきたチューブタイプは、タイヤに釘などが刺さってチューブに貫通すると、風船と同じように一気にエアが抜けてパンクするんですね。
それに、4トン車や2トン車の一部にしか残っていないバイアスタイヤも、タイヤに傷が入ると、すぐに広がってバーストしやすい。乗り心地は最高でしたけどね。今はほとんど見かけなくなりました。
減ってはきているものの、それでもバーストは必ず起きます。原因はいろいろあります。空気圧不足や摩耗はもちろん、タイヤに異物が刺さっていたり傷があったり、それに過積載なども原因になります。最近多いのがトレッド面に傷があって、そこから雨水などが浸入し、タイヤの骨であるワイヤを錆びさせてしまったことによるバーストです。
これらはいずれもタイヤチェックで防げることですから、運行前には必ずタイヤの状態を確認して下さいね。特に空気圧不足は、走行している間にタイヤ内の熱を上昇させ、その熱でタイヤがバーストしてしまうことがあるので、エアチェックもお忘れなく。空気圧は燃費にも影響しますから……。摩耗のひどいタイヤは会社に頼んで新品に交換してもらいましょう。
といっても、この不景気にタイヤに時間と費用なんかかけてられないって会社が多いのも実情なんですね。実際、大手運送会社や観光バス会社でも、新品タイヤではなく、リヤは再生タイヤを装着するケースが多くなってきました。中にはツルツルを通り越して、ワイヤが見えるまでタイヤ交換してくれないところもありますからね。タイヤだけを見ても、みなさんかなりご苦労されていることがうかがえます。
でも、大型トラックのタイヤ空気圧は900Kpaと、ものすごい圧のエアが入っています。バーストした場合、周りにいる人は怪我より即死の確率の方が高いんです。高速走行中にフロントタイヤがバーストすると、対向車線に飛び出したり、車両が横転したりして死亡事故繋がることもあります。本当に気をつけてほしいですね。
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